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もういっちょ前に

「えぇ……またぁ?」


 隈凄い顔で言ったのはリゴール長官オークヤー・リゴール。山田仁左衛門尉長政の孫である。日本名は山田仁左衛門休長。

 アユタヤと織田幕府の両属と言う形でアユタヤではリゴール統治者であり、自治領的な特色を持つ地となったリゴールの傭兵隊長だ。織田幕府的に言えばリゴウル回漕株仲間の頭取とリゴウル代官の兼務と言う形を取っていた。

 そして日本人街を内包し織田幕府との貿易港兼軍船寄港地となったリゴールはアルティメット進化を遂げた。先ず日本の軍事力からアユタヤ王朝麾下ではあれどプラサートトーン王と関係が良くなかった為に警戒されて継承戦争から距離を取る事が出来たのだ。アユタヤ王朝的に余所者に口を出されたくないし日本側も前回ので勝手にどうぞってノリ。


 これがメチャクチャ運が良かった。また最終的に王位を勝ち取ったナラーイー王が貿易に積極的だったのが望外の事となる。アユタヤ王朝の織田幕府の南方廻船護衛船団の参加と関係深化だ。

 元からリゴールは東南アジア航路のバランサーとなった織田幕府の南方廻船護衛船団の寄港地の一つとなっていた。南方廻船護衛船団の掟として日本が関係を持った国の港では接岸は各国間の関係に寄与するが安全な補給が可能だった。

 それがアユタヤ王朝が船団参加と交易の大規模化を望んだ事で、船団に参加する船はリゴールに寄港し補給を受ける事が出来るようになったのだ。また宗教は制限したが交易は自由とした為に他国にとってはリゴールは交易港として利用でき発展。

 今のリゴールはアユタヤ王朝一の日本人街であり、大規模な交易拠点となって何か稼げるからか割と上手く統治できちゃった。主に日本人が軍事力を担い、アユタヤ人が市民と言う形だ。


「で、ネーデルランドと華僑の次は何処と何処の喧嘩だ? リゴールが大規模化したのは良いが仲裁役なんて無理だぞ全く。何処もかしこも……」


 南方廻船護衛船団と言う中立。

 実態は金さえ払えば日本の交易船を護衛する船団に相乗りする形で補給と護衛を行うだけだが、他国からすれば十二分に中立に見えるポジションとアンボイナ事件の収束の所為で何かと第三国として引っ張り出されていた。

 今回もそう言う話だった。


「アユタヤで革命が起きたと」


 問われた男は溜息交じりに言う。


「……え? フランスでは無いのか。ナーラーイー陛下は、病床とは聞いているが。何事だ」

「ペトラーチャーが王女陛下を王妃としました」

「その言い方と言うことは政敵を排除したか」

「は」

「……今回も静観で。どうせ後片付けを頼まれるからな。幕府に通達を急げ」

「承知いたしました」


 オークヤー・リゴールと従者は互いに視線が合い。


「「ハァ……」」


 すげぇ疲れた溜息を漏らした。


 この後にアユタヤは鎖国に向かうが起こった戦いの捕虜交換とかで織田幕府まで出張る事になる。特に軍事行動を行なったフランスとアユタヤのギスギスっぷりはヤバかった。取り敢えず死人を出さない事を主軸になんとか完遂。

 そのおかげか日本は仏教国と認識されていた為にアユタヤとの交易は続いたがオランダ以外は締め出された。




 江戸城前駅。貨物列車が止まって江戸湾駅の対になる旅客用の駅だ。

 寺社仏閣を引き延ばした瓦屋根の様に見える鋼の枠にガラス張りの天井が連なる。一つの屋根の下には一つのプラットフォーム即ち乗降場があって数は15。30の線路が並び連なって、その上に巨大な蒸気機関車たちが並んでいた。

 世界線が違えばマレー式とかガーラット式って呼ばれる類の蒸気機関車まで居る。東山道行きの蒸気機関車は流線型に魔改造されたC51型61号蒸気機関車の様な見た目だ。大きさこそ違うがヤバい顔面は凡そそのままの絵面。

 鉄仮面とか言うレベルじゃ無い。流線型と言っても空気抵抗関係なしに、除雪の為に付けた物で、今にも突撃しそうな見た目してる。船の船底バルパスバウを取って付けたみてぇだ。


