表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/21

19話

 

 都内の午後三時過ぎ。マクドナルドの二階席に、ずっしりとしたアタッシュケースを足元に置いたフレイヤ、招福まねふく真利亜まりあの三人がいた。


 トレーの上には、いくつものバーガーの包み紙が山のように積み重なっている。三人はポテトをつまみ、ナゲットを口に運びながら、どこか気だるげで、それでいて愛おしい放課後のような時間を味わっていた。


「ところでさぁ………」


 真利亜がポテトを口にくわえたまま、ふと思い出したように言った。


「なに?」


「フレイヤって魔法使いなんでしょ?」


「そうよ」


「その割には、魔法使いらしいところを一回も見たこと無いんだけどなぁ」


「そう言えば、確かにそうか………」


 招福も真利亜の言葉に同意すると、フレイヤは心外そうに青い目を丸くした。


「失礼ね。真利亜が長年苦しんでいた腰痛を治してあげたじゃない、忘れたの?」


「それは感謝してるんだけど、でもあの時、フレイヤは私の腰を普通にマッサージしてくれたでしょ?」


「そうよ」


「だから私の中では、フレイヤは『ただマッサージがめちゃくちゃ上手な人』ってことになってるのよね」


「全然違うわよ! あれは魔法を体の中に送り込むためにやったの。治癒魔法は制御が凄く難しいから、悪い所に少しずつ、手から魔力を送り込んでいかないといけないんだから」


 熱弁するフレイヤだったが、真利亜はまだどこか物足りなさそうな顔をしている。


「でもなんか、思ってたのと違うのよね。魔法ってもっとこう、光がビカビカ光る派手な感じだと思ってたから」


「そういう派手なのも、ちゃんと使えるから」


「そうなの? だったらなんで一回も見せてくれないのよ」


「だって、こんなに平和な街で派手な魔法を使う機会なんてないじゃない。魔物が大暴れしているわけでもないのに」


「……まぁ、そう言われてみればそうなんだけど………」


 真利亜が渋々と引き下がったところで、今度は招福がしみじみとした声を上げた。


「それにしてもさ。フレイヤ、日本語がだいぶ上手くなったよね。今の会話なんか、思いっきり日本人って感じだったな」

「たしかに! 最初の頃と全然違う!」


 二人に褒められ、フレイヤは急に照れくさそうに視線を泳がせた。


「あ、ありがとう、ございます……」


「あれ?また急にカタコトになった」


「き、緊張するとこうなってしまいます! って、どうして二人とも笑うんですか!」


「いや、なんか表情がね」


 招福が吹き出すと、真利亜もクスクスと肩を揺らした。


「そうそう。なんか今のフレイヤ、ちょっと悲しそうな顔してたから、面白くて」


「だからって、笑わないでください!」


「いいじゃん、別にー」


「恥ずかしいですよ……もう」


 フレイヤはそっぽを向いてポテトを口に放り込む。


 ぷくっと頬を膨らませる彼女を見て、招福と真利亜の顔に自然と優しい笑みが浮かんだ。


 今日の夜には、フレイヤは異世界に帰ってしまう。


 それを分かっているからこそ、残された時間をできるだけ明るく、いつも通りに楽しく過ごしたい。言葉にはしなくても、それは三人に共通した、切なくて温かい願いだった。




最後まで読んでいただきありがとうございました。


「ブックマーク」と「いいね」を頂ければ大層喜びます。


評価を頂ければさらに喜びます。


☆5なら踊ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