八方美人せざるおえない分岐点
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暇つぶしにでも見てってくれたら幸いです。
ムガル帝国ではベンガルの大反乱が起こっていた。戦争やり過ぎて重税に農民がガチギレしたのである。
「ウッソじゃろオイ」
御隠居の河村瑞賢義通が言った。年下の友達で同郷の松尾芭蕉宗房が顔を上げる。
「如何したんだい瑞賢さん」
「いや芭蕉殿。反乱が起きた」
松尾芭蕉は丸い硝子窓の外を眺める。和風とインド風が混ざった街。誰もが真新しい火縄銃を持っているが平穏な光景だ。
フーグリー川の天竺津館の周辺一帯は日本の工房と水田の広がる港町となっていた。最初は三つの村の徴税権から始まってもう規模が都市。
歩く人々は日本人も多いがムガル帝国人も多い。上は兎も角も下は割と融和的な関わりを持てている感じである。お米めっちゃ取れるし美味しいし。
故に。
「ムガル帝国と民が相反し、如何すればいいか分からん……」
超困った。宗教的アレコレに端を発したマラーター王国立国とムガル帝国の戦い。当然だが重税がかったのだ。そこまではまぁ良い。良くねぇけど他国の決定だ。
はっきりグチグチ言う気はない。コソコソ愚痴愚痴は言うけど。
問題はムガル帝国の回漕株仲間が地元住民と密接になりすぎたのだ。てか密接にならざる終えなかった。
船舶の荷下ろしだのに加えて木工と銃の組み立てが必要だったから村の管理権を貰ったのだ。当然だが管理範囲は徴税と村民の守護がセットだった。すると織田幕府の出向が始まり日本人の数も増える。手工業だが集約工業が始まり港の隣接した工業地帯となった。
ムガル帝国の銃の必要性は日増しに高まり人と土地が必要になる。
ムガル帝国としては一方的にバカスカ金を払うよりは土地を貸し与えて管理丸投げにしつつ税金もらえたほうが楽。土地は如何にかなったが日本は地元で人を集めるのに当然だが地元住民経由となる。であれば地元住民との関係も深くなっちゃうのだ。
それは良い事である。結構だ。でも国と民が争っちゃうと。
「皇帝も、太守も、反乱軍も鉄砲を売ってくれと頼んで来ている……」
「……それは」
政治は門外漢な松尾芭蕉をしてギャラクティックハードモード過ぎてビビった。
土地管理権を付与する皇帝、木材や食料などの調達先である太守、自分達の手差しである民衆。全員がお互いをブチ殺す為の武器を欲しているのだ。
控えめに言ってマジでどないせいっちゅう感じである。
「交渉に来ている分、未だマシだ。口でダメなら力を頼る。それに切羽詰まれば……」
河村瑞賢は溜息。
「芭蕉殿、次の船で帰られよ。句集、楽しみにしている」
これらの何処も切羽詰まれば強奪に動くのは一目瞭然。友人故に友人に対するとは思えない程に有無を言わせぬ物言いだった。松尾芭蕉はその辺聡い。
「瑞賢さん。世話になったね。直ぐに出るよ」
そう言って直ぐに立ち上がる。部屋を出る前に。
「死なないでおくれよ」
それだけ言った。
この後、皇帝と太守を幕府が対応し、民衆には河村瑞賢が対応した。絶望的な綱渡りの開始である。
ただ皇帝アウラングゼーブの対応は早く、孫のアズィーム・ウッシャーンと財務能力に優れたムリシド・クリー・ハーンを派遣。孫を太守としムリシド・クリー・ハーンを補佐に付けた。長い歳月は掛かったが軟着陸を願う日本とムリシド・クリー・ハーンの協力でベンガル反乱は収束を迎える。
これによってムリシド・クリー・ハーンと日本の強力なパイプが出来る事となった。ただ少々だが皇帝の孫の顔を潰すことにはなってしまう。孫はそのまま太守という立場故に皇帝に仲裁を頼む事になった。
海にファンシーが進んでいた。それは船である。乗ってるのはファンシーからかけ離れた海賊だし、船自体も46門フリゲート艦と言うバリバリの元戦艦。余りにもファンシーからかけ離れた船だった。
カリブ海の状況からインド洋や紅海を新たな狩場とした海賊達の一団。公開に向かうこの船の船長はヘンリー・エイブリーと言う。
「トマスのヤツはクタばっちまったがヤリやがった!!」
嫉妬と感嘆と。エイブリーと連合を組んだトマス・テューの乗ったアミティが一隻を捕らえたのだ。船長本人は戦闘の最中に腹に砲撃を受けて臓物をブチ撒き死んだが海賊らしく勇敢にだった。
