夢見がちな怪盗-③
うおおっ!オラオラオラオラオラッ!(執筆)
上手にできましたぁ〜!(ベベンッ)
その場の流れでバトルすることになったので、突然だがアルマスでのバトルのルールについて説明しよう。
野生のパトモン相手ならルール無用だが、当然マスター同士でのバトルともなれば無法というわけにもいかない。こういうのはルールがないと大変なことになるからな。
まずバトル形式を決める。
アルマスではシングルバトル、ダブルバトル、トリプルバトル、タッグバトルの四種類がある。それぞれ文字通りの意味であり、イベントの時にはもう少し特殊なバトル形式をつかうこともある。
今回のハウ&アシガエルとの対戦はシングルバトルになる。最も一般的なバトル形式だ。
次に細かいルールを決める。
例えば、一対一の使用可能スキル数は四種類までアイテム使用無し、と言うような感じだ。
これが二対二以上になると交代有り無しだったり、他にも補助技無しとか、使用するパトモンそのものを縛ったりと色々な遊び方がある。
今回は一対一の使用可能スキル数は無制限でアイテム使用無しで決まった。スキル数は縛るつもりだったのだが、ハウから必要ないと言われてしまったのでは仕方がないだろう。
そんなわけで、バトル形式はシングルバトル。ルールは一対一の使用可能スキル数は無制限でアイテム使用無し。審判はミリアさんで、不正が認められた場合はその時点で反則負けということになった。
五分間の作戦会議ということでハウはアシガエルと、俺もハナコを契約石から召喚して作戦を練る。
とはいえ、見た限りではレベルはハナコの方が上でユニーク&突然変異個体なのだ。能力値やスキルだけで判断するなら負ける要素はないと言える。
まあ、アシガエルはテクニカルなパトモンなので油断すると足を掬われ兼ねない。最初から全力で戦うつもりだ。
「それでは、両者位置についてください」
ミリアさんの指示に従って、孤児院の庭で二十五メートル程度の距離を空けてハウ&アシガエルと向かい合う。
ここはただの孤児院なのでバトルコートがなく、代わりとして同じくらいの広さが確保できる庭でバトルすることになったのだが、まあその話は置いておこう。
ハウもアシガエルも、二人ともいい顔をしていた。初めてのバトルだろうに緊張した様子もなく、興奮してギラギラと目を輝かせている。
「いくぞっ、アシガエル!お前の強さを見せてやれ!」
「ゲココッ!」
「油断はするなよ!ハナコ、スタンバイ!」
「ぴっ!ぴょ〜い!」
「両者用意はできましたね。では、悔いのないバトルにしましょう。──バトルスタート!!」
ミリアさんの合図と同時に、ハナコとアシガエルは同時に動き出した。
あのアシガエルは見たところユニーク個体でも突然変異個体でもなさそうなので、事前情報通りならハナコの方が速度では優っているはずだ。
そうと分かれば速攻勝負で決めるのが最善だろう。真っ直ぐ行ってぶっ飛ばす。シンプルに強い戦法だ。
しかし、そう簡単にはいかないのがバトルというものである。
「ハナコ!そのまま『叩き潰す』だ!」
「ぴょん!ぴょぴょ〜い!」
距離を取って様子を見ようとしたアシガエルを追いかけ回し、射程内に入ったところで速攻をかける。
見るからに凶悪で巨大な棘棍棒を凄まじい勢いで振り下ろす。審判のミリアさんや観戦している子供たちから悲鳴にも近い声が上がるが、ハウとアシガエルは動じていなかった。
「──今だっ!『影潜り』っ!!」
「ゲゲッ、ゴ!」
「ぴょ?ぴょぴょんっ!?」
とぷんっ、と一瞬のうちにアシガエルは地面に、いや正確には自分の影の中へと姿を消した。
当然目標が居なくなったことでハナコの攻撃は地面を叩くだけで意味を成さない。キョロキョロと戸惑ったように辺りを見渡すハナコの足元……影が不意に揺らめいた。
「下だっ、ハナコ!」
「ぴっ!?」
「遅えよ!やっちまえアシガエルっ、『奇襲』だ!」
「ゲッ、コォー!!」
忍を思わせる身のこなしで影から飛び出てきたアシガエルが、そのまま隙だらけのハナコを強かに蹴り飛ばす。
反応が間に合わずまともに喰らってしまったハナコは盛大に吹き飛ばされ、ゴロゴロと俺の足元まで転がってくるがすぐに立ち上がった。
結構良いダメージが入ってしまったが、まだ戦闘続行に問題はなさそうだな。
「ごめんハナコ、指示が遅れた」
「……ぴょんっ!」
「ああ、次は気をつけよう。アレは多分レアスキルだな」
「アシガエル!やったな!よしよしっ、いけるぞ!このまま勝ってやる!」
「ゲゲッ、ゴゴゴッ!!」
これで一旦仕切り直しか。
ただアシガエルのステータスは傾向的にハナコ、ユミリルと似ているスピードアタッカーだ。
あともう一発受けると厳しくなるくらいには攻撃力も高い。先程のように真っ直ぐ行ってぶっ飛ばす戦法はリスクが高いのは間違いないが…………。
「さっきと同じ戦法で行こう。ただ、今度は俺の指示があったら動きを変える。いけるか?」
「ぴょぴょ〜い!」
言うや否や、ハナコは恐れを知らないと言わんばかりに棘棍棒を振り翳しながらアシガエルに突撃する。
どうだハウ、馬鹿の一つ覚えだと思うか?頭の良い君は警戒するだろうけど、あんなに綺麗に決まった成功体験のイメージはすぐに消えるものではない。
「何考えてんのか知らねえけど、そっちの思い通りにはいかせないぜ!アシガエル!『影分身』から『影潜り』で撹乱しろ!」
「ゲゲッ、ゴッ!」
やっぱりハウはセンスがあるのだろう。
全く同じパターンにならないように『影分身』を周囲にばら撒いて注意を散漫にし、そのまま本体は姿を隠す。
ハナコからすればどこから出てくるか分からない相手は怖いだろう。一瞬だけど出てくる瞬間は俺の視点からなら判断できるし、そもそも相手に主導権は渡さない。
良い作戦だが、今回に限っては相手が悪かったな。影に潜っている時も、声は聞こえているんだろう?
