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将軍信忠政権下の日本の内情

日本摂津国東成郡大阪城津曲輪で備前斎服山城から来た長駆(テンダー)式蒸気機関車が引いて来た貨車を蒸気式滑車台の前に短駆(タンク)式蒸気機関車が運び出す。

荷役が蒸気式滑車台に玉掛けし、大砲が降ろされ船の中に消えれば筒大将の声が響く。


「阿武楽斎様の大砲は凄まじい」


そう言ったのは大阪幕府織田水軍三番頭の九鬼弥五郎澄隆。彼の目の前で鋼綱(ワイヤー)などを用いた軽量化と多数の紡績機などの機械化から生み出された多凧船(クリッパー擬)に乗せられていく大砲。それは変わった形状の砲弾と共に積まれていく。


「鋲弾を用いて射程は二千目取(メートル)か」


四斤山砲という物を知ってれば想像しやすいだろう大砲。弾丸を回転させる施条ライフリングを施し、また弾丸にも鋲を加えた、要はライット・システムの砲。黒色火薬を用いる所為で火薬を大量に必要とし、また溝を埋め手入れがクソだるい代物。

内藤長忠と言うバグが「うわスゲェ!! ダイア使ったら超削れるじゃん!!」と作り上げちゃった旋盤によって生み出された劇物の一つであった。

てか、此処にある物は大体そうだ。余りにも早く産み落とされた劇物の山。船や鉄道に加えてそこから下ろされる船積(ふなづみ)と呼ばれる鉄製の箱の中身である缶詰まで異常な事。だがこれが平常な世界となっていた。だが、しかし。


「変化が異常過ぎて大鬼様に付いて行ける気がしないなぁ……」

「これは褒め言葉だが、内藤殿は異常なのだ」


九鬼弥五郎澄隆が背にかかった言葉に振り返れば苦笑いを浮かべた村井民部少輔貞勝。織田幕府大老の一人にして政治の中枢を担う一人だった。先の相国にして大御所である織田信長の頃からの重臣である。

今も続く天正大地震の復興と被災した国人衆の救済として家臣として取り仕切りつつ小田原征伐の準備を粛々と進める人間。

あと畿内の政と朝廷との折衝と造船指揮と被災者や探索移民船団の物資用意の取り纏めとかもやってる感じ。


「我等の様な者は彼の後を追えば良いのです。内藤殿は切り拓く者。我等はその路を整えるのだ。ゆっくりでも構いませぬよ」

「……なるほど」

「此度の小田原征伐。頑張ってくだされ」


村井民部少輔貞勝はそう言って一礼し去っていく。その背を見ながら九鬼弥五郎澄隆は「民部様も大概異常側何だよなぁ……」と思っていた。


「コッチだ!! チクショョオ父上何処に行かれたァッ!! あ、弥五郎殿!! 父上をご存知ございませぬか!! アノヤロウ仕事ほっぽいて逃げやがった!!」

「え、あ、彼方に……」

「忝い!!!」


九鬼弥五郎澄隆は思った。凄い大変そうだなって。




相模国足柄下郡小田原城。後北条氏の本城であり総構えを備えた鉄壁の居城である。かの上杉不識庵謙信さえ落とす事の叶わなかった難攻不落の城。

めっちゃ囲まれてた。北条家の支配地尽くの城という城は既に落城し尽くし、敢えて徹底して小田原城に反抗的な者達は追い立てられている。四方八方に木瓜の旗。

小田原城の西南西にある木を隠れ蓑に一夜で建てられた様に見せた城の天守閣から織田太政大臣信忠は家臣や要請に応じた大名達と共に小田原城を眺めていた。


「太政大臣様。皆様をお連れしました」


階段の下から声がして振り返れば、階段を上る音が響き下から巨人が出てきた。バグにして存在チート転生者である内藤勝左衛門長忠である。身の丈はおよそ七尺あり2㍍を超えている鍛え抜かれた隆々の体躯だ。

羽人の鷲羽と蛮尊(バイソン)牛の角を用いた兜飾り。黒い鎧の上から北奥(アラスカ)刈武(カリブー)の毛皮を用いた着物を羽織っていた。また腰には刀と共に赤嶺(オーストラリア)狩射(カイリー)を現代の銃を入れるホルスターの様に吊るす。

彼は自身に続いて来た者達へと振り返り織田太政大臣信忠の側で膝を突き。


「皆様、太政大臣にして御公儀。将軍様でございます」


内藤勝左衛門長忠の言葉に先頭の男が進み出た。


「佐竹次郎義重に御座る。只今参上いだした」


その場で片膝を突き頭を下げた彼に続いて大名達が同じ様に名乗りを挙げたりと服従の意思を示しながら挨拶する。彼らの目には朝廷から渡された旗や刀と上方の力量を示す服飾甲冑が写っていた。既にこの場に来るまでに見て来た勝ちようのない戦力差によって何らはずる事無くだ。


