婚約破棄に歓喜のガッツポーズを決めて踊ったら、なぜか王太子が泣きついて引き留めてくるのだが?
「ヴィクトリア・フォン・ローゼンベルク! 貴様との婚約を破棄し、国外へ追放する!」
華やかな夜会会場に、王太子アデルバートの声が響き渡った。
彼の傍らには、男爵令嬢マロン・シュクレが寄り添い、不安げな顔を浮かべている。
周囲の貴族たちは息をのみ、視線を俺――ヴィクトリアへと向けた。
(国外追放? え?)
婚約破棄はともかく王子にそんな権限あるのか? 馬鹿なのか?
そもそも犯罪者(?)を国外追放とかしたら外交問題だろ?大丈夫か?
……いや? この公衆の面前で王子が宣言したってことはマジでありうるのか?
いいとこ国境付近のどこぞの辺境に追いやられるってところか。
ということはニート確定?
「よっしゃあああああ!!」
俺はその場で全力のガッツポーズを天高くつき上げた。
勢いそのままにドレスを膝までまくりステップを踏み始める。
毎朝5時起きでコルセットを締め上げられるのも、王太子妃としての王室礼法の叩き込みや歴史と外交の家庭教師の日々も、社交界での腹の探り合いももうしなくていいんだ!
「自由だあああああ!マナーも貴族社会の重圧もこれでもう関係ナッシン!!」
周囲の貴族たちが「あのお淑やかなヴィクトリア様が狂われた……!?」と戦慄する中、一番動揺してフリーズしていたのは他ならぬアデルバートだった。
「え……? ヴィクトリア、何故舞っているのだ? 追放だぞ? 歓喜の舞を踊るような状況ではないはずだが?」
それを見た周囲の貴族たちの反応は……
「よほど、辛かったのだろうな……」
「あんなに喜ぶなんて……相当ひどい扱いを受けておられたのね」
「一体殿下は何をなされたのか?」
というようなものだった。
「待て、待て! 誤解だ! 私が理不尽な悪逆を働いたかのような空気にするな! 頼むから少しは悲しそうな顔をしてくれ……!」
マロンがアルデバートへ「え、こいつ本当になにしたの?」みたいな不審な目を向ける。
「マロン違う! 私は何もしてない! ヴィクトリア頼むからその踊りをやめてくれ!」
懇願するアルデバートを無視して俺はステップを踏み続けた。そしてひとしきり踊った後言った。
「殿下、男に二言はないですよね? では私はこれにて失礼させていただきます。 色々と準備がありますので」
周囲に広がる「あぁ、殿下振られたな」みたいな空気。
「それでは皆様ごきげんよう」
「待て待て! 分かった! 撤回する! 追放処分は撤回だ! だからこの場をこのままにしていかないでくれ!! これでは私の面目が丸つぶれではないか!!」
テメーの都合なんか知るかボケ。これで俺は自由気ままなニート生活が待っているんだからもう俺を止められるものは何もないね。
「ではこれで。もう会うこともないとは思いますが、お元気で」
ぶっちゃけもうどうでもいいが精々腹黒男爵令嬢と幸せになるんだな(笑)
「ヴィクトリアーーーー!! 私をおいていかないでくれぇええええええ!!」
「うるせえ付いてくるな!! 俺はもうニート生活を満喫する準備で忙しいんだよ!!」
俺は泣いて縋り付く王子を無視し、栄光のニート生活へ向けて力強く第一歩を踏み出したのだった。




