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図書館の天才少女〜本好きの新人官吏は膨大な知識で国を救います!〜  作者: 蒼井美紗
第13章 浄化の旅の再開編

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225、ハルカの過去話

「地球にも腸詰肉ってたくさんあったんだよね。この料理とかなり似てるホットドッグってものがあって、わたし結構好きだったんだ」


 ハルカによる日本の話に、マルティナは興味津々で意識を向けた。


 日本のことは色々と聞いてきたが、それでもまだまだ知らないことは多々あるのだ。ハルカが浄化の旅に行ってしまい、マルティナとハルカは割とゆっくり話す時間を取れていなかった。


「ホットドッグって味も同じような感じ?」

「うん。でもソースがちょっと違って、ケチャップっていう具材の入ってないトマトソースと、あとはマスタードって辛い黄色のソースをかけるの。マスタードって原材料はなんだったんだろう……?」


 眉間にうっすらと皺を寄せて考え込んだハルカに、話を聞いていたディアスが食いつく。


「ハルカの世界の料理も興味深いな」

「美味しいものがたくさんありましたよ。特にわたしがいた日本という国は、食文化はかなり発展していたと思います。世界中の料理を取り入れて日本風にしたりもしてて」


 日本を懐かしんでいるハルカの表情にマルティナが胸の奥の痛みを覚え、それを必死に消し去ろうとしていると、ディアスが問いかけた。


「そういえば、ハルカの世界に魔法はないということだったが、それは別の国もそうだったのか? 魔法がある世界だったとしても、ある地域の人々は魔法が使えないということもあるだろう?」


 ディアスは日本以外の国では魔法が使え、ハルカはそちらの生まれではないのