荒らされた花畑、その犯人と犯行理由とは!?
荒れ果てた花畑を見た幼児が泣いた。
「だ、だれがこんなひどいことしたのぉ〜」
口々にそう訴える子どもたち。
それに妾は黙って首を横に振った。
「だれでしょうねぇ。森の動物かしら」
素知らぬ顔で困り顔をしている犯人。妾はそれを追い詰めるべく無言を貫いた。子供らの前で見苦しい犯人の泣き言は聞かせられない。
今後の待遇に関わる大事な話だ。
「お嫁様? 後で時間はあるかのぅ」
子供らとどさくさに紛れて帰ろうとした犯人の肩に手をおいた。
え、なに?とキョトンとした顔をしているが、妾の笑顔に思うところがあったのだろうがっくりと肩を落とした。
「わかりましたわ……」
「わかれば、よろしい。妾はおんせんまんじゅーというものが好きじゃ。コシアンじゃぞ」
「承知しました」
大変気まずそうな顔で彼女は帰っていった。
ふむ。
午後にはもう一度来るだろうと予想して花畑にお茶セットを用意しておく。
お嫁様の花冠の特訓は熾烈を極め、我が花畑は壊滅的被害を受けた。そのため、一時的に利用禁止と言い渡していたのだ。
ところが、焦れたお嫁様が侵入、惨劇が起きた。
まあ、恋する乙女だしな……と遠い目をして見逃していたが、子どもたちにも知られてしまえばおしまいだ。引率というより、止め損なったという感じではあった。
「ドラバ様、いる?」
予定より早く予定外の人物が尋ねてきた。
「ごめんねぇ。知らなくって」
領主殿はそう言っているが機嫌が良さそうだった。そりゃあそうだろう。待望の妻である。歴戦の見合い敗退者としては結婚できただけ上々。相手も可愛くてちゃんとこの地に順応しようとしてくれている。機嫌も良くなろうものだ。
そもそも見合いがうまくいかなかったのは、不幸な事情が二つ重なった結果だ。
まず、この地が魑魅魍魎の隠居地と知っているものは断る。我が娘がかわいいというだけでなく、失敗した場合の報復が恐ろしい。
なにも知らない場合、全く旨味もない田舎貴族と付き合う理由もない。捨て駒のような娘でも惜しい。
もし運良くまとまったとして、この田舎っぷりに馴染む貴族の娘など少数。さらに気に入られない場合イビリ倒されるかもしれないので恐ろしいったら。
お嫁様は王太子妃候補であったので、半端ない胆力と度胸がある。さらに実家は生真面目な家柄であるため余計な陰謀はついてこない。老人会もにっこりだ。
もし、戻ってこいと王太子が発言したら、素敵なザマァロードが敷かれる。奴らの恐ろしさは、日頃仲が悪そうなのにいざというときの結託だ。
歴代恐ろしい魑魅魍魎がやってくる。ほんっとに妾、可哀想。
「賠償は後でいいかな。総額が出てから……」
「出禁で良いぞ」
「それは」
「冗談じゃ。だが、しばらくは出入り禁止じゃ。そう簡単に花を戻せはしない」
「ちゃんと伝えておく」
「監視しておくように」
「わかりました」
「それで?」
「はい?」
「手土産」
「あ、」
全く考えていなかった風だ。妾に謝罪せねばという気持ちが先走ったのだろう。お嫁様がとっても説教される前にお手柔らかにねとお願いしに。
甘ったるい。
胸焼けするほど甘い。
妾も番探しの旅にでもいこうかのぅ。同種がいるという話も噂では聞いていたし。
「領主殿は来なかった。
ということにしておく。お嫁様は、隠しておきたいようであったからな。じゃーん! さぷらーいずとかしたいのであろう。
ほんとかわいいのぅ。あんな悪役令嬢面なのに」
「悪役令嬢は余計です」
ブスッとした顔で否定するところも領主殿のかわいいところだ。
「かわいいのは認めるということじゃな」
「うるさいですね。ほんと、年寄りときたらっ」
「ちゃんと守ってあげるのじゃぞ。何もないところに嫁いできたのだからな」
「わかってます!」
領主殿は捨て台詞を残して去っていった。からかいすぎたらしい。
初すぎて可愛らしいものでやりすぎた。
さて、花畑をどうにかせねば……。
もう、いっそ花の種類を変える。いや、編みやすいように品種改良。もっとなにか……。
苦肉の策として、緑のツタで作った輪に花を刺すという対処を編み出すのはもう少し先のことだった。
妾、とってもがんばった。当人は勇者と戦うより頑張ったと証言しており……。




