求めたことが起きる世界
扉を開けてすぐ、わたしは体の異変に気がついた。
彼はにこやかだがどこか悲しげな顔をしている気がした。
「父さんと母さんの聖堂に戻ろう」と手を握って歩く。
聖堂には、二人がいた。
わたしたちの顔をみるなり、喜びとすこし困った顔をしていたさっきのバイヤン王子と同じ顔だ。
「いやいや、無事戻ってきてなによりだ。そして、おめでとう」と、さきほどからコップに入っていたぶどうの発酵ジュースを掲げた。
ヘルさんも
「おめでとう。よくやったわ」と、言って同じように祝福してくれた。
私は、あの扉のなかのこともあり
「どれくらいの時間が経ったのでしょうか?一ヶ月、三ヶ月?」と聞く。
「10分くらいかな?」
「たった10分?廊下を歩いて終わるわ」と言った。
そんな私をよそに賛美の言葉をかけてくれた。
「さて、求めれば与えられる。君たちは求めた。見事に6つの冒険も『振り返らず』それを成し遂げた。フリッグ姫も気がついているだろうが、そなたの中に新たな生命を授かった。とても尊いことだ。おめでとう。妻にわからないことは聞くといい。私よりもあてになるだろう。子供はスクスク育って、ここの生活に馴染むだろう」
おめでとうと言ってくれるが、どこか引っかかる言い方だ。
なにか私に隠しているように思い私は
「本当に子供はスクスク育つのでしょうか?」と言った。
「ああ、子供はスクスク育つ」
すると、パイヤン王子が覚悟を決めたようで
「ぼくから伝えます。ぼくの役割です」と父に向かって言った。
「そうだな。わたしたちはここを離れよう。ヘル姫いこうぞ」「良い夜を、あなたにも、子供にも幸あれ」と、聖堂を出ていった。
バイヤン王子と二人っきりになり話しだした。
「隠しても、意味ないから単刀直入に言うよ。あの扉に入ったことは覚えているね?」
「ええ、言葉では言い表せないけど、月と太陽の部屋は不思議なところだけど上手くいったと思うわ。あの赤ちゃんは何だったのかしら?わたしの子供の授かったことと関係あるのかしら?」
「ああ、僕と君は双子の魂なんだ。これ以上に引き寄せ合う存在はない。とても尊くすべての記憶をその子は受け継いでいる。スクスク育つよ」
「それは、さっきも聞いたわ。子供がスクスク育つのは本当なの?」
「本当さ。ただ、その後のことは覚えているかい?」
「ええ、扉の前で愛の誓いをしたわ」
「何を君は求めた?」
「エロスってなにかわからず、愛もよくわからいから、どんな愛があるか知りたいと思ったわ」
「その通りだ」
「疑問に思うことはいけないことなの?」
「善悪ではないんだ。一方向に動いているわけではないからね」
「はっきり言ってよ」
「求めたことが起きるんだ。つまり、エロスを呑み込めない愛を知る旅にでる」と、彼が言った。
わたしは、少し怖くなった。自分の言ったことの重大さ、求めたことが分かった気がする。
そんな私を見て
「けど、いますぐにってわけではない。ここでも時間と空間の概念は存在している。いまは君の幸福と子どもの幸福を考えよう。未来のことはわからない。いまを生きていればそれで十分さ」と、彼は言って私の口に近づいた。




