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【日刊上位ランクイン】チャネリングしたら宇宙船の美少女艦長に繋がったので、ブラック企業を辞めて人生を取り戻すことにした  作者: ハイカラな人


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喫茶店で会った会計事務所の所長は、牧野が言っていた通り、かなり慎重そうな男だった。


 五十代前半。

 細い眼鏡。

 柔らかい話し方。

 でも、目はちゃんと見ている。


「初めまして」

 恒一が頭を下げる。

「初めまして。牧野から聞いています」

 所長が言う。

「業務整理が得意だとか」

「得意というより、現場の詰まりを整理するのが比較的向いている、くらいです」

「謙遜ですか」

「予防線です」


 所長は少しだけ笑った。


 悪くない反応だ。


 話は静かに進んだ。


 今の恒一の仕事。

 何を見て、どう切り分けるか。

 会計事務所案件で、なぜ“締切一覧と確認待ち一覧を分ける”発想に至ったのか。


 所長は一通り聞いたあと、コーヒーを置いて言った。


「率直に言うと」

「はい」

「最初は少し怪しいと思っていました」

「そうでしょうね」

「でも今は、怪しいというより、現場を壊した経験が濃い人だという印象です」

「……」


 かなり直球だった。


「悪い意味ではなく」

 所長が続ける。

「壊れた流れに見覚えがある人の話し方をしている」

「……」

「だから、逆に、やってもらう価値はあると思いました」


 恒一は返事が少し遅れた。


 それは褒め言葉として、かなり変だった。

 でも、同時に、かなり本質でもあった。


「ありがとうございます」

 ようやくそう返す。


「ただし」

 所長は言う。

「一つだけ気になる」

「何でしょう」

「あなた、今のやり方で仕事が増えたら、どこかで一度燃え尽きませんか」


 見抜かれている。


 恒一は少しだけ笑った。

 笑うしかなかった。


「その可能性は、かなりあります」

「正直でいい」

「だから、今は受付数を絞っています」

「……」

「あと、型を作って、毎回ゼロから考えないようにしています」

「なるほど」


 所長はそこで初めて、少しだけ表情を緩めた。


「なら、一つだけ相談したい案件があります」

「はい」

「うちではなく、顧問先です」

「……」

「小さな製造業で、事務と進行と現場の連携が死んでいる」

「かなり最悪ですね」

「かなりです」


 その言い切り方で、少し笑ってしまった。


「今すぐではなくていい」

 所長が言う。

「ただ、来月頭に一度、見てもらえるなら繋ぎたい」


 来月頭。


 少し先だ。

 だが、これは大きい。


 会計事務所の所長経由。

 顧問先。

 つまり、紹介の質が一段上がった。


『判定』

 ルイゼの声。

『妥当。信用が少しずつ積まれています』

「うん」

『不確実。対応範囲が広がるぶん、難易度も上がる』

「それもそうだな」


 恒一は所長に答えた。


「現時点で確約はしませんが、概要を見てからなら検討できます」

「それで十分です」

「ありがとうございます」

「こちらこそ。牧野の睡眠が少し戻ったのも助かっています」

「……」

「寝る前に頭を外へ出すやつ、あれ、地味に効くそうです」

「そうですか」

「ええ。地味に」


 地味に。

 その言葉が妙に嬉しかった。


 派手じゃない。

 でも、効く。

 今の自分を表すには、たぶんちょうどいい。


     ◇


 帰り道。

 夕方の光は少し白く、街は普通に騒がしかった。


 恒一は駅まで歩きながら、深く息を吐く。


「……なんか、一段上がった感じするな」

『はい』

 ルイゼの声。

『会計事務所の補助スタッフ経由から、所長経由へ移りました』

「言い方が業務報告なんだよな」

『事実ですので』

「まあ、そうだけど」


 嬉しい。

 でも、同時に少し怖い。

 階段を上がるたびに、落ちた時の痛みも増えそうだから。


「……なあ」

『はい』

「俺、今たぶん、前よりだいぶいい感じだと思う」

『そうですね』

「でも、ちょっとだけ、また自分を仕事で測り始めてる気もする」

『……』

「会計事務所の所長に評価されたの、かなり嬉しかった」

『はい』

「その嬉しさが、危ない気もする」


 ルイゼは少し黙った。

 そして静かに言う。


『妥当な自己観察です』

「またそれか」

『今回は本当にそうです』

「……」


『正しい点。評価されることは嬉しい』

 ルイゼが続ける。

『不健全なのは、評価がないと自分が空になる時です』

「……」

『今のあなたは、まだそこまでは戻っていない』

「戻らないようにしたいな」

『では、今日の評価は“嬉しかった”で止めてください』

「……」

『“価値が証明された”まで進めない』

「……それ、めちゃくちゃ助かるな」

『知っています』


 恒一は駅前の雑踏の中で、少しだけ立ち止まった。


 嬉しかった。

 それでいい。

 そこまでで止める。


 その感覚は、新しかった。

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