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18話

 


「というわけで、金の合計が千五百グラムで、時価にすると総額はおよそ三千万円。フレイヤちゃん、これで取引は大丈夫かしら?」


 日葵ひまりがそう言って綺麗に並んだ黄金のインゴットを指さすと、フレイヤは引きつったような笑みを浮かべた。


「は、はい。とても大丈夫……だと、思います……!」


 ただでさえまだ少し不慣れなフレイヤの日本語が、金額のあまりの衝撃のせいで、いつもよりもさらにカタコトになってしまっていた。無理もない。数分前まで「綺麗じゃない石ころ」だと思っていた指輪やカメオが、気づけば家が何軒も建つレベルの莫大な富に化けてしまったのだから。


「ふふ、それじゃあ取引成立ね。このままだと持ち帰りにくいでしょうから、あそこにあるアタッシュケースに詰めて持って帰ったらどうかしら?」


「ありがとうございます!」


 日葵の気遣いに、フレイヤはコクコクと激しく首を縦に振った。

 アタッシュケースの中に、大小さまざまな金の塊がカチャカチャと美しく収められていく。すべてを収納してパチンと頑丈なロックをかけると、見た目からは想像もつかない『四・五キロの超高額兵器』が完成した。


「いい? 帰る時の電車の中に、絶対に置き忘れたりしないようにね? 網棚の上に載せるなんて言語道断よ?」


 日葵の冗談めかした、けれど目が笑っていない忠告に、フレイヤはアタッシュケースの取っ手を両手でこれでもかと強く握りしめた。


「はい! 命にかけて、がんばります……!」


「いや、命はかけなくていいからね!?」


 フレイヤのあまりに必死すぎる気合いの入り方に、招福まねふくが思わず横から鋭いツッコミを入れた。


 アタッシュケースを両手でぎゅっと抱きしめる彼女の姿に、鑑定室には少しだけ和やかな笑い声が広がる。


 しかし――。


「それと………皆さんに、言いたいことがあります」


 フレイヤはふっと視線を落とすと、小さく、けれど芯のある声で口を開いた。


「これ(金)を持って、私は今日……向こうの世界に帰ります」






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