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大体こんなもん差

 鄭氏政権との密貿易に使われていた台湾の澎湖諸島に客人が来ていた。台湾自体に外国人が来るのは珍しい事になって久しいが依によって清朝からだ。絵が趣味である将軍の話を聞いた乾隆帝が親善に遣わせたのである。


 沈銓、字を衝之。号を南蘋。


 彼は澎湖津城で歓待を受けた上に、様々な生徒に教授し、将軍の来訪まで受けて帰った。


 滞在は出島である澎湖諸島に限られたが凡そ2年間の滞在となる。


 画材メッチャ持って帰った。


「で? 倭国は如何だった」


 沈南蘋は預かり知らぬ事であるが当然の如く乾隆帝は密偵ことスパイを忍ばせていた。


「陛下、実直に申し上げます」

「うむ。それを朕も望むぞ。で、あるからこそ貴様を送ったのだからな。ハーッハッハッハッハッハ!!」


 乾隆帝はパワフルという言葉こそ似合う皇帝だった。絵を愛し文学を楽しみ失敗もあれど外征を繰り返す。まだそうなっては居ないがそうなっておかしくない。

 先代皇帝達が優れていたとは言え最大図版を築くだろう男だ。まぁ現状既に苛烈だったり何れ奸臣重用したりするだろうが。ともかくパワフルで有能なのは間違いない。


「絵を好くと言うのであれば立場が違えば良き話し相手と成れたであろうになぁ。で、如何様であった。東番(台湾)の攻略は」

「攻略は不可能でございます」


 乾隆帝が顔をワッシィ……と歪めた。極めて不愉快そうにだ。


「帆船は甚だ多く火器はもっと多い。侍は烏銃に加え冷兵器を鍛える事を当然の事とし、東蕃(原住民)にも火器と倭刀を与えております。また東蕃(原住民)であっても太守や王になる者もおり、不満が無い訳では御座いませんが埋伏の毒は仕込めません。

 そもそも我等は澎湖諸島から出ることが出来ません。また海澄公、鄭成功の家臣だった者もおりますので」

「直ぐに露見するか。面倒な……。火器は?」

「大炮の大きさを見るに相当な射程と威力でしょう。呆れる程の花火を打ち上げていたのも気になります。南蘋殿を迎えたが為とは聞きましたがアレを火器に使うとなると近付けませぬ」

「兵は精強、民心は安定、火薬も多い、か。攻め難いな」


 乾隆帝は帝位に着くべくして着いた。本人としては清朝の威信の為、満州という故郷の側にある強大な外敵を討ちたい。だが最初から最強と目される相手に無策で突撃する趣味はない。

 まずは何より勝つことが重要。それが国家と帝位の強化安定に繋がる。そう信じていたし皇帝はそうあるべきだと考えていた。


「仕方あるまい。他の地の情報を探る。ただ機会があれば倭国の中に入ってでも調べ上げろ」

「は」

「大義であった。その方は下がって良い。誰か張廷玉を呼べ!!」


 乾隆帝はふと思い出した。


「蒙古の更に北方に国があったな……」




 ロシアを帝国へと押し上げた男が居た。ピョートル一世と言う偉大な男だ。長身で器用であり知的好奇心に溢れ戦に強い大帝と呼ばれる存在。

 君主の中でも指折りの為政者だ。だが敢えて重箱の隅を突くと言うか、重箱の隅をツァーリ・プーシュカで吹き飛ばすと言うか。兎にも角にも彼の為政者として唯一と言って良い政治的なガチの瑕疵を言えば後継者問題が挙げられる。

 後継者問題という物はロマノフ朝に限った話ではないにせよ、妙に陰惨というかドロっとしたと言うか。ともかく何かジメジメしてデロォって感じで関係者がだいたいシベリアに送られるロシア帝国の皇位継承のゴタゴタは言っちゃアレだが彼に端を発する。


 何がヤベーって現状が男系断絶した上にマジで政治を何も知らないどころか碌な教育さえ受けていない女帝が擁立されちゃってんだから混乱しねぇ訳がねぇ。

 で、あれば誰が今のロシアを取り仕切っているかと言えばアンドレイ・イヴァノビチ・オルステルマン伯。ザクセン公国ヴェストファーレン出身のザクセン人である。ヨーロッパ諸国の言語を操る優れた外交官だった男だ。


「ポーランドの事は上首尾に終わった。喫緊の問題はオスマン帝国だな。次にハ・カン国」


 ただアジアにはそんなに詳しくない。ハ・カン国は八寒を国だと勘違い、規模と範囲的には間違っててもおかしくないが、している感じである。今のロシア帝国は複数国と国境を接している状況だった。

 アンドレイ・イヴァノビチ・オルステルマン伯はストロガノフ家からの書簡を見つけて溜息を漏らす。


「オスマン帝国との問題は早い対処が必要だがハ・カンの問題も捨て置けんな」


 ポーランド継承戦争の最後の方でオスマン帝国と揉め事を起こしている。その問題程では無いにせよハ・カン国の問題は年々大きくなっていた。

 クーバット・イワノフの会合の当初はコサック商人が毛皮を仕入れに行っていたのだ。だがハ・カン国はあり得なくらいの量の黒貂の毛皮を集める事が可能で、何度か目が眩んだ者達が略奪をしようとして、サムライとか言う戦士にハチの巣にされて首を撫で斬りにされた。そんな事が重なり関係が悪化した挙句に最近シベリア先住民に鉄砲とか売り出したのである。

 コレのおかげで毛皮は手に入らないわ、先住民の反乱は激発するわ、割とマジで洒落になってない。


「全くこれもシベリア軍司令官の連中がメチャクチャするからだ。真っ当な統治をしていればハ・カン国にヤクサを持って行かれなかったと言うのに。何がホロープを取り返してほしいだ阿呆共め」


