夢見がちな怪盗-④
この作品とは別に新作でファンタジーものを書き始めました。
同じくプロット無しの作品のため、もし見て頂けるにしても過度な期待はせず、気楽に読んでもらえると助かります。
「よっしゃー!勝ったぞハナコっ、よく頑張った!」
「ぴょんぴょぴょーん!」
ミリアさんからの宣言を受けて、ハナコと勝利のハイタッチを交わす。
正直もっと楽に勝てると思っていたが、アシガエルが強いのはもちろんハウの指示や作戦もかなり良かったので苦戦させられた。
すぐに立て直せたから勝てたけど、あそこで戸惑ってたら負けてたかもしれない。楽しいバトルだった。
「……アシガエル」
「ハウ。これ使ってあげて」
「傷薬?……分かった。ありがとう、ございます」
「どういたしまして」
それはそれとしてボコボコにしちゃったアシガエルの治療をしないとな。あとハナコも良いの一発喰らってるし。
ハウに傷薬を一つ渡してアシガエルに、俺もハナコに傷薬を使う。ちなみに、塗るタイプ貼るタイプなど色々あるが、感覚的に使いやすいスプレータイプにしている。
そうこうしているとミリアさんや他の子供たちが近づいてくる。
「お疲れ様です。良いバトルでしたね」
「ありがとうございます。先手を取られて少し焦りましたが、期待に応えられてよかったです」
「はんっ、あっさり対応してきた癖によく言うぜ」
「ハウも惜しかったなぁ……!」
「凄かった!アシガエルも強かった!格好良かった!」
「私も将来はパトモンマスターになりたい!」
「俺も!」「僕もっ!」
素直な賛辞に率直な気持ちを返すと、ハウが混ぜっ返してくる。こんな態度だけど、今回の件は考えがあってのことみたいだし、実は結構気が効く子なんだよな。
ワイワイとみんなで騒いでいると、すっかり傷も癒えたアシガエルが意識を取り戻した。
「…………ゲゴッ」
「アシガエルっ!……ごめん!俺の指示が下手だったから負けちまった!」
「ゲコッ、ゲッコウ!」
「ははっ、お互い様だって?生意気なんだよ、こらっ」
そう言って笑い合うハウとアシガエルは仲の良い兄弟にも、友達のようにも見える。
他の子供たちもバトルの前は揃って暗い表情をしていたのに、今では笑顔で先程のバトルについて語り合っている。空気が明確に変わった。
これが狙いだったのだろう。チラリとハウを見れば、視線に気付いた彼がフンッと顔を晒してしまった。どうやら俺が嫌われていること自体は演技じゃなかったらしい、残念。
「はいはい、みんな落ち着いて!」
二度三度と手を叩いて、ミリアさんが注目を集める。
すると、子供たちは一斉に静かになる。流石に手慣れてるな。あっという間だ。
「さっきのバトルを見ていて、みんなはどう思ったかな?アシガエルはどうだった?凄く楽しそうに闘ってたよね」
「うんっ、楽しそうだった!」
「私も一緒にバトルしたくなっちゃったもん!」
「夢中になっちゃったなぁ〜」
口々に感想を言う子供たち。見た限り、ミリアさんがこれから何を言おうとしているかは分かっているのだろう。
ただやっぱり、暗い雰囲気はもう存在しない。
目の奥に寂しさを滲ませてこそいるが、それ以上に興奮が上回っているようだ。
「そうよね。見てるこっちが手に汗握るようなバトルだったわ。こういうバトルがしたかったって言うみたいに、本当なら耐えられないはずの攻撃を耐えて最後まで諦めず、少しでも長くこの時間を堪能したい。私はアシガエルがそう言っているように聞こえた」
ミリアさんの語る言葉に黙って耳を傾けて、誰も口を挟まない。
実際アシガエルが耐えた理由は、ゲーム的に言ってしまえばガッツ、食い縛りなどと言われる現象である。一昔前ならただの乱数によって起きた、偶然の代物でしかない。
ただ高度に発達したAIを使用しているアルマスでは、ただの偶発的な現象ではない。パトモンのコンディションやモチベーションなどによって左右されるが、ある程度は狙って出すことさえ可能なもの。
