10話 ~服買い~
「フレイヤの服を買いに行こう!」
真利亜の突発的な発案により、三人は服の買い出しと東京観光を兼ねて『恵比寿』へと向かっていた。
真利亜がそれを言いだした理由は、異世界からやって来たフレイヤがまともな服を持っていないこと。そしてフレイヤの治癒魔法により、長年の腰痛を治してもらった事へのお礼だ。
ここまでの道中は、フレイヤにとっては驚きの連続であり、常に興奮しっぱなしだった。
彼女がこの世界に迷い込んできてから訪れた場所といえば、あの薄暗いゴミ捨て場から、招福と真利亜の自宅までのわずかな道のりだけ。
だからこそ、彼女がいた世界とはあまりに違いすぎる現代日本の光景は、まるで巨大な遊園地にやってきた子供のように、フレイヤの心を躍らせたのだ。
その中でも、彼女が特に目を剥いて興奮していたのは『駅』だった。
階段が勝手に動いていく「エスカレーター」という謎の文明の利器を前に、フレイヤは乗るタイミングが全く掴めず、手前で何度も足を踏み出しては引っ込めるという奇妙なダンスを披露して苦戦していた。
さらに、轟音と共にホームへ滑り込んできた鉄の塊――「電車」を見たときには、青い瞳を限界まで丸くして招福の背中に飛び退いたほどだ。
そうして、いくつもの大冒険を乗り越えてようやく辿り着いたのが、洗練された大人の街、恵比寿の駅だった。
「フレイヤ、行くよ。迷子にならないようにしっかりついてきてね」
真利亜は帽子を目深に被り歩き出す。自信ありげな言葉とは裏腹に、周囲をキョロキョロと見渡したりしていて動作がどこかぎこちない。
(真利亜、大丈夫か………?)
招福はそんな妹の姿を見ながら若干の不安を感じながらも、三人は駅直結の商業施設『アトレ恵比寿』の4階へとたどり着いた。
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