第37話 妹、校内放送ジャックするってよ
朝――。
如月学園の教室、いつも通りの登校風景。
しかし、その静寂は一つの音によって破られる。
「ピンポンパンポーン♪ 本日の朝の校内放送は、生徒会の特別許可により――
『兄さん紹介特別番組♡』をお送りします。パーソナリティは、わたくし、城ヶ崎結衣です♪」
春「……は?」
クラス中、ザワッとざわめく。
「結衣様……?」
「兄さん紹介番組って何……?」
「また妹が暴れてるぞーッ!!」
春「ちょっ……ちょっと待て……!? 俺の名前がタイトルに入ってる放送って何!?」
「まずは兄さんの素晴らしき日常生活から♪」
――「朝6時起床、寝癖は左方向に寝返り跡あり♡」
――「歯磨きは上下左右まんべんなく3分30秒。うがいの回数は5回♪」
――「ちなみに昨日の朝食は、ランチパック2種&ソーセージエッグ定食(ご飯大盛り)でした♡」
春「情報がピンポイント過ぎる!!」
クラスメイト「怖ッ!! 監視カメラ何台設置してるの!?」
「そしてここでリスナーの皆さんからのFAXを紹介しましょう♡」
春「FAXて!? 今どきFAXて!?」
『兄さんの足のサイズを知りたいです』
『兄さんの趣味って? 特技って? 好きな炭水化物は!?』
『結婚はいつですか?』
春「俺の人生がFAXで査定されてるーーーーッ!!!」
「ちなみに、兄さんの足のサイズは26.5cm♡
趣味はツッコミ、特技は忍耐、好きな炭水化物はラーメン、うどん、そして妹♡」
春「最後おかしいだろうがああああ!!」
「以上、兄さん紹介特別番組・第1回でした♪
明日は『兄さんの幼少期を語る~赤ちゃんの頃から可愛かった~』をお送りします♡」
春「やめろおおおおお!!!」
「それでは皆さん、ごきげんよう♪ ナビゲーターは、妹こと、城ヶ崎結衣でした♡」
ザッ……(放送終了)
クラスメイトたちが、一斉に春を振り返る。
「……赤ちゃんの頃から可愛かったんだって」
「かわいがられ過ぎてて引くわ」
「もう“妹の兄”ってより、“妹のキャラグッズ”だよね」
春「誰が公式グッズだコラァァァ!!」
ー午後の放送
教室には緊張感が走っていた。
「……午後もやるのか?」
「兄さん紹介番組、第2回だって噂が……」
「SNSでトレンド入りしてたからな……」
春「なんで俺の寝癖が全国の話題になってんだよ……」
「ピンポンパンポーン♪ 本日も始まりました!
『兄さん紹介特別番組・第2回』です♡」
春「また来たァァァァア!!」
「本日のテーマは……ズバリ!
『兄さん応援ソング♡発表会』!!」
春「発表会!? 何を!? 勝手に何作った!?」
「ではさっそくお聴きください。
タイトルは……『世界一かわいい兄さんへ』♡」
──BGM:壮大なオーケストラ──
「兄さんは朝起きてぇ~ ねっけつハネてるぅ~
でも私にはキラキラのぉ~ 天使にしか見えな~い♪」
「兄さんはラーメンすすっても~
全然ダサくないぃぃぃ~
むしろ麺が!誇ってるぅぅぅ!!(爆)」
春「麺が!? 麺が俺を誇るの!? どんな目線だよッ!!」
「以上、『世界一かわいい兄さんへ』でした♡ 作詞・作曲・編曲・伴奏・録音:城ヶ崎結衣♪」
「ちなみにこの曲は、本日より学園チャイムに採用されました♡」
春「アアアアアアアアアアアア!!?」
「始業:兄さんのテーマ
終業:兄さんがラーメンをすする音」
春「地獄か!!?」
もはや教室は笑いと混乱の渦に包まれていた。
クラスメイト「もういっそ、兄さんを校歌にしようぜ」
クラスメイト「結衣様の愛が全方位すぎて清々しいわ」
クラスメイト「兄さんの顔、学園マスコットにしよう」
春「俺の人格、放送と共に崩壊してるからァァァ!!!」
そして、その日の昼――。
春はついに放送室に乗り込み、扉をガラッと開けた。
春「結衣! いい加減にしろォォ!!」
結衣「うふふ、ようこそ♡ 放送室へ、兄さん♡」
春「この“♡”やめろぉぉぉ!!」
結衣「でもね、兄さん。私、本当に思ってるの。
兄さんは、すごく頑張ってるし、カッコいいし、優しいし……
みんなにも知ってほしいって、心から思ったの♡」
春「…………」
結衣「……やりすぎだった?」
春「当たり前だッ!!」
──だが、放送室に残っていたマイクのスイッチは、切り忘れていた。
「……やりすぎだった?」
「当たり前だッ!!」
全校生徒に、春の全力ツッコミが響き渡る。
教室のあちこちから拍手と歓声が――
「ナイス兄さん!」
「結衣様と全力で渡り合えるのはあの人だけだ!」
「兄さんこそ、この学園の真のヒーローだ!!」
春「……何だこれ」
結衣「ふふっ♡」
「というわけで! 兄さん紹介番組は――本日で最終回です♪
でも私の“兄さん愛”は、毎日オンエア中ですよ♡」
春「だからその“♡”やめろぉぉぉぉ!!!」




