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【日刊上位ランクイン】チャネリングしたら宇宙船の美少女艦長に繋がったので、ブラック企業を辞めて人生を取り戻すことにした  作者: ハイカラな人


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会計事務所の所長と会う日が決まった。


 木曜の午後。

 事務所近くの静かな喫茶店。

 まずは相談ベース。


 日時が決まった瞬間、恒一の胸は妙な感じで騒いだ。


 緊張。

 期待。

 少しの高揚。


 それが何に似ているか考えて、すぐにやめた。

 たぶん、恋に少し似ている。

 手応えが返ってきた時の感じが。

 だから厄介だ。


「……」

『今、かなり変なことを考えましたね』

 ルイゼの声。

「読むな」

『輪郭です』

「信用ならねぇなその言い訳」

『今のは、成功の快感と人間関係の高揚を少し混同していました』

「やめろ」

『かなり』

「やめろって言ってるだろ!」


 でも、図星だった。


 成功の手触りは、危ない。

 人を前のめりにさせる。

 もっと欲しくなる。

 認められたくなる。

 それは仕事にも、関係にも、少し似ている。


「……だから気をつける」

 恒一が言う。

『何をですか』

「調子に乗るのもそうだけど、仕事の反応に酔うのも」

『良い整理です』

「珍しくすぐ褒めるな」

『重要なので』


 喫茶店で話すためのメモを作る。


 自己紹介。

 今やっていること。

 できること。

 できないこと。

 今は案件を増やしすぎないよう調整していること。


 “できないこと”を先に書いている自分に、少しだけ驚く。

 前の会社なら、できないを言う余裕はなかった。

 今は違う。

 無理なものは無理だと先に言った方が、あとで壊れないと分かり始めている。


『学習していますね』

 ルイゼが言う。

「お前の影響もある」

『半分くらいは認めます』

「また半分か」

『全部だとあなたが調子に乗るので』

「それはそうかもな……」


     ◇


 その日の夜、恒一は久しぶりに少し長めにルイゼと繋いでいた。


 案件の話。

 不審メールの話。

 会計事務所の所長の話。

 そういう現実的な話を一通り終えたあと、妙に沈黙が続く。


 嫌な沈黙ではない。

 でも、少し熱を帯びた沈黙だった。


「……なあ」

『はい』

「最近、お前の方から切らないよな」

『接続を?』

「うん」

『そうですね』


 あっさり認める。


「なんで」

『理由を言うと、少し恥ずかしいです』

「……」


 珍しい。


 この艦長が、“恥ずかしい”を自分から言うのはかなり珍しい。


「聞きたい」

『……』

「そこは黙るのかよ」

『あなたと話していると、艦内の圧から少し距離が取れることがあります』

「……」

『あと、地球側の雑多な感覚は、私にとって予測しきれないので、思考が一方向に固まりにくい』

「……つまり?」

『休憩に近いです』

「……」

『満足ですか』

「いや」

「それだけじゃないだろ」

『……』


 長い沈黙。


 その沈黙の中で、少しだけ向こう側の感情が揺れる。

 躊躇。

 照れ。

 それから、ごく薄い、でも確かな好意に近い温度。


「……」

『それ以上は、今は言いません』

 ルイゼが言う。

「ずるいな」

『知っています』

「最近ほんとそういうとこあるよな」

『あなた経由で地球的な会話を学習していますので』

「悪い影響だな」

『半分くらいは』


 恒一は天井を見ながら、小さく笑った。


 ずるい。

 でも、それで少しだけ救われてもいる。

 そこが厄介だ。


「俺の方も言うか」

『何をですか』

「お前と話してると、普通に落ち着く」

『はい』

「あと、ちょっと楽しい」

『はい』

「……あと」

『あと?』

「その先は、今は言わない」

『……』


 向こう側で、ふっと笑う気配。


『ずるいですね』

「知ってる」


 たぶん、今のは引き分けだった。

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