第36話 恋人ごっこは妹の掌の上で
如月学園の昼休み。
兄・城ヶ崎春は、校庭の片隅で作戦会議を開いていた。相手はクラスメイトの女子たちだ。
「……で? 結衣ちゃんに仕返しって?」
「うん。ちょっとだけ、妹の鼻を明かしたいっていうか」
「妹ちゃん、普段から“兄さん命”だもんねぇ」
「でしょ!? たまには俺が優位に立ちたいんだよ!!」
春はテーブルに“偽彼女大作戦”のメモを広げる。
•【作戦名】恋人ふりふり作戦
•【協力者】女子クラスメイトのノリの良い2人
•【目的】妹を動揺させたい!
•【最終目標】「兄さん……私より他の女の子を選ぶの……?」を言わせる!
春「これだ!これが俺の逆転の一手なんだ……!」
女子A「逆にこっちが楽しみなんだけど」
女子B「めちゃくちゃ嫉妬されたらどうすんの?」
春「そしたら……俺の勝ちだッ!!」
◆
翌日。
放課後、校門前。
春は協力者の一人・山田さん(仮名)と親しげに笑い合いながら歩いていた。
春「いやー今日のプリント助かったわ、ほんと頼りになるー!」
山田「えーそんなー、春くんのためなら全然!」
(わざとらしい!)
その様子を、結衣は遠くの植え込みから見ていた。
片手にノート。もう片手にはスマホ。
結衣「……ふむ。兄さん、女の子と楽しげに。なるほど」
結衣「で、あの子のクラスは……あ、わかった。なるほど、協力者ですね♪」
スマホのメモ帳に【兄さんの小芝居確認】と書き込む結衣。
完全に“観察モード”である。
結衣「これは……わざと私に見せてるのね? 可愛い♡」
◆
翌日も、翌々日も、春は“見せつけデート”を敢行。
•教室で手作り弁当を渡される(もちろん中身は女子の母作)
•廊下で「はい♡」と腕に抱きつかれる(すぐ離れる)
•放課後の帰り道で傘を2人で差す(結衣、上空ドローンで監視済)
だが、結衣はただひたすらに無反応。
春(……なんで!?なんで何も言ってこないの!? 焼きもち焼けよ!!)
焦る春。
その日の夜、ついにしびれを切らした彼は――
「なぁ結衣、最近……なんか冷たくない?」
結衣「そうかな? 兄さんが幸せそうだから、そっと見守ってたんだけど?」
春「えっ」
結衣「“山田さんと仲良くしてる兄さん”って、微笑ましいし♡」
春「バレてたーーーッッ!!?」
結衣「うん。最初から♡ ていうか、カメラに全部映ってたし♪」
春「どこにカメラ仕込んだぁぁ!?」
結衣「校門前と渡り廊下と生徒会室のポットの中♪」
春「ポットはダメだろぉぉぉぉ!!」
◆
そして翌日。
春は生徒会室に呼び出され、結衣・凛・梓の三人に囲まれていた。
結衣「兄さんには、反省の意味も込めて――**“結衣命ヘアゴム”**を一週間つけていただきます♡」
春「どんなお仕置きだそれ!!」
梓「完全に宗教じゃん」
凛「カラーは3色展開です。春様の気分でどうぞ」
春「気分で選ばせるなあああ!!」
結衣「もう、妹を甘く見ちゃダメなんだからね♪」
春はその日、“IMOTO♡LOVE”と刺繍されたヘアゴムをつけて帰宅したという。