今回に関してはミリアさんの言う通りアシガエルが気合いで耐えた、ということになるのだろう。
「私は、そんなアシガエルを応援してあげたい。今生の別れって話でもないもの。また強くなって、いつか帰ってきてくれたら嬉しい。そう思ってるわ」
「俺も時間がある時には孤児院に寄るよ。その時はいつもみたいに遊んでやってくれると助かる」
そう、何も一生会えなくなるわけではなく、むしろ来ようと思えばいつだって来れるのだ。
アシガエルが帰りたくなった時にはもちろん連れて来るし、そうでなくても孤児院に来てアシガエルだけ置いてあとで迎えに来ると言う方法だって取れる。
俺からもそう伝えると、みんなの表情が心なしか柔らかくなった気がする。
「…………こうして認めんのは癪だけど、バトルした俺が保証する。カインド、さんは強い。完全に不意を打って一発入れたのに、すぐに対策されてあとは見た通りだ。この人ならアシガエルはもっと強くなれる。きっと、夢だって叶えられる」
一泊置いて、ハウもみんなに語り掛ける。
俺とバトルした張本人だからこその説得力もあり、直接見たから理解もできる。
「そう、だね。分かった」
「やっぱり……寂しいけど、僕も応援する!」
「我儘言ってごめんね、アシガエル」
こうして子供たちからもアシガエルを連れていくことに納得してもらうことができた。
あとはアシガエルが俺についてきてくれるか。ここまでしてダメだったら、もうそれはそれで仕方がないだろう。
その時は俺じゃなくて、未来の子供たちに任せよう。
「そういうことだ、アシガエル。みんな君の夢を応援してくれるってさ。今よりも強くなりたいんだよな?それなら俺で良ければ一緒に強くなろう。強く立派になって、またここに帰って来よう。どうかな?」
手に未契約の召喚石を持ち、視線を合わせながら差し出す。
ここまでアシガエルは場に流されていた節がある。急な話だったことは百も承知だが、戸惑いが先行してしまっていた。
けれど、ハウがバトルをしようと言った時にアシガエルは自らの判断で闘うことを選ぶことができたのだ。
だから、最後の決断は誰に言われるのでもなく、自分の意思で決めてほしい。
そんな俺の気持ちを他所に、アシガエルは静かに俺の手にある召喚石をジッと眺めていた。
ふと視線を上げて、ミリアさんを見る。それから子供たちを一人一人目に焼き付けるかのように見詰めて、つい先程心を通わせたハウと視線を合わせて、最後に俺を見る。
今の一連の動作にどれだけの感情が籠っていたのか。俺には想像することしかできない。ただ、アシガエルが出した結論を尊重するだけだ。
「ゲゴッ!」
そして、アシガエルはそっと召喚石に触れた。
次の瞬間、眩い光が放たれたあとにアシガエルの姿はなくなっていた。
代わりに召喚石からは温かな感情が伝わってくる。どこかアシガエルに似た模様が浮かび上がっており、心臓の拍動のように淡い光が瞬いている。
これで契約成立だ。正式にアシガエルは俺のパトモンになったのだ。
「これからよろしくな、アシガエル」
その言葉に応えるかのように、一際強く光が点滅したような気がした。
アシガエル、ゲットだぜ……ってね?
このアシガエルは通常個体ですが、レアスキル持ちです。
バトル中に使っていた『影渡り』がそれですね。影から影に移動することが可能で、実は影の中に居られる時間は10秒間だけなので対処法は割とあります。
でもまあ、使い方次第ではかなり強いスキルなのは間違いないですよね。特に初見なら。
以下、ステータスです。
カイト(♂)/アシガエルLv.1
No.004 自然・怪獣 進化:有り
属性:水 弱点:植/氷/雷
特性:斬/突/魔 無効:火
0.4m/3.5kg
生命 45
筋力 135
耐久 75
魔力 105
抵抗 60
速度 180
種族スキル:水力
戦闘スキル:奇襲 水切り
補助スキル:緊急離脱 影分身 影渡り
称号:なし




