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【日刊上位ランクイン】チャネリングしたら宇宙船の美少女艦長に繋がったので、ブラック企業を辞めて人生を取り戻すことにした  作者: ハイカラな人


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 “宇宙船”という言葉は、ついに専門家の口からも、条件付きで出た。


 翌々日の夜。

 恒一は作業の手を止め、科学系のライブ配信を見ていた。


 大学の天文学者。

 宇宙工学の研究者。

 安全保障研究の肩書きを持つ男。

 三人が、慎重そうな顔で並んでいる。


 画面下のコメント欄は荒れていた。

 宇宙人。

 陰謀。

 フェイク。

 終末。

 全部ある。


 だが、その喧騒の中で、研究者の一人がこう言った。


現時点で断定は避けるべきですが、

既知の自然天体や既存人工物で説明しきれない以上、

“宇宙船のような人工構造物”という仮説も、排除せず検討対象に入る段階です。


「……」


 恒一は画面を見つめたまま、動かなかった。


 排除せず検討対象。

 かなり慎重だ。

 だが、十分だった。


 宇宙船。

 その語彙が、ついに専門家の口から出た。


『段階が一つ進みました』

 ルイゼの声は低い。


「うん」

「もう、一般の盛り上がりだけじゃない」

『はい』

「専門家が“仮説”として置いた」

『はい』


 恒一は配信を止める。

 止めても、心拍は少し高いままだ。


「整理する」

『はい』


「正しい点」

「地球側は“宇宙船仮説”を、少なくとも検討対象に入れた」

『はい』

「不確実な点」

「その次に“交信”へ行くのか、“脅威”へ行くのか」

『はい』

「不明な点」

「各国の内部会議で、今どこまで話が進んでるか」

『……』

『かなり悪い空気でしょうね』


「悪い空気?」

『脅威かどうかを決める会議は、たいてい空気が悪いです』


 恒一は少しだけ笑ってしまった。


「宇宙でも?」

『宇宙でも』

「地上でも?」

『地上でも』


 妙な一致だった。

 でも、たぶん本質でもある。


     ◇


 翌朝。

 “内閣府関連安全保障研究会”から、正式なオンライン日程候補が届いた。


 明日の午後。

 三十分。

 記録可。

 参加者二名。

 近地球空間未確認構造物に関する民間観測ヒアリング。


「……早いな」

 恒一はメールを見ながら呟く。


『かなり』

 ルイゼが言う。


「参加者二名って書いてある」

『事務局と、有識者役でしょう』

「“有識者役”って嫌な言い方だな」

『事実です』


 嫌なくらい冷静だった。


「受けるか」

『今の段階では、避けにくいでしょう』

「だよな」

『ただし』

「条件だろ」

『はい』


 恒一はメモ帳を引き寄せる。


ヒアリング前に確認

•質問範囲

•録音の明示

•実名と所属

•研究会の位置づけ

•自分はあくまで民間観測者


「……」

『もう一つ』

 ルイゼが言う。

『空の違和感については、見たままだけ話す』

「うん」

『私のことを想起させる精度まで寄せない』

「分かってる」

『仮説を足さない』

「それもな」


 その時、不意に恒一の中に別の疑問が浮かぶ。


「なあ」

『はい』

「仮に向こうが、“それ以外にも何か知ってるのでは”って踏み込んできたら?」

『……』

『そこで、あなたが何を守るかを先に決めておくべきです』

「……」


 守るもの。


 地球か。

 ルイゼか。

 自分か。


 たぶん、その三つだ。

 でも、順番がまだ、完全には決まっていない。


「……最悪の質問だな」

『はい』

『だから、今のうちに少しだけ整理します』


 ルイゼの気配が少し近くなる。

 冷たい集中。

 余計な枝を切る感覚。


『事実として言えること』

「うん」

『空に違和感を見た』

「うん」

『ニュース前からSNSで類似報告を見た』

「うん」

『それで不安になった』

「……うん」


『言わないこと』

 ルイゼが続ける。

『私との接触』

「当然」

『異星技術』

「当然」

『前職退職後の“伸び”に対する違和感の正体』

「……」


 そこが少し引っかかる。


「でも、あいつら、そこもたぶん見てるぞ」

『はい』

「じゃあ、どうする」

『“仕事上の整理スキルが前職の損耗で埋もれていた”で押し通す』

「……」

『それは完全な虚偽ではありません』


 虚偽ではない。

 たしかに。

 でも、全体ではない。


 だが今は、それで十分かもしれなかった。

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