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第17話 貸し切りプールと水着と、兄さんの受難

「兄さん、今日は特別イベントの日ですよ♪」

と満面の笑みで宣言したのは、妹・城ヶ崎結衣。中学2年生にして天才投資家、そして兄にベッタリの完璧超人である。


「イベントって……何かまた、妙な企画立ててないよな?」

「もちろんです。兄さんのために貸し切ったんですから」

「何を!?」

「プールです♪」

「いやおかしいだろ!?」



というわけで、やってきたのは近所の高級リゾート施設の屋内プール。

もちろん「貸し切り」。

入館時には、「城ヶ崎様、ようこそ」とスタッフが深々と頭を下げた。

兄・春の顔は引きつっている。


「何でお前、こんな簡単に貸し切れるんだよ……」

「兄さんの笑顔を守るためなら、資本主義なんてチョロいものです♪」

「発言が悪の幹部なんよ」



水着に着替えると、兄は驚愕した。

「……結衣、それは水着って言えるのか……!?」

結衣が着ていたのは、可憐で品のあるフリル付きのワンピース水着。白地に水色のドット柄で、リボンが2つ。

子供っぽさを残しつつも、なぜかモデルのように着こなしている。


「どうですか? 可愛いですか? 兄さんのハート、撃ち抜きましたか?」

「え、いや、まあ、似合ってはいるけど……なぜドヤ顔?」

「兄さんの視線、10秒ロックオン確認♪」

「勝手にAIモニタリングみたいなことすんな!」



しばらくは穏やかに水遊びしていた兄妹だったが、事件は突然起きた。


「おおーっほっほっほ! こんなところでくつろいでるとは、悠長ですねぇ?」


プールサイドに現れたのは、結衣のライバルである高等部生徒会長・霧島梓。

水着は黒の競泳タイプで、謎の圧を放っている。


「なぜお前がここに!?」と兄が驚くと、

「お手伝いさん(=橘花 凛)が、こっそり誘ってくれたのよ。ふふ、可愛い後輩の頼みは断れなくてね」

「……あいつ、また余計なことを……!」


すると、プールサイドのベンチから凛が涼しい顔で現れる。

「ふふっ、女子の水着回には”アクセント”が必要かと♪」

「エンタメじゃねぇんだぞ!?」




「では、これより“兄さん争奪! 水上騎馬戦”を開始します!」

結衣がいきなり騎馬戦を提案してきた。


結衣が高らかに宣言するその隣で、兄・春はプールの中に膝をついていた。

彼の肩の上には――結衣。


「ねえ、俺、なんで“馬”役なの?」

「兄さんは私の土台。私の人生の礎ですから♡」

「重みが違う意味でやべぇよ!」



結衣チーム:上・結衣、馬・春

梓チーム:上・梓、馬・凛

そして実況は、なぜかプールサイドに設けられた特設席に座るAIスピーカーが担当していた。


「ルールは簡単! 相手の上に乗っている者を水に落とした方が勝ちです!」

「ただし、兄さんを沈めたら即失格です。命に関わるので!」


「誰がそんな危険なルールを!?」

「私です♪」

「やっぱりか!」



そして――笛の音が鳴った。


「行きますよ、兄さん! 水上機動戦、開始です!」

「うわ、早い! なんでこんなスピードで進めるの!?」


春は結衣にしがみつかれながら、必死にプール内をバタ足で前進。

一方で、対抗する梓は――


「凛、突撃。正面から」

「お任せを♡」

凛の推進力はもはや水泳部レベル。ぐんぐん距離が縮まっていく。


「ふふっ、あなたたちの仲の良さ、壊してあげるわ……!」

「ちょっと生徒会長、それ恋のライバルみたいなセリフ!」



激突!


「兄さん、右旋回っ!」

「ムチャ言うなぁー!」


バランスを崩しつつも、何とか踏ん張る春。

結衣は両手で梓の手をはたきながら、華麗に体勢を立て直す。


「兄さんは、誰にも渡しません!」

「その発言、プールじゃなきゃ逮捕案件だよ!?」


梓も負けてはいない。


「凛、浮上ジャンプ!」

「行きますっ!」


凛が一瞬、水を蹴って沈み、勢いよく水上にジャンプ。

梓が高く持ち上げられ、結衣に飛びかかる!


「ふふっ、勝負ありね!」


……が、


「兄さん、下がってっ!」

「了解ぃっ!」

春、奇跡のタイミングでバック転回避(ほぼ溺れかけて後ろにのけぞっただけ)。


結果――


「え、ちょっ、待っ――」


\ドボーン!/


梓、沈没。



「勝者~~~! 結衣&兄さんチーム~~!!」


「兄さん、ナイスファイトですっ♡」

「……ぜえ、はあ……背骨の2本目、折れたかも……」


プールの縁に掴まりながら、春は遠い目をした。


浮上してきた梓は、髪を濡らしたまま無言でプールの縁に座り、

「…………次は負けない」とポツリ。


すると凛が隣でにっこり笑って、

「私、梓さまのそういうところ、大好きです♡」と爆弾発言。


「……は?」と梓。


「えっ!? ラブコメそっちに展開するの!?」と春。


「ふふっ、ライバルが増えるのは歓迎ですよ。だって兄さんは、絶対渡しませんから♡」

結衣の笑顔が、どこまでも無敵に光っていた。


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