パイレーツとかカリビアン
肖像画キメ顔タイツ髪型面白オジさん。まだオジさんじゃ無いけど、な王様が財務総監ジャン=バティスト・コルベールを面白そうに見ていた。
「では何かな? ヌーベル・フランスには既にル・ジャポンが来ていると言うのかい」
「仰るとおりで御座います陛下。ジャン・タロンの報告を申し上げれば万を超える日本人、それに従う数万のインディアンが居る、と。ジャン・タロンはル・ジャポンと協力すればイングランドも矛を収めると見立てております」
「不機嫌そうだね。ジャン」
ジャン=バティスト・コルベールの眉毛が僅かにピクリ。
「彼等は我等から金銀を奪いますので。更に危うくイスパニアの継承権を失う所でした。アレは有能な生臭が残した資産です」
「ふふふ、金を返さない者に誰が金を貸すというのか。イスパニアの破産宣言に対して君はそう言っていたと思うが? まぁあの交渉に関してはイスパニアが思い切ったと言うべきだろう」
悪戯っぽく笑う王様に口を噤む。それが面白くて王様はまた笑う。
ジャン=バティスト・コルベールは重商主義者だ。国を強くする為に貴金属である金銀を集めるべきだと考えている。そして金銀を集めるには他国の商品を買わずに自国の商品を売れば良い。そうするには売れる製品を作る即ち産業の発達を必要とした。
産業の発達の為に日本へ技術者の派遣を要請したのだ。白磁器の柿右衛門とか要請したがメッチャ断られた。交渉の末に別の陶工をルイジアナに招集して残留を打診したのだが。
「水洗厠無いのはちょっと……」
「お風呂ないと死ぬ……」
「新刊出るから……」
「へへへ……」
「米ェ……」
って足早に帰っちゃったのである。欲しい技術は教えて貰えたが剝れた。
「コルベール。気持ちを切り替えたまえ。咲としては莫大な砂糖を買ってくれる彼等は良い取引相手だと思うよ」
「否定しません。砂糖をカキューモン磁器に、絹に、銃に替えてくれる。燧発式でさえもです」
ジャン=バティスト・コルベールは数年前から後押しを始めた三角貿易。フランドルやイングランドの後追いではあるが交易の成功を願っていた。
「それよりも、だ」
王様、ルイ14世の顔が硬直する。それは怒りを出さない為。己を国家と称した男がフランスの王として感情を抑え。
「従兄弟殿と話をまとめねばな」
太陽王の覇道が始まる。
ポート・ロイヤル。綺麗な海と暑苦しい空気の酒場。その片隅。
ガタイの良い男が廃糖蜜から作られた酒、ラム酒に口をつけて樽の上に腰掛けた。格好はイングランド海軍らしき物。しかし余りに着崩していて粗野。
だが顔は割とスッキリしていた。年相応の無謀さと見せるが、しかし携えた知識と歳の割に重ねた経験が僅かに滲む。この若い男は合法である私掠、違法な海賊、その二つを行き来する男ヘンリー・モーガンだ。
「ったく。コレだからバカは困る。おおかた奴隷船に放り込まれた間抜けだろう。挙句この物言いなら、用無しと捨てられた事にも気づいてねぇ。
哀れでハタ迷惑な話だぜオイ。如何思うよアレクサンドル」
「同感だ。酒場で酔いつぶされたか、借金監獄にでも入っていたか、何処の田舎者だ? 水夫として働いてりゃあ話の一つも聞いてるだろうに。
日本船団に手を出すな。そんな常識もしらねぇなら選挙でもしてやるか」
アレクサンドル。そう呼ばれた理髪師の経験から船医の真似事も偶に任されるモーガンの幹部の一人。後にある本を出して訴訟で争う事になるアレクサンドル・エスケメランが唾棄する様に答える。
その思いのまま思いっきり唾を吐いてから。
「それか縛り上げてトルトゥーガに放り込んでやれ。私は日本船団を襲おうと思ってますってな」
