閑話②:河内兄弟の懸念 ― 一実の場合 ―
前回と同じく、会話文のみではありません。
「いいか、絶対気を緩めるな」
それが、引越した夜、電話越しに言われた兄ちゃんの言葉だった。
正直、海外から兄ちゃんからLIME電話がかかってきた時、なんだか来るような気はしていた。
俺は自分にそんなに第六感があるだなんて思ってなかったし、今までそんな感じのものはなかった気がする。でも、本当に、兄ちゃんから電話が来る気がしていた。……と言うより、電話がかかることを望んでいたのかもしれない。
だから、兄の声にほっとしたと同時に、なんだか嫌な予感が当たったみたいで複雑な心境だった。
「……えーっと、一応さ、なんのこと?」
「あの四兄弟や。一実も常葉も……俺の兄弟だから、それほど心配ないんかもしれんけど。常葉は女だから。俺がいない間、お前がちゃんと見張っとけ」
その言葉に俺は一瞬疑問符が浮かんだけど、姉ちゃんのことが出てきて納得した。
そりゃそうだ。血の繋がりのない男女が同棲してるんだ。そりゃいくら姉ちゃんでも気をつけなあかんやろ。……姉ちゃん、時々風呂上り下着姿で出てきたりするし、そのあたり無防備やしな。
そう考えながら頷いていると、溜息が耳元で聞こえた。
「一実が想像するのとは少し意味合いが違うんやけどな。……本当を言うと、場合によったらお前も、そこにいて欲しくはないんやけどな」
その言葉に、ぎくりとした。
一瞬、昼間のことが過った。
部屋決めをする前、祐に目の前で部屋の扉を閉められた時のことだ。
あの時、なんで閉めたんや、いじめかっって思った。
けど、そんなことは些細なことだった。
『ねぇ、君』
あの時の声が蘇る。
『少し聞いていいかな?』
振り返ると、譲兄さんがいて、俺は開かない扉からいったん離れたんだ。祐や、姉ちゃん達には気づかれなかったみたいやけど。
『あ、すみません。なんか、うるさくしちゃって』
『いや、そんなことはどうでもいいよ。それよりね』
そう言うと、あの人は俺に一歩近づいて言った。
『河内知種君って、どんなヒトか教えてくれない?』
そして俺の肩に触れた譲兄さんは――――……
―――――――目が、笑っていなかった。
「……一実、どうしたん?」
「あ……いや」
兄の声で、はっと我に返る。
アレは、きっと……きっと……――
「お、俺よりもっ、兄ちゃんの方が近づかない方がいいと思う!」
アレ(→┌(┌^o^)┐)なんやと思う!!※あれから常葉の言うとおりググりました。
「ほんっと、兄ちゃんはそのまま海外で働いててよかったと思うっ」
「……は? なんやそれ」
「と、とりあえず姉ちゃんのことは任せて!多分大丈夫やと思うから!」
なんとなく、姉ちゃんも危ない気がするけど、祐や修兄さんは多分無害だし、あとは凌の意味深な感じに気をつければ問題ない。
そう俺は結論付けると、自信を持ってうなづいた。
「……なんや、超不安になってきたわ。次の日本出張、早めようかな」