「これだったかなぁ曾良君」

「はい先生。此方の列車になります」

「便利になったねぇ」

「……先生が御生まれになる前からあったのでは? 蒸気機関百周年祭が開かれるでしょう」

「いやあったはあったんだけど。中々に乗れなかったのさ。十くらいの頃だったか二代目様が線路を敷いてくれてねぇ」

「……線路を、敷く?」

「ああ。査察に参られたと聞いて見物に言ったののさ。エッホエッホ言いながらねぇ。ポイポイと。腰を抜かしたよ。ははは」


 河合惣五郎曾良は思った。『先生、ボケるの早くね?』と。松尾芭蕉まだ50歳そこらである。


「まぁ昔話は列車に乗ってからで良いか。さてさて鉄路の先のおくの細道を巡ろうか」


 松尾芭蕉を乗せて蒸気機関車は汽笛を鳴らして走り出した。風情もクソも無いが全部チート野郎が悪い。おくの細道の意味メチャクチャ変わるくないコレっていう旅へ。


 ただ松尾芭蕉は歩き過ぎが程よく歩くくらいになったのか70中盤くらいまで生きる事になる。愛車の骨董品の履帯乗用車を山野田園で乗り回して凄い量の俳句を残した。




 北では粗方の不穏分子を処理したと判断した康熙帝の働きかけで北でネルチンスク条約の代わりに白地関門条約が結ばれる。

 内容は凡そ白地(アムール)川と白虎(ウスリー)川の一帯が日本側になり、河川から4阡目取()を軍事的な空白地帯とする事で合意。まぁ騎馬民族の領域なので有って無い様な物だが他にも色々と取り決めて凡そ関わりを断つ物となる。日本側が漸く「ヤダ。私達の戦力、強過ぎ?」ってなる端緒となったのだ。


「……どうしよう」


 織田信慶が大評定の間で言う。織田幕府は明確な指標があった。

 それは冗談の様な話であるが百年後戦記とか言う実際は三百年くらい後の第二次世界大戦をイメージした戦記物だ。娯楽的に書かれており大雑把であるが兵器や軍のあり方と、それを成り立たせる似必要な技術、国家がフワっと描かれた漫画である。

 こう、フワッと外枠的に、そして一部が突出した形でだが、それは叶ってしまっていた。だから。


「何処を目指すべきだ?」


 大評定で将軍の近くに居た誰もが顔を見合わせる。

 織田幕府の評定と言っても既に絵面は議会と評すべき感じである。府それぞれに評定があって三年毎か何処かで有事が起きた場合に府の代表達が集まり大評定を開く。今は定期大評定の休息時間だった。

 豊州国司家の岩室慶休が将軍の方へ身体ごと向けて。


「軍の事でございますか」

「それも正しい。だがもっと大きい話になる。日ノ本の事だ」


 誰もが頷いたりして共感を示す。誰もが同じ様に考えていた。此処にいるのは百名を超える。

 皆が裃姿だが肌は濃淡の幅は広く、各府の将軍に相当する権帥、大老に相当する大弐、大臣的な立場に各奉行だ。

 誰もが現状には満足していたが織田幕府は指標を無くしたと考えていたのである。


 将軍は聞こえる様に言う。


「波進斎様の百年後戦記を指標に我等は我等は国を作ってきた。山東と奥東も範囲と寒さ故に行き届かせるにはもう幾許の時が必要だが分かってもらえよう。昨今は水と空気から硝石を作れるようにもなったからな。

 だが此処で立ち止まって良いのだろうか。日本の上下水道、陸海空路、それの更新も高が知れる」


 先ず出発点。


 海では戦艦はほぼ大和的なのがあるし、空母なんて代物も既に建造の最中である。空には羽を回すレシプロ型の戦闘機と爆撃機や輸送機が飛ばそうと思えば飛ぶ。陸では騎馬も残るが戦車と自走砲が主力でバイクやトラックや装甲車が配備中だ。