 偉大なるピョートル1世は欧州の各国に外交官を駐在させた。その際にハ・カン国と関係修復をする機運も高まったのだが、アレクセイ王子の逃亡事件が起こる。更にその対応で使者を送り損ねている間にシベリア先住民と軍司令官の争いが起こってしまった。

 それ以降は情勢激ヤバすぎてハ・カンと国音信不通となっていたのである。大帝は安定した黒貂の毛皮と言う収入源を惜しんだが後回しにせざるおえなかった。だがポーランド継承戦争が終わった今なら取り込む余裕がある筈なのだ。


「……しかし問題も多い。改善の必要性があるのは認める。だが抜本的な解決が必要だな」


 とは言えロシア帝国は外交能力を西洋に注ぎ込んでいるがハ・カン国は外交官どころか使者を送るのさえ難しい距離にある。距離もそうだが余りの寒さに使者がカチコチの死者になっちゃうくらい寒い。


「ふむ、一先ずはシベリアの査察が必要だな」


 だがポーランド継承戦争の後はロシア帝国とオスマン帝国の戦いが始まる。ロシア帝国は日本との交渉の前にすべき事があった。




 日本白地府はウリチ衆やナナイ衆にニヴフ衆の先導を受けた織田孫十郎頼長によって開かれた。当時は明が撤退して凄い経っており日本側は何かよく分かんなかったが居ないならラッキーと居着いた感じである。

 白地、八寒、北奥、奥東。この北方四府は港が凍る。北奥と奥東はまだ陸路で通じているが白地と八寒は凍った海が物流を遮ってしまう。だからメッチャ梃子入れした。

 正直言ってそれは狂気じみてた物。先住民の文化保護と日本人と同等の扱いは他と同じである。でもいっぱい暖房とか贈って懐柔頑張ったのだ。それだけ当時の材木需要が高かったのである。あと鮭とか鱒とかバチクソ美味しかった。マジ美味かった。


 てな訳で最南端にある土地は凍るのを承知で巨大港湾設備として整備され、同時に海が凍るならいっそ海水凍らせて水分減らして塩作ろうぜって浦塩と言う名前を付けたのだ。

 北方でも作れる芋類と麦類が中心のガンガン大規模な農園と農場を整備したのである。そこに先住民の知見を加えた住居をアホ程に建てまくり、希望者を集って住んでもらって農業と漁業と森林資源を得た。そこから軍港化と造船業、製紙業、食品加工を中心にジンワリ発展して。


「でぇ。これが?」

「ええ。大評定での成果だそうです」


 白地府の実質的な業務のツートップ権帥と大弐が浦塩港の軍事区画に並んでいた。見せ札である機帆船が周辺を警戒する中で大型輸送船が 引船(タグボート)によって引き込まれる。そこから滑車台(クレーン)で降ろされたのはクソ長ぇ箱だった。

 それは鉄の箱で有り中身は丸い頭の円筒の筒である。別世界線の軍事技術に詳しい人間が見れば一発でミサイルと分かる代物だ。しかも先端部にはデカいカメラが付いてる。


「これが大鬼様の再来と言われる内藤家の麒麟児が手を貸したと言う代物か。中身は確か大鉄砲で射出する棒火矢を大きくした様な物だったな?」

「は。この炮烙火矢。何でも電子映像箱(テレビ)と操作桿を用いて多少の誘導が出来るとの事で。宇宙が如何様な場所か見る為に作った物だそうですが距離が足らず使えなかったそうで爆薬を乗せた、と。もし冬に敵が攻めて来た際に用いて欲しいそうです」

「ふーむ。大鬼様が有り得ない物として描いた話が実現できてしまうとはなぁ……。飛距離は列車砲と同じくらいだったか」

「は。炮烙火矢自体はもっと飛ぶそうですが操作範囲がその程度だと。録画機から電波を通じて画面が見えるとかなんとか。何か小難しい事がいっぱい書いてました」

「……やっぱり何言っとるのか解らんよな。三回くらい頑張って説明読んだけど儂もよう解らんかったわ。何で電線も繋がっとらんのに動くのコレ。

 怖いわ普通に。コッチに飛んでこんじゃろうな」

「探知機や無線機の延長線の技術なんでしょうが付いて行けませんよ。あ、訓練様の物は此方に」

「家族電算機の操縦桿か」

「ご存じなので?」

「うむ。麒麟児がな。戦艦備前と同じ大きさの電算機に電子映像箱(テレビ)を繋げて作り上げていた。あの時は確か屋敷の一棟丸々を使ってたかの。

 儂も楽しかったは楽しかったがな。特に孫が凄い欲しがって宥めるのに苦労した。鞠男じゃったかな。

 まぁ麒麟児は宙船はともかく戦事に用いるのは嫌そうだったが」

「それは……何とも」

「何でも家庭に一台。夢と楽しみを与える遊戯こそ作りたいとな。武は必要なら振るうが無為に振るう気は無いと言うておったよ。大鬼様によく似ておるわ」


 また軍事的にも非常に梃子ブチ込み倒していた。なぜなら白地府と八寒府は陸路で関係のよろしく無い国と隣接しているからだ。それも清とロシアと言う帝国二つ。いったい何処の誰が侮れるのか。山間や要所に混凝土(コンクリート)でガチガチの要塞線を築き船舶と鉄道連絡線で繋いで備えていた。


 費用対効果以前に戦列歩兵さえ編成してない相手に廃品にすんの勿体無いからってミサイル準備とか正気かよ。と、誰かツッコむべき有様である。

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出来ちゃった、誘導可能なミサイル…
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