閑話:それからの一週間 ― 常葉の場合 ―
今回は会話形式ではなく、文章も入ります。
青白いパソコンを前にして溜息をつく。
はっきり言って私は日々精一杯だ。
だってさ、能天気にいくら振舞ってもさ、こんな状態になって戸惑わないはずがない。
どんなに現実逃避したってさ、逃げられてると思っていた現実はいつだって目の前にあるんだ。
「……もうっ、このくっそ忙しい時に傷口に塩塗んなやっ」
そう、思わず真顔で呟いていた。
ちなみに指はカタカタと打ち込む手は止めてない。
所詮私の呟きなんて、他の人に聞こえてない。声小さいし、誰かに愚痴るほど根性のないチキンですよ、ええ。
「河内さん」
「は、はい!!」
「これ50部コピーしといて」
「わかりました。いつまでに用意したらいいですか? ホッチキス留め、クリップ留めどちらですか?」
「1時間後、ホッチキス留めでお願いな」
「わかりました」
「河内さーん」
「はい?」
「この請求書よろしく」
「わかりました、ありがとうございます……って支払い3日後まで、です、か」
「あ、ごめんね。1週間前には渡さないといけないんだっけ?いけそう?」
「処理しときます。次からは事前に声掛けくださいね」
「ありがとー」
「さて、コピーを……」
「あ、河内さん」
「……50部、あっ、なんでしょうか」
「お茶第3応接に8つお願いしていいかな?」
「わかりました、行きます」
もう、そんなこと考えてる暇ねぇし。
「河内さんいつもありがとうね」
「あ、いえ」
「うちの部署、女の子いないから大変でしょ」
「そうですね。……私だけだと、何かと至らない点がありますし」
「そんなことないよ。すごく助かってるから」
「あ、ありがとうございます。頑張ります」
そう言われて、人員や女子を増やしてくれるわけでもないので、頑張るしかない私はとりあえずお茶出しを頑張ることにした。
デスクに帰ったらコピー機が回っている間に、担当部署に連絡を入れて急ぎの伝票があるのを伝えて作成して持ち込んだら、刷り上がった資料をすぐにホッチキス留めにかかり、終わったら先輩に渡して食堂の空いてる時間にギリギリで滑り込んでお昼ご飯を食べる。
「秦野先輩、お待たせしてすみません!」
「いいよこーちゃん。そっちの部署忙しいもんね」
「うちの部署、女子いなくていつも先輩方とご一緒させて頂いて……ほんとに申し訳ないというか、とっても嬉しいです」
「こーちちゃん大変だよねー」
「橋見さんもいつもありがとうございます」
「ほんとにもう一人女の子いたらええのにね。こーちゃん、遠慮しないで唯一の後輩君に雑用回したらいいんやで?」
「そうですね、でも、彼、結構電話は率先して取ってくれてますし。助かってます」
「もうちょい後輩にやらしといたらいいんやで? こーちちゃん、あの子に遠慮したらあかんで。というか、ちゃんとあの子こーちちゃんに失礼な態度とってへんよな?」
「んー? 大丈夫ですよ? 橋見さんの言うとおり、お口が物申すタイプですけど、結構私が至らない時があるから言うだけですし」
「でも、なにかあったらちゃんとこーちゃん、言ってあげなあかんねんよ?」
「はい。秦野先輩ありがとうございます。あ、先輩こっちの定食にしたんですね」
癒しのお昼ご飯と、お昼休みの女子ロッカーでのツミツミ(ゲーム)+10分少々の仮眠の後、仕事に戻る。
あー、今日もなんとか一日乗り切ったー。
と、思ったら家での出来事をはた、と思い出す。
あー素面じゃやってらんねーわ。
そうだ、ビールかチューハイ買おう。まぁこの程度じゃお酒飲んだ感じしないけど。と、いか君を買って帰ってきてみればテーブルの上にご飯が置いてあるものの、他のメンバーはいない。
ゆず兄と修兄は仕事。
祐と一実はバイトらしい。凌は……部活はたまた、とりあえず家にはいない。
うん、じゃあまぁ気ぃ張らずにご飯食べるとするか。
お酒はいいや。一実か、誰かが帰ってきたら飲もう。
そうして1週間、平日はそんな感じが続き、土日がやってきた。
ちなみに結局、一人酒は一度した。皆いそがしーからね。
案外、仕事の時はテンションがそんなに高くなかったりするOLな常葉でした。
ちなみに秦野先輩と橋見先輩は、前の部署の先輩という設定。




