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【日刊上位ランクイン】チャネリングしたら宇宙船の美少女艦長に繋がったので、ブラック企業を辞めて人生を取り戻すことにした  作者: ハイカラな人


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 夕方。

 ルイゼ側から、また強い気配が来た。


 疲労。

 緊張。

 それから、珍しく、苛立ち。


「おい」

 恒一が低く言う。

「何があった」


『艦内で、限定接触派が強くなりました』

 ルイゼが言う。

『地球側の認識が進みすぎる前に、こちらから最小限の窓口を開くべきだと』

「……」

「お前は?」

『まだ、全面賛成ではありません』

「でも反対も切れない」

『はい』


 前より重い。

 明らかに。

 議論ではなく、圧に近い。


「地球側の誰に?」

 恒一が訊く。


『それが最大の争点です』

「政府?」

『一案』

「研究機関?」

『一案』

「軍?」

『……一案』

「最悪だな」


 どこも最悪だった。

 でも、現実だ。


 ルイゼは少しだけ目を伏せる。


『そして、私に対して、“あなたの観測対象をもっと活用すべきだ”という意見も出ています』

「……」

「観測対象って言ったな」

『……はい』


 空気が冷える。


「俺を、だろ」

『はい』

「活用って何だ」

『地球側の初期反応、情報流通、民間感覚の把握において、あなたは依然として有用だという意味です』

「……」


 有用。

 そうだろう。

 事実だ。

 だからこそ余計に腹が立つ。


「……で、お前は」

『拒否しています』

「……」

『少なくとも、あなたを“そのためだけに使う”線は拒否しています』


 その言い方は、ぎりぎりだった。

 “そのためだけに”。

 つまり、そうでない形ではまだ使っている自覚があるのだろう。


 恒一は深く息を吸う。


「整理する」

『はい』


「正しい点」

「俺は今でも、お前らにとって有用な地球側観測点だ」

『はい』

「正しい点その二」

「艦内の一部は、そこをもっと使いたいと思ってる」

『はい』

「不確実な点」

「お前がどこまで拒否しきれるか」

『……』

『はい』


 ルイゼは目を逸らさなかった。


「不明な点」

 恒一が続ける。

「接触判断が動いた時、俺が“窓口”として扱われるのかどうか」

『……それは』

 彼女が初めて言葉に詰まる。

『かなり、ありえます』


 その一言で、いよいよ腹が決まる音がした。


 ああ、そうかと思う。


 自分はもう、ただの被巻き込み民間人ではない。

 そう見なされる可能性が高いのだ。

 地球側からも。

 異星側からも。


 なら、なおさら、自分の足場と、自分の条件を持っていないと駄目だ。


「……なら、余計に条件を増やす」

 恒一が言う。


 ルイゼの目が少しだけ上がる。


「俺を窓口に見なすなら」

「……」

「地球側の情報を取るだけじゃなく、そっちの判断も、今まで以上に開け」

『……』

「でないと、俺は地球側を説得する材料が何もない」

『……』

「そっちにとっても、不利だろ」


 ルイゼはかなり長く黙った。

 その沈黙の中に、考えと、迷いと、少しの安堵が混ざっていた。


『……はい』

 やがて彼女は言った。

『それは、正しいです』


 その“正しい”には、今までより重みがあった。


     ◇


 夜。

 恒一はベッドに座り、今日の紙を見返していた。


自分の立場

•民間人

•初期観測者

•情報提供者

•どちらにも属しきれない

•だが、どちらにも無関係ではない

•窓口扱いされる可能性が高い


 最悪だった。

 でも、前より一つだけ違う。


 この最悪を、言葉にできている。


 それが少しだけ、足場になる。


「……」

『疲れましたか』

 ルイゼが訊く。


「かなり」

『私もです』

「そりゃそうだ」

『……』

「なあ」

『はい』

「今さらだけど、お前と会う前の俺なら、こんなの絶対無理だった」

『……』

「潰れて終わってたと思う」

『……そうかもしれません』


 ルイゼの声は静かだった。


「だから、怒ってるのも本当だけど」

「……」

「助けられたのも本当なんだよな」

『……』

『はい』


 短い。

 でも、向こう側から伝わるものはかなり重かった。


「だから面倒なんだよ」

『知っています』

「でも」

「はい」

「切り捨てないでくれよ」

『……』


 長い沈黙。


 それから、ルイゼはかなり低く、でもはっきり言った。


『それは、私も同じです』


 恒一は返事ができなかった。


 ずるい。

 そう思う。

 でも、今の言葉が、本当にずるいだけのものでもないことも分かる。


 だから余計に、切れない。


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