 兵数や将官の数にしても、武家と言う身分は未だ残るが軍役と言う形で民衆も軍人として戦い、民衆が武士になる道も普通にあった。


 まぁソレ何処に使うん? て言われたら困るけど、これらを運用できる国家を目指して織田幕府は国家を発展させて来たのだ。

 いや、まぁ最早、軍隊と書いてレスキュー隊とか、土木作業員とか、農業生産者とかって方が正しい有様だけど。まぁそれは傍の置いとく。


 陸海空の主眼は強力なアウトレンジと火力集中。防御力が攻撃力に追い付かなくなる前提の浸透戦術。成り立たせるには膨大などと言う言葉が陳腐になる程に全てが必要だ。

 分かり易い物で言えば陸海空の路、前線に送り出すだけの物資の準備。それも前線と言う国家の最果てが前後した時の路に対する迅速な対応を大前提とした補給路と物資だ。

 物資は例えば粗雑で極端な物言いをすればだが、戦車だって補給、即ちガソリンスタンドは必要で、車と戦艦で用いる油の量は何倍だろうか。またただの車とは違って、乗員の装備や砲の弾薬と積み込む物は甚だ多いのだ。まして海路の戦艦ともなれば艦内で生活をする物資までも必要となる。


 そんな補給路の維持と物資を生産する為の国力。兵器があっても人が無ければ兵は産まれず、人があっても兵器無くしては兵になれない。


 バカみてぇな話だが要は「コレめっちゃカッコいいじゃん!!」から始まって「コレを維持運用するには国をこうしなきゃ」で幕府は国家を発展させ運営していた。


「現状の先は想定し得る。出来てしまうのだ。だが我等は侍だ」


 軍事に偏ってるかと言うと頷けなくも無いが経済ブン回しつつ民間で試すには高度な技術を軍事費という言い訳で試作してる。後は僅かばかりの男の子の夢。それが国家を発展させて来た。

 何より此処位にいるのは全員侍だ。総髪だが髷は結ってる。武家の誇りとしてとして大小の太刀は差してる。洋服の技術を入れた物や洋装仕立ての物はあるが主体は和服だ。

 そう。武家として鍛錬は怠れず、刀を錆びさせるのは恥。軍とは、兵器とは今の武家にとり鍛錬であり刀である。

 例えば十二分に使えたが回転弾倉、これも戦いの経験から威力や射程に効果があり、数に優れた箱型弾倉に変えた。

 ……まぁ使い道ないけど。武家が怠っちゃダメだよねっていうノリ。


「何か案は無いか?」


 織田信慶の何て事は無いが割と切実な問いに様々な答えが返ってくるが往々にして革新的な物は無い。

 彼等は侍だが政治家であり、政治家が語るべきは現実だ。

 言わば将軍が欲するのは国家が傾注する夢。


 将軍も含めて苦手な分野だ。


「全くもって戦に出たからこそ困ったな。自国の戦力を仮想敵として考えても今以上の物は思い付かんぞ。余りにも波進斎様の考えが合理的過ぎる」


 困った様に「未来予知ですな」と、誰かが言い皆が頷く。その言葉に将軍がハッとした。


「未来なら目指す場所があるでは無いか」


 そう言って指を上へ向ける。


「空、ですか?」

「いや、その上よ」

「……成る程。宇宙。空想万象物や夢想未来物ですか」


 前に合金使って人型巨大ロボを作ろうとした男がポンと手を叩いた。そして居住まいを正して。


「よろしいでしょうか」


 男が声を上げて注目を集めた。幕府万象論大目付を担い内藤家の一族で万象司家を継いだ正五位大学助忠智である。

 佐久間清硝法と言うフリッツ・ハーバーとカール・ボッシュにダブルラリアット喰らうだろう法を後押しした地味に重要で何処か抜けた男だ。佐久間清硝法はダムとかの比じゃ無いくらい硝石作れるよやったね的な法。


「万象館にて炮烙火矢(ミサイル)の探求をしている者に掛け合ってみます。宇宙が波陸斎様の空想通りなならば人型の巨人の意味も多いにでしょうし……」


 内藤家の当主に「オイ」って顔向けられながら頭を下げた。尚、内藤家の三男が娯楽目的であるが、珪素を用いた半導体とか言う代物を作り上げ、彼の作った空船は最終的に月へ行くことになる。だが、それはもう少し後の事だ。


 ……18世紀も来てないのに何処まで行くんでしょうねこの世界線のこの国。

今回の投稿は此処までです。此処まで読んで頂き有り難う御座いました。暇つぶしにでもなれてれば幸いです。

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― 新着の感想 ―
やること無くて日本、宇宙へ行くの巻 百年後(三百年)戦記を参考にしたせいで僕らの生まれてくる超ずっとずっと前にはもうアポロ11号が月に行ってしまうー
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