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図書館の天才少女〜本好きの新人官吏は膨大な知識で国を救います!〜  作者: 蒼井美紗
第13章 浄化の旅の再開編

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226、楽しそうなハルカ

 夕食を終えて食堂を後にしたマルティナたちは、マルティナ大興奮の中古本屋に寄ったり、少し屋台を見て回ったりしながら早めに宿に戻り、夜はしっかりと休んだ。


 そして翌朝。朝早くからやっている屋台を回って移動時に食べる食事をハルカ主導で購入したところで、また浄化へ向かって出発だ。


 街から少し離れた場所でディアスの背に乗り、空の旅を再開させる。中古本屋で購入した未読本五冊をしっかりと抱えているマルティナに、ロランもハルカも苦笑を浮かべていた。


「本当に嬉しそうだな」

「もう最高に嬉しいです……!」


 本当はもっと買いたい本がたくさんあり、泣く泣く諦めた本を思うと今すぐ街に戻りたい気持ちに駆られるが、それでも新しい本を五冊も買えたことは最高に嬉しかった。


「わたしにも貸してね。読み終わったら売って、また別の本を買うんだよね?」

「うん。これ以上は持ち運べないからね……」


 馬車があればもう少し数が増えても問題ないのだが、今のマルティナたちはディアスの背に乗ってその身一つだけで移動しているのだ。鞄に入れることができる数冊分を除けば、腕で抱え持てるだけしか持ち歩くことはできない。


 一度読めば内容を完璧に覚えられるので売ってしまっても問題はないのだが、本自体も好きであるし、他の者たちにも同じ本を楽しんでほしいため売るのは苦渋の決断である。


「じゃあ、わたしも早く読まないとね」

「ううん、無理はしないでね」


 首を横に振ったマルティナの肩に手を置いたのはロランである。


「それは俺がマルティナに言いたいセリフだな」


 いい笑顔のロランに顔を覗き込まれ、マルティナはツーっと視線を逸らした。昨夜、買った本を読んで夜更かしをするのはダメだと言い聞かせられてから自分の部屋に向かったのだが、少しだけ読んでから寝ようと考えたその少しだけが長くなり――。


 ロランが寝る前に一応確認だと声をかけにきてくれて、それによってマルティナが日付が変わる頃になってもまだ本を読んでおり、寝る準備さえ何一つ終わっていないことが発覚した。


「――本当にすみません。今夜からはちゃんと寝ます」


 マルティナは潔く謝った。自分が悪いことは分かっているのだ。どうしても本の魅力に抗えないだけで――。


(なんで本を読んでると、あんなに時間が過ぎるのって早いんだろう。まだ一時間ぐらいかなと思ってると、三時間ぐらい経ってるんだよね……)


 今回の旅には余計な荷物を持ってきていないので、マルティナを助けてくれるタイマー付きの時計はない。とりあえず部屋ではなくて、誰かに声をかけてもらえるように共用部で本を読もうか。


 いや、寒さで強制的に意識が浮上するように、薄着をして廊下で読めば――。


 本を読まないという選択肢はないマルティナである。


 色々と考え込んでいると、ディアスが言った。


「最初の瘴気溜まりまでそろそろか?」

「はい。もう少しで見えてくるはずです。ディアス様、少しだけ方向を東へ変えていただけますか?」

「分かった」


 ソフィアンによって僅かに進路が変わり、それからすぐに瘴気溜まりが見えてくる。浄化にも慣れてきたが、皆で気を引き締めて瘴気溜まりに臨んだ。


 それからさらに一つの瘴気溜まりを浄化したところで、少し遠くの国に向けて移動をすることになった。朝早くから活動していたのでまだ午前中のおやつの時間だが、お腹が空いたということで、皆で買ってきた移動食を食べることにする。


「皆で食べましょう! ディアス様、背中の上で失礼します」

「別に構わん。我は朝に食い溜めしたので問題ない」


 ディアスは頻回に食べる必要のない種族であるため、今回の移動食はマルティナたちだけで楽しむ形だ。その代わりに、ディアスは朝食で十人前は食べていた。


「ありがとうございます」


 ハルカはディアスに感謝を伝えると、嬉しそうな笑顔で買ってきた食事を取り出していく。地球にあった機内食イメージらしいが、その食事はハルカの中で結構な憧れだったようだ。


「おそらく本当の機内食とは違うと思いますが、チキンステーキと小さめの丸パンとバター、芋を潰したものと果物です」


 これが憧れというのがマルティナにはよく分からないが、ハルカが嬉しそうなのでいいことにした。皆で景色を楽しみ、適度な風を感じながら食事を進める。


「なんか贅沢っすね〜」

「こんな場所で食事ができるのなんて俺たちぐらいだもんな」


 サシャとロランの会話に皆で頷いた。特別に美味しい食事というわけではないのだが、この贅沢感があることで、普通に食べるよりも美味しく感じられる気がする。


 こういうのを五感の相互効果と言うのだと書かれた本を読んだことがある。あの本の著者はどの場所で食事をすると一番美味しく感じられるのかを詳細に実験して数値化していたが、さすがに竜の背に乗って空を飛びながらの食事は実験の内容に入っていなかった。


(あの著者さんをここに招待したいな……そうしたら、また新しい本を書いてくれそう!)


 どこまでも新たな本を求めているマルティナである。


 そうしてハルカが大満足のおやつ時間を終えて、昼前に別の国に入った。

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