「よく来てくださった。楽睡庵殿も皆様の案内御苦労だった」

「労い辱う御座います。大役を果たせ安堵しております」

「如何にも慣れんな。楽睡庵殿、もう少し気楽に出来ませんか」

「それはなりません。征夷大将軍にして将軍。何より織田家の嫡男で御座います。かの上杉家を下したのですから鷹揚に構えてくださりませ」

「……うーん。仕方ない、か。

さて、皆様方。お待たせいたしましたが存分に見てくだされよ。これより仕上げを行います。既にこの城で士気は崩れ落ちているとの事ですが介錯は必要だ。

関東の皆様にも知って貰わねば」


小姓が鎧を鳴らして退室し狼煙が上がる。小田原城の周囲は陸において付城と軍勢の壁、海において50を越える船が城に横腹を向けていた。それらが一気に白に染まって。


遅れてズンと音の壁が誰もを飲み込む。織田太政大臣信忠が感心し、内藤勝左衛門長忠は安堵する。集まった大名達は腰を抜かす事を如何にか堪えた。


小田原城の海側の総構えは串の様に変わり果て馬屋曲輪が壊滅し二の丸の平櫓が薙ぎ倒されて崩れ落ちる。


「未だです」


織田太政大臣信忠が言う。諸大名はギョッとした。そして立て続けに大筒が響く。凡そ五度に渡る一斉射撃。難攻不落の城が崩壊していく。


そして数日の後に後北条家は降伏。北条相模守氏政は自身の命と引き換えに臣民の除名を嘆願。彼以下責任を問われた者は自刃した。


「勝敗は決まっている。北条どは因縁深えが、流石に感じ入るわ。敵ながら天晴れど言わざるおえん」


切腹を見届けた一人である佐竹次郎義重の言葉である。




赤嶺(オーストラリア)豊鰡(ピルバラ)国鉄ヶ原郡湖江津。手持ち無沙汰の日本人移住者達が広大な海の遠い向こう。船団から濛々と登る黒煙を恐々と見ていた。


「おいヤマトジの族長殿が盾と水桶持って出て来てくれたぞ!!」

「そうか!! 急げ!! ん?」


だが濛々と煙を吐いていた船は沖合で停泊して帆曳舟の曳航を受け始めた。そして石垣を用いた埠頭へ巨大な船達が入ってきて滑車台(人力クレーン)に引かれ着岸。それらは帆柱と共に余りにも大きな鉄の筒が伸びていて、接岸こそ不可能だったが風を無視して進んでいた。

タラップというか乗り降りの為の板が船から出てくる。その板の先に赤嶺の群衆の中から小柄な豊鰡(とよぼら)国代官青山与三右衛門吉次が前に。巨大な男が船から出てきて。


「与三! 久々だな!!」


そして船から実質的に兄弟と言える内藤勝左衛門長忠が嬉しそうに出てきた。広大な鉄鉱石の産出が期待された為、僅か半年ばかりだが代官を任され久々の会合である。だが青山与三右衛門吉次は眉間の皺を寄せていた。


「勝三、アレ機帆船でしょ」

「あ、お、おん」

「周り見ようか」


割と確り怒った声色に内藤勝左衛門長忠は漸く周囲を見て。


「あの、ごめん」

「その感じだと何か急ぐ様な事があった訳じゃないでしょ。定期航行の船で先に伝えておいてよ。水も石炭も準備しなきゃいけないんだから」

「本当ごめん」


青山与三右衛門吉次は溜息を最後に一つ。


「で? 如何したの。まだ日の本にも数隻しかないでしょ」

「ああ。だから赤嶺の鉄や石炭を運んで沢山作ろうと思ってな。転炉も出来たし大量の鉄と石炭が必要だ。

だから試験航行を兼ねて蒸気機関車を持って来た。採掘場からここまで線路を敷こうと思ってな」

「あぁ、それで紋人と交渉する為に来た訳ね」

「そう言うこった。絵とか壊したくねぇしな。協力を得られなきゃ困る。

一先ず短駆(たんく)式を二両と貨車と客車を持って来た。線路もだいぶ持って来たけど先ずは港だな。

その間に線路を敷けるかどうか、如何敷くべきかを見聞しなきゃ」

「なるほどね。ちょうど族長が来てるよ。先ずは機帆船の事からだね」

「……あぁ、しくじった」


赤嶺最初にして外海最初の鉄道となる鉄ヶ原鉄道を始め鉄道の敷設が始まった。

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