「落ち着けハナコ、『変幻自在』だ!続けて『恐怖の叫び』を聞かせてやれ!」
「ぴょっ!……ぴ〜ひょろろ〜。『ァ"ァ"アアア"ァ"ア"ア"ア"アアアッッーー!!?!?』」
『変幻自在』によって筋力と魔力の能力値を入れ替えながら姿を変えたハナコが、巨大なメガホンを通して背筋を凍らせるような悍ましい叫び声を響かせる。
それは例え、影の中に隠れていようと回避できるようなものではない……問答無用の全体攻撃だった。
「ぐぅっ、何を……って、しまった!大丈夫かっ、アシガエル!?」
「ゲゲゲッ!?ゴ、ゴゴゲゴォ〜??」
「くそっ!アシガエルっ、気を強く持つんだ!」
堪らず影の中から飛び出したアシガエルは、しかし『恐怖の叫び』の追加効果で身動きが取れない。
更に、折角ばら撒いた分身も全体攻撃でまとめて消し飛ばされている。
安全なはずの影の中で予想外に受けた手痛いダメージもあってか、ハウの声も届いていないようだ。当然こんな隙を見逃すはずもなく、ハナコは猛然とアシガエルに襲い掛かる。
「『叩き潰す』!」
「ぴぴぴっ、ぴょ〜い!」
「頼むアシガエル!動いてくれっ、『緊急離脱』!!」
「ゲ、ゴ……ゲッコォ!」
身の毛がよだつような風切り音と共に振り下ろされた棘棍棒だったが、間一髪でアシガエルが回避する。
シュタッと着地したのはいいが、すぐにフラリと身体が揺らぐ。最早気合いだけで立っているような状態で、受けたダメージは深刻だった。
あと一回の攻防で限界なのは誰の目にも明らかである。
「もう一回だけ、もう一回だけ頑張ってくれ!『影潜り』!」
「ゲッ、ゲゴッ!」
とぷんっ、と再び影の中に姿を消す。
先程とは違って『影分身』をばら撒く余力もないのだろう。確か『緊急離脱』は結構身体に負担を掛けるという話だし、本当にギリギリなのは間違いない。
むしろ『恐怖の叫び』を耐えたことに驚く。打たれ弱いはずのアシガエルなのに、かなり根性がある。
まあ、これ以上長引かせるつもりもない。勝ち筋は与えない。
「『姿隠し』」
「ぴょん」
「なっ!?どこに消えた!?」
「ゲゲ、ゴゴゴ??」
そもそもスキルに制限がない時点でこちらに有利過ぎる条件だったのだ。
ハナコが『姿隠し』によって虚空へと溶けるようにして姿を消す。アシガエルとはまた異なる方法だが、結果としては似たようなものだろう。
ハウの驚いた声に、思わずと言った様子でアシガエルも影から顔を出してしまった。
「ハナコっ、『地割り』っ!!」
「ぴょぴょ、ぴょんっ!ぴょ〜いっ!!」
「ぁっ──みっ、『水切り』で迎撃しろ!」
「ゲッ……コゥッ!!」
何処からともなくアシガエルの眼前に現れたハナコが絶大なパワーを宿した一撃を叩きつける。
咄嗟にアシガエルも体力が危険域に達したことで自動発動している『水力』によって威力を増した『水切り』で対抗しようとするが、水を圧縮して作られた刀は一瞬で破壊された。
無慈悲な一撃はアシガエル諸共に地面を粉砕し、バトルコート全体に衝撃が走る。
土煙が収まった後、立っていたのはハナコ一匹だけ。
アシガエルは最後の一撃を受けて完全に伸びており、白目を剥いて地面に倒れ伏していた。
それを見て、呆然としていたミリアさんが声を上げた。
「ア、アシガエル戦闘不能!ただいまのバトルっ、カインドチームの勝利です!」
『恐怖の叫び』
レア度:レア 系統:特殊/攻撃
属性:霊 特性:魔/音
使用回数:10回 クールタイム:20秒
一部を除く防御&回避スキル無効。威力は中程度。追加効果として相手を硬直させるが、スキルを使用した側の魔力の数値が攻撃を喰らった側の抵抗の数値より高いほど効果時間が長くなりやすい。抵抗の数値の方が高かった場合は追加効果が発生しない時もある。




