37.お祭り
キノコ、タケノコ騒動が終わって村の人に報告したら、それはもうびっくりするくらいお祭り騒ぎになった。それで瞬く間に村中の人が集まって調理器具やらテーブルを用意して昼間から料理を沢山振る舞ってくれたのだ~。無論料理はキノコやタケノコのオンパレード。あんなに巨大だから村の人だけでも食べきるのはかなり大変そう。
「まさか長年終わらなかったキノコタケノコ戦争に終止符を打つなんてねぇ。天使様には感謝してもしきれないです」
村長のお婆さんがペコリとお辞儀をしてくれた。戦争って大袈裟なって思ったけど、実際にアレを見たからあながち嘘じゃないのかもしれない。
「私は当然の務めを果たしたまでです」
私はどこかのクソ天使とは違うのだー。
「でも戦って思ったけど、あれって頑張れば熟練の冒険者なら勝てそうじゃないです?」
最初はびっくりしたけど実際皆で協力したら普通に何とかなったし。
「人界は国土が広いしそういう実力者がここに訪れるのが少ない。それに多くの冒険者はリスクを冒さない。そもそもこちらから危害を加えなければ無害の敵でもあるから協会の依頼にも上がってなかったはず」
さすがはフェネ。疑問を口にしたらすぐに教えてくれる。
「その通りです。ですから私たちは長年キノコとタケノコと共存して生きておりました」
言葉だけ聞くとあまりにシュール。でもここの村の人にとっては死活問題だったんだと思う。
「とはいえ今回で完全に死滅したとは考えにくいだろう。数年もすればまた繁殖してくる可能性はあるよ」
「はい。ですから今のうちにまた村の者と相談して対策を考えようと思います」
あんなのがまた復活するなんて考えただけでも洒落にならないなぁ。
「天使さま。こちら出来立てのキノコの串焼きですよ~」
「こっちは麦と一緒に炊いたのもあるぞ」
「キノコとタケノコのお吸い物もありますよ」
わわわ。どこからも良い匂いがして美味しそう。全部キノコとタケノコ料理なのに食欲がそそる。早速村娘ちゃんから串焼きをもらう。気遣ってくれるみたいに手渡ししてくれるの嬉しい~。えへへ~。
そして早速一口、モグ。
……あ、これいくらでも食べれるやつだ。
気付いたら串に刺さってたのをペロリと食べちゃった。やはり女の子が作った料理は美味いのだ。
お祭りがずっと続いて、それでも賑やかな時間は終わりそうもない。村の人たちが騒いで、子供たちは走り回ってなんとも幸せな時間。可愛い村娘がいるから、だけど。
それにしても食べても食べても料理がまるで無くならないのが笑うんだけど。さすがにもう食べきれない。でも村娘ちゃんが笑顔で串焼きを渡してくるから断れないのが私である。受け取ってしまう。ずっとこの無限ループに陥っている。おかげで両手に常に串焼き持ち状態。
モノコは村長のお婆さんや村の人と仲良くお喋りしてる。さすがは令嬢、コミュ力ある。ラプちゃんは料理作ってる人の近くでじっと観察してる。作り方を教えてもらってるのかな。
あれ、そういえばフェネは? 見渡しても近くにいないから、百合センサーを立てて飛んで行こう。そしたら離れた林の近くにフェネがいた。周りには人が誰もいなくて、木にもたれかかってる。
「フェネ、ここにいたんですね」
特に反応はなく腕を組んでこっちを見てるだけ。
「せっかく料理を振る舞ってくれてるのに食べないと損ですよ」
「食べすぎるといざという時に動けなくなる」
こんな祝いの場でもそういう考えになるのはどうしてなんだろう? とにかくさっきもらった串焼きを差し出してみる。
「食べないって言ったつもりだけど?」
「たまにはこういう息抜きも大切だと思います。フェネはずっと気を張り詰めてる気がします」
「……ヴィヴィには……分からないよ」
珍しくフェネの口調が弱くなった。確かに私はフェネを何も知らない。ううん、モノコやラプちゃんのことだって知らない。皆、何かを隠してる。それでも無理に聞こうとは思わない。見守り続けるのが私の役目。だからフェネがそういう態度を見せたって気にしない。いつか心を開いてくれるって信じてるから。
「えいっ!」
「んぐ」
フェネの口に無理矢理キノコの串焼きを入れてやりました。熱々なのでさすがのフェネも悶絶の表情を見せてます。ハフハフしてるのが何ともかわいい。すぐに睨まれたけど。
「私は過去よりも未来の方が大事だと思います」
「だろうね。いつもやらかしてるし、気にしてないとは思った」
罪から目を逸らしてるって意味じゃないけど!?