エイブリーは甲板上でカトラスとピストルを握る。部下とトマス・デューの部下達へ。
「やぁ郎共ォッ!! 死人にゃ負けてられねぇぞ!! あの一番デケェのを狙うぜ!!」
蛮性の濃い文字通り蛮声が甲板に轟く。掌帆長がガナリ声を上げて帆を大きく広げ、掌砲長ガンナーの号令で大砲が準備される。エイブリーもカトラスで天を突き。
「取ィ舵ああああじ!!!」
「アイアイ!!」
ガコンと操縦桿が傾いてゆっくりと、船の全てが傾く様にして船が曲がっていく。巨大船舶のケツに追い付き帆船正面のチェイサー砲が白煙を吹いた。足元船首の便所の僅か奥から数発。
「敵船が腰抜かしたぞ!!!」
ただの景気付け。実際の所は獲物は必死に逃げている。だが船速はファンシー号の方が上だった。
「ぶつかるなぁ。操舵手!! 少し面舵!!」
「アイアイ、キャプテン!!」
エイブリーから見てもスレスレ。そして、ちょうど良かった。
「撃てぇ!!!」
「撃てェ!!!」
エイブリーの号令を掌砲長が復唱して船の傾きにより僅かばかり上を向いた大砲から弾丸が放り出されていった。
その内の一発がマストを叩き折る。砲弾を鉄鎖で繋い代物だ。
「コイツはァッ御機嫌だ!!!」
重鈍な巨船の速度が落ち並走を始める。帆を上げて船速を落とす必要さえあった。船の大きさから敵船をよじ登る必要があるが。
「乗り込……伏せろ!!」
爆音。数百の銃口、数十の砲口が白煙と轟音を放ち放って放つ。
「クソがァッ!!」
銃弾が体内に入り込んで広がり死を待つ者、砲弾で体の一部を削り潰されて吹き飛ぶ者、砕け散る船体の鋭い木の破片に裂かれる者。
エイブリーの額に青筋が浮かぶ。
「チクショオ俺達のファンシーちゃんが!! 巫山戯やがって!!! やぁろォッブッコロッシャあ!!」
とはいえ銃弾がエイブリーの帽子の端に穴を開ける。全然無理。立てん。
休みの無い交互の銃撃、それよりは間が空くが砲撃。
ヴォゴと、籠った様な音がして戦場の空気が変わる。
先ず銃砲撃の音が消えた。ついで火薬の煙が薄れる。迎撃が酷く低調に。
「やったなぁ」
獲物への嘲笑か幸運への感謝か愉悦に染まった笑みをエイブリーは浮かべる。少なくともロビンフットのする顔には見えない。
「敵は大砲を暴発させる間抜けだ!! 野郎共、よじ登れ!!」
エイブリーは真っ先に敵船に乗り込み。背中から轟音と暴風を受けた。
「は?」
エイブリーは振り返る。ファンシーがファイヤーしてた。次の瞬間ゴっという音共に叩きつけられる。
気絶する間際に考えたのは「なんで此処に?」だった。
ファンシー号を木っ端微塵にしたのは南方廻船護衛船団と蓬莱東岸警備船団で用いられる日本織田幕府の機帆船。
日本軍船としては既に数少ない帆走を基本とし、石炭を燃料に円筒 蒸気機関の生き残りである。隠蔽の意味も無いでは無いが日本内なら石油を補給出来るが外国の土地に石油があるかは調べられない為、また基本的に護衛する船が帆船である為に飯盒船という体裁で用いられていた。と言うか軍はともかく民間商船では運搬物によっては帆船が主力のままで軍人も救護の際などに帆船の操船が出来ねばならないのだ。
船体は鉄製でバウスプリットも無く、パッと見は畝傍と言う機帆船が近しい。ただし詳しい人に言わせれば断面洋梨的な感じのタンブル・ホーム構造では無いなど大分違うが。特に武装面の配置は古い船である為に軍船としては極めて古式ゆかしい。
元は飯盒船として用いられていた物で武装は船首砲2門と船尾2門に左右8門と帆船である為に戦列艦の配置そのままだ。
織田幕府は大和的な戦艦を建造してる。が、実態に即してるのはコッチだった。特に費用対効果的な意味で。
全長200目取級の金剛型戦艦に似たやつでさえ完全な実験艦であり無用の長物以外の何者でもない。
それら戦艦の技術を用いて作られた巨大船舶の方が意味がある。船積み木箱から、鉄製になった事で船積箱と呼ばれる様になった箱を運ぶ要はコンテナ船であるとか積箱船や湯壺船。それらを作れるという実証と設備、通信設備や機器などが有用なのだ。
蛮用前提の軍船が作れりゃ商船なんてチョチョイのちょいやで。……金額はともかく。
「遅いと思って迎えに来たら襲われとるって何でよ」
艦橋で内藤家の分家の一つである鉄礬ヶ原家の嫡男、鉄礬ヶ原鉄座獲物鉄圀が溜息混じりに言った。