誰かが言った。ヘンリー・モーガンは笑う。青筋を浮かべてだ。
「そいつぁ良い。この間抜けもテメェの言ってる事の意味を知るだろうよ。教育熱心な誰かが魔のアズマツの港に連れてってくれる。
その前に軍船か商船に乗って嵐にあったラッキー・チェストの連中が首を切るだろうがな」
「煩ぇ何奴も此奴も!! 碌に戦利品なんてモンが無かったからこうなってんだろうが!! 如何生活しろってんだ!!」
ヘンリー・モーガンの一党がプリエト・プリンシペと言う地を制圧したが、余りにも戦利品が少なかった為の会議。そこで「アヅマツの港は金銀が海の様にあるって言うぜ」と言ったが為に船員全員からボロクソに言われていた男が遂に言い返した。
その絶叫をヘンリー・モーガンは鼻を鳴らして見下しながら潮時だと判断を下す。ジャマイカ副総督の娘と結婚しており砂糖農園の主でもある。ヘンリー・モーガンと言う男は上流階級との関わりもあるのだ。
その為か人の機微と言うものを察することが出来た。日本の船を襲う事の意味は知れ渡ったと十二分に察したのである。
「良いか? 選別に教えてやる」
この時代の最もホワイト企業な組織は海賊である。そして最もブラック企業なのは奴隷船水夫だろう。
砂糖プランテーションの需要とインディアンの減少および保護。この世界線だと日本の手前、余計に労働力が必要だった。人類が最も奴隷と言う物を、敢えて物と言う漢字を使うが、嫌悪するのはこの時代が有名過ぎるからだ。この砂糖を作るのに大量に必要になった労働力の運搬である。
奴隷船とは一般的に敗者の運搬だ。アフリカの敗者と弱者が売られる。
唐突に聞くがスポーツでもゲームでも良いが敗北した際、対戦相手の罵声と観客の罵声、どちらが不快だろうか。
同列に並べるには嫌悪感が段違いに過ぎるが奴隷船の人間と奴隷の関係はそう言った物である。ただでさえ理不尽な扱いに耐えられる者など無い、であれば人が物の様に扱われては反乱反抗など起きて当然なのだ。そうすると商品を傷なく届ける為に反乱反抗を抑える人員が必要になる訳だ。
水夫と言うのは往々に借金か犯罪か騙された若者がなる物。監獄に入る知能があれば奴隷船水夫になどならない。それが奴隷船では普通の交易以上に必要なのだ。
だが、奴隷を売った船には、水夫は邪魔な荷物となる。だから航海の終わり際に特に役立たずの水夫が船に乗りたくなくなる様にするのが奴隷船主人の主流。海賊が増えて当然の悍ましい地獄ったら正にそうだった。
そんな中で水夫達は願うのだ。故郷に置いてきた人の優しさを恵んでくれる日本船団に助けられる事を。
だから海賊には日本人を襲う事を嫌がる者が多いのだ。商船どころか軍船が海賊に襲われると、海賊の状況によってはだが、水夫達に海賊になる誘いをかける。そう言った時に水夫の扱いが酷い船長の船は水夫の全てが海賊となる事もあるのだ。そして往々にして船長だった男は水夫達によって縊り殺される。
だが、時折だが海賊へ転身する者の中に誘いに対して「日本を襲わないのなら」と言う条件を出す水夫がソコソコ居た。彼等は揃って嵐の後に救われ、日本船団から食事を分けてもらった経験があったのだ。
そうして日本船団に会ってチェストの絶叫を聞かなかった彼等を、海賊達はラッキー・チェストと呼んだ。
「良いか? 間抜け。俺ぁ仲間にバカが居てもかまやしねぇ。だが間抜けはいらねぇよ。
俺達が持ってる私掠免許は水上のイスパニア船に対してのモンだ。拠点を襲うのもあくまでイスパニアの拠点で危険性があるって名分がいるんだよ。よりによって何処もかしこも争いを避けてる所に手ぇ突っ込む間抜けが居るかよ? あ?」
反論の無い様子に鼻を鳴らしたヘンリー・モーガンは仲間達を見て。