「一人で歩くのが怖いなら私が連れて行ってあげましょう」
「ヴィヴィの進む未来とやらは危なそうだから遠慮しておく」
フェネは本当につれない……。
「だから私の足で付いていくよ。さ、皆のところへ戻ろうか」
フェネが先に歩いて行きました。ロングスカートが珍しくふわふわ揺れていたから、あれは絶対尻尾が動いています。フェネって本当に素直じゃない。だから、私はいつまでも待っていますよ。
村長のお婆さんのところに戻って来たら、テーブルの上に何やら大きな革袋が置かれていました。
「今回は本当にありがとうねぇ。少ないかもしれないけど、礼金として金貨100枚詰めたよ」
まさかのお金!?
「お料理たくさんご馳走になりましたし、こんな大金受け取れないですよ~」
「確かに私たちが勝手にしたことだしね」
フェネも補足してくれて、ラプちゃんも頷いてくれます。モノコだけ視線を泳がせてるのが気になる。
「ここは見ての通り小さな村でね。来る旅人は大抵羽休めだったり、この前来た四界連盟みたいな人だったりでいつも外敵に脅かされていてねぇ」
お婆さんは目を細めて語ります。
「若い子は街に出稼ぎに行くし、年々村の活気は落ちていく一方。それでもこんな小さな村でも生活してる人はいるんです。そんな村を助けてくれたあなた方にささやかなお礼をしたいと、この気持ちを受け取ってくれませんか?」
村の人達が皆、黙って頷いていく。前にフェネが言っていた。人間という種族は非力だから常に外敵に怯えてるって。だから他種族と共存して生き延びている。あんな変な魔物でも子の人達にとっては命の危機だったんだと思う。その袋を受け取った。
「ありがとうございます。また何かお困りがあったらギルド協会へ依頼を出してください。雲を越えて飛んできましょう」
「こちらこそありがとうございました。あなたに神の祝福を」
お婆さんが手を合わせてくれます。私は百合信者なのでできればその祈りはてぇてぇに向けて欲しいですけどね。
「天使さま。次はどちらへ向かわれる予定ですか?」
村娘ちゃんが話かけてくれた~。
「特に決まってないんですよね。あちこち旅しているもので」
「でしたらこちらを」
村娘ちゃんは何やらチケットを渡してくれます。それは中央都市行きの船乗り券に見えました。
「昔、友人からもらったんですけど結局使う予定がなくてもうすぐ期限が切れるんです。もしよろしければ使ってください」
「何から何までありがとうございます~」
やはり人助けするといい事あります。特に乙女には!
「これは次の行先は中央都市で決まりです?」
確か人界の首都だったかな?
「私は構わないよ」
「……どこでも」
フェネとラプちゃんからはおっけーを頂きました。モノコは黙ったままだった。目が曇ってるように見えたけど、すぐにハッとしてた。
「モノコ?」
「いえ、何でもありません。それより金貨の取り分を先に分配しましょう」
さすがはお嬢様の采配である。
「今回は全員が活躍したから、均等に分けたらいい?」
「異論ないですわ」
というわけで金貨25枚ずつ分けました。私の取り分はラプちゃんの借金返済で消えるだろうけど。
村の人にお礼を言って村を出た。次はどんなてぇてぇを拝めるかな?




