将軍信忠政権下の日本の動静
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日本摂津国東成郡大阪城大評定の間で津田七兵衛信澄こと備州津田家の津田美作守信澄と平朝臣織田太政大臣兼右近衛大将織田信忠が揃っていた。
「さて、どうするか……」
織田太政大臣信忠が言う。それを白湯を飲みながら聞いていた津田美作守信澄が「虎とか良いよなぁ」などと思いながら。
「新作羽織の柄か?」
「それは虎に決めた。勝左衛門殿の話だ」
「イスパニア。エウロペの事か」
「うむ。呂宋島の事。父上や大老達もイスパニアに関しては危機感を抱いていた。向こうの技術や知見は欲しいが恐ろしさもある」
「最低限でも水軍の強化は必須だろ。幸い内藤様のおかげで船は作れる。問題は船乗りを増やす事か?」
「ああ。勝左衛門殿の水軍奉行所を真似ては居るが時間はかかる。こればかりは如何しようもない」
「それで言うとイスパニアという国の動きは遅いな。それだけの大きさなのだろうが」
「王が全てを裁決しているなどと言っているらしいが。片道で一年以上掛かるとも聞くし好き勝手にされる可能性が有るのだろう。呂宋はもう副王が変わったそうだと言うし」
「だが交渉は継続してるぞ。って事は上位下達は確り出来てるんだろ」
「だな。まぁ一先ずは高山国。は、無かった様だから畿内や東海と同じ形で高山とするか、それとも城を建てた一帯を高山国とするか。ともかく勝左衛門殿は嫌がるだろうが人手という意味で食い詰め者もそろそろ送る必要がある。禁令を徹底させて御寛恕頂こう」
「氣多伽藍の者達に如何伝えるかね。せめて文字があればな。寧ろ言葉を勝左衛門殿が残さねばならないんだろ?」
「そうだ。だが、だからこそ人を送らねば。蓬莱に送るのは甲斐信濃の者達にして他の地の者は高山国に送ろう。
いっその事だ。南方探索の拠点として行く行くは規模を拡大する前提で動くべきだな。
それこそイスパニアとの関係如何によっては水軍を作り支えられる程の数が必要だろう。
ただ水量が心配だが」
「寄港地としてなら琉球国を使える。蓬莱ほどではないが数百程なら如何にでもなるだろ。とするとどの程度の者達を行かせるか」
「造船技術を持つ者達は必須だな。材木は多いと聞くが船を作れば直ぐに無くなる。また現状の範囲では貴金属は貴重だそうだ」
「武器の類も必要か。それと水が少ない為に米を作るには難儀する土地だそうだな。食い詰め者だけを送れば首が絞まるな。蕎麦と合わせて送れば如何にかなるか?」
「兵の事まで考え出すとキリがないな。……やはり遣欧使達だな。期待はできんが敵対は避けたい所だ。異教徒に対する行動が行動。不安だが」
「祈るしか無いだろ」
「大ウスにか?」
「大ウスにも、だ。弟が態々、改宗までしたんだからな」
一方その頃。
イスパニアはマドリッド。未だ建築途上だが広大にして厳格な宮殿にして国王霊廟サン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアル。その主人が政務を取り仕切る国王私室で借金と共に王位を継ぎ、日の沈まぬ国の主人となった男が羊皮紙の山の中に埋まっていた。
不機嫌そうな鉄面皮。今は亡くなったがイングランドのなんか凄い不憫な生い立ちの肖像画酷すぎる血濡れの女王と結婚したり、エゲつねぇ官僚機構を整備したりと冷酷な印象を抱かせるドン引きするくらい有能な破産しまくり王。それも単一の王ではなくイスパニア王にしてポルトガル王にして一時とはいえイングランド共同統治者。
イスパニア慎重王ないし書類王フェリペ二世兼ポルトガル王フェリペ一世。
「陛下」
「何だ」
入室者たる秘書官へ慎重王フェリペ二世の端的で事務的な問い。
「ハポンの使節がリスポンに到着いたしました。サン・ロッケ教会に宿泊しております」
「甥の所に寄るのだったな。三ヶ月後か」
「……ああ。それくらいですね。
ドン・ペドロ・オダ。ドン・ジュスト・タカヤマ。ドン・アウグスティン・コニシ以下18名全員が到着したそうです。大半の者がラテン語を操り、今挙げた三名は随分と流暢にラテン語を操るのだとか」
「ふむ、神の恵みに応えた訳だな。であれば彼等がここまで来れたのは神の恩寵だ」
「水夫達も粗野ではあるそうですが貴族の様に振る舞う、と。ラテン語は全く用いれぬ様ですが品があるそうです」
鉄面皮の眉が僅かに動き始めて書類から視線が剥がれた。イスパニアの大半の水夫とはそこら辺で酔ってる男を取っ捕まえて放り込まれた者達。要は半ば浮浪者の様な者や騙されるアホである。
態々、遠国まで送って来たのだから優れた者達なのは分かっているのだ。しかし少しの驚きを覚えた。
「水夫が、か?」
「報告によれば」
「ふむ。船は如何だった。未だガレオンを作り始めたばかりだが中々の出来だとか」
「ヌエバ・エスパーニャからの報告書でしたか。確認させておきます」
「うむ。頼んだ。さて、ではフランドルの叛徒共の話だ」
「は」
この三ヶ月の後のイスパニア訪問から始まった天正遺欧使によりヨーロッパ。特にカトリック側に日本という物が知られた。
極めて厚遇された彼等だったが偽銀事件により緊張感が伴い経済的繋がりに終始することになる。
偉大にして広大なる渓谷と川を船が進む。
「ハアブ」
褌の様な格好に槍を持った男が指差した。皺のある日に焼けた顔。肌は濃いめの褐色だった。
「ハトゥーヴァイ」
発言した男性の言葉に頷いたのは人種的に近しいだろうが幾らか若く着物を着た男。彼は更に振り返り着物の集団へ。
「次の砂漠はあの山の向こうだそうだ。変な匂いがして燃える黒い水が湧く」
「ほぉー! そいつはぁスゲェ。ァイラタヴァ殿、感謝するぜ。外海には未だ未だ知らねぇモンが万とある。大鬼様が興味を持つのも頷けるってモンよ」
集団の人間は普通に人種が違い気持ち肌の色が薄かった。てか普通に髷を結って着物を着てる。格好としてはマタギの様な姿だが武家の集団だった。
「気にするなロクサ。ナイトゥ様やお前達のおかげで助かっている。布と薬と鉄、この矢がどれほど我等を助けてくれたか」
モハーヴェ族族長のァイラタヴァは手に持つ槍を少し上げて代表者である水野六左衛門勝成へ笑って応えた。
「に、しても本当に大和言葉が巧みだな。ヘタな日の本の連中より上手だぞ」
「ヤマト言葉?」
「すまん。日本語の事だ」
「ああ。一年近くナイトゥ様に着いて回って教授して頂いたのだ。懐かしいな」
「お! 良いな。何度でも聞きたいぞ」
「ああ、話そう。交渉を行う父に着いて海へ向かったあの日の事を」
後にモハーヴェ族が中核となる蓬莱谷川国聖山郡。モハーヴェ族ではアヴィクワアメと呼ばれる事になる地域の探索を日本は始めていた。今で言うところのカルフォルニアとかの辺りである。