「滝川提督、やっぱり襲われてました。間に合いましたけど戦端は開いてます」
《お! そいつぁ良かった。間に合えば十分だろ。しっかし海賊が増えたなぁ……》
「ですね。ムガル帝国船団に加勢します」
《おう。怪我すんなよ。俺たちも急ぐぜ。宜しく候!!》
雑音が酷いものの離れた船の船長と話せる通信機。既に漫画に世界いる様な感覚になりながら腰の刀を撫でる。
火災処置と大砲の暴発で出た怪我人の移送を行なっている為に少数の海賊を抑えるのに必死な船の横に入り込む。
ちょうど吹き飛ばした海賊船の逆側である。握るのは長めの鉄の棒。
「いくぞ」
そう言って鉄礬ヶ原鉄座獲物鉄圀は飛び降りた。腕を組んだまま甲板へ垂直に突き刺さるが如く。既に銃撃戦から剣を使った戦いに変わっている。
内藤家の血故の巨体が鉄棒を叩き落とせば海賊でスイカ割り大会開催って感じだ。ワニ◯ニパニックって言うかパカパカパニック。まぁパニックしてるのはアリゲーターじゃ無くてパイレーツだけど。
そんな光景を青山家の分家で鉄礬ヶ原家に付いて行った青海三左衛門鉄吉が青筋浮かべて見ていた。
「何で船長がいの一番に戦いに行ってんの?」
「まぁ……内藤家の分家ですし」
綱を下ろす手を止めて言う水夫にジトっとした目を向け。
「……無駄口叩かず手を動かしなよ。それ終わったら医療品の準備ね」
「は、はは!」
「ハァ……」
この際に救った船の名前はガンジー・イ・サワイー号。皇帝アウラングゼーブの船でありエグつねぇ量の金銀財宝を運んでいた。
奪われれば量に応じたエゲつねぇ事になっていた為に皇帝は事の他この事を喜んだ。
日本はムガル帝国で独特の地位を確立するに至る。幸か不幸かは未だ測りかねる。
蓬莱山脈の麓にある平原地帯を中心とした東山は現在バチクソ忙しかった。フランスがルイジアナの割譲、厳密にいえば港湾化した河口部と、その近在の砂糖綿花煙草の畠以外の全域の買取をしたからだ。
フランスとしては先ずルイジアナはインディアン多過ぎて中部から北部へ進めなかったのである。何せフランスと同盟関係にあるインディアンも日本と強い関わりを持っていたのだ。あと湖周りにいるホデノショニ連邦とか面倒臭すぎる。
また海賊が多過ぎて商業活動に於いて完全に日本依存が酷かった。そんなこんなで「もうコレだったら日本に土地譲って対価得た方が良くね?」ってなったのである。スペイン継承の可能性が見えた事もあり急ぎ締結されたのだ。
「で、コレですか義父上」
「ああ。素晴らしい船だろう」
養父シノー・アルノー・ド・ポンポンヌが羊のケツから顔出したみてぇなカツラが海風に揺れ、ポンポンヌしながら……いやポンポン整えながら言った。
外務大臣トルシー候ジャン=バティスト・コルベール。羊のケツから顔出したみてぇなカツラは被っているが、誠実を絵に描いたような才気あふれる30半ば程の貴族だ。ややこしい事に財務長官でセニュレー候のジャン=バティスト・コルベールの甥である。
彼らが見上げるのは飯盒船だった。尚、中身はマジで燃焼効率の良いデケェ釜と減圧蒸留機及び風呂が設置されている。手押しポンプと陶器製便器の水洗便所はサービスだ。
ほぼ減圧蒸留機が場所を占めるが人間は水を取れなくなると1週間持たない。幾らでもある海水では寧ろ塩分と下痢で脱水症状が悪化するのだ。フランスは水夫の生存率や兵站の優位性を鑑みた。
だが技術取得を兼ねて設計図を取得しようとしたが主に鋼の用意が不可能で制作不可能と判断。その為に日本側は別の物を勧めたがフランスの強い要望で三隻送られた内の一隻である。
「一隻は叔父上の設立した科学アケデミの者達を呼んで調べさせています。何か一部でも分かれば良いのですが」
「うむ。飲める水が有ればそれだけで拠点が建てられる。また、これだけの熱を生み出せる釜があればアシエ・ダマスもアシエ・タマハガネもいつかは作れるかもしれないな」
インドのダマスカス鋼と日本の玉鋼は西欧諸国における悩ましい問題の一つだ。尚、玉鋼に関しては日本から輸入する鋼鉄の総称である。西洋的には鉄鋼を一方的に輸入している形だった。
戦争で金が無いがフランスは科学アカデミーへ出来る限りの金を注ぐ事になる。
パドル法なんて無いから大抵の物は現在は不可能として知見は得れても即座には役に立たなかったがヴェルサイユ宮殿のトイレ問題はマジでマシになった。




