後日談 兄は疲労困憊だった。
「もうダメだ……筋肉痛というより骨痛……」
城ヶ崎家のリビングのソファで、春は保冷剤を抱えて倒れていた。
背中、肩、ふくらはぎ……全てが限界。いや、限界を超えていた。
そこに現れたのは――もちろん妹。
「兄さん♡ お風呂、湧いてますよ。今日は特別に“疲労回復バスソルト・プラチナver.”入れておきました!」
「どこで仕入れた!?」
「ドバイの王族専用通販サイトです♡」
「どんなルート持ってんの!?」
⸻
一方その頃――
◆学園・生徒会室
梓は、びしょ濡れになった髪を乾かしながら、黙々と議事録をまとめていた。
水上騎馬戦の。
「……これ、本当に公式行事じゃないのに、なんで生徒会が議事録つけてんのよ……」
副会長の凛がすかさず微笑む。
「梓さまが“反省文出すから書記を任せる”って言ったので♡」
「……私、そんなこと言ってない」
「言葉にしなくても、目が語ってました♡」
「怖い!」
梓は机に突っ伏して叫んだ。
「……ぜったい、あの兄妹、学園から追い出してやる……」
(※なお、内心ではちょっとだけ楽しんでた)
⸻
◆その後、兄の部屋
「兄さん……今日はお疲れ様でした♡」
「いやほんと、もう二度と水上戦とかやりたくないからな……」
「え? じゃあ次回の“兄さん争奪・無重力バンジー綱引き”は中止ですか?」
「やらせる気だったの!?」
⸻
春は、この日を境に、妹の思いつく“イベント”には常に警戒するようになった。
だが同時に――
(……まあ、結衣が楽しそうなら、いいか……)
と、こっそり思ってしまった自分に対しても、ちゃんと自己嫌悪した。