「如何だ?! 皆んなは!!」
「意義なし」
「俺は軍の船に乗ってたが日本に助けられた事があるんだぜ。あんな美味い飯を恵んでくれた連中に手なんざ出せるかよ」
「奴らの恵みは美味いんだってな。そういや300フィートもある化物船って噂ぁ本当なのかね。あ、俺も追放に賛成」
「俺ぁ見たぞ! 馬鹿みたいに早くてデカいんだ。ぶったまげたね。戦うなんてゴメンだ」
「賛成だ。アイスランド出身の奴が言うにゃあアズマツの港にゃハーググーヴァって塔を連ねた怪物が住んでるってよ。ソイツのおかげで日本の船は馬鹿みたいに早いんだと」
「おっかねぇな。さっさとコイツは追放しちまおうぜ。怪物に呪われたらたまらねぇよ」
全員が男の追放に同意した。
「って訳でだ。皆んな俺と同じ意見だってよ。島に置き去りにされたくなきゃとっと失せろこの間抜け」
蓬莱火土国東津藩代官は島津義弘の婿養子である島津久保の子孫が勤めている。島津久保はチート転生者が歴史改変しちゃったおかげで生き残った一人。要は存在しない筈の鬼島津の系譜だった。
火土国はカド衆と言う羽人に案内されて日本人が進出して、カド衆の名前と火の様な夕焼と大地に準え、名付けられた地だ。海には海賊が多く蓬莱川を挟んでルイジアナと接し、一部は東岸にも領地を要する。
今の東津藩代官は島津兵庫頭聡義と言う頑強実直な男で、居城である東津城では評定が開かれていた。浮知多、浦仁、吉愛、有空の城主達が揃う。城主は日本人だったり日本人とハーフだったり羽人だったりだ。
「波止場の問題は掛け合うちょったが如何にかわっぜそうだ」
島津兵庫頭聡義が言った。出席者の内で凡そ半数の頭に?が浮いてる。島津兵庫頭聡義はハッとして。
「波止場の問題は掛け合っているが如何にかなりそうだ」
全員が嬉しそうにした。
「ああ、それは良かった」
「最近増えていたからなぁ」
「不憫には思うが限度がある」
島津兵庫頭聡義も嬉しそうに頷き。
「吉備様がイスパニアとフランスに掛け合ってくれた。向こうも人手が無いらしく乗り気だそうだ」
火土国東津藩の範囲であるミシシッピ川東岸部は分かりやすく言わばバカみてぇな規模のデッケェ出島なのだ。東津藩主の居城である東津城は南方唯一フランスとの領土策定の前に城を建てていた場所の一つ。
一帯は特に数多くで大規模な湖があり蓬莱川を降る最中に見つけた特に巨大な湖の周辺、そこから淡水の湿地を整備して港と水田を作り、海付近では牡蠣が寄れる為に別名は牡蠣ヶ浜城と呼ばれていた。
出島と違うのは陸続きな事であるが、そう言った場所で国外の船員が帰れなくなると扱いに困る。犯罪を犯せば首切ってりゃ済むがそうで無い者の対応に困っていた。例えば病とかの理解できるものもあれば置いて行かれたとか言う「何で?」的なアレもある。
「定期的に回収用の船を回すそうだ。これで何とかなる」
そう言った残された船員達は浮浪者となっていた。入港税的な噸税の増額と入港者の名簿制作での対応しきれなくなりつつあったのである。噸税減額と新大陸の人口に頭を悩ませていた欧州的には良い話だった。
「それじゃあ賊供チェストしてくっわ!!」
「チェスト!!」
「お供すっ!!」
「首取リ戦カ。楽シミだ」
「最近海賊減ったよなぁ」
カリブ海は日本の海がある種の平和的な航路となっていた。平和じゃなくなっても原因はだいたいチェストでカットするから。短めの刀使う船上流示現流。
彼は未だ知らない。浮浪者を率いれた事でインディアンとフランスで争いが起こり統治不安定になった事からルイジアナ売却の話が出て来て仕事が激増する事を。ルイジアナ出島の管理と言うチェスト出来ないタイプの仕事が迫っていた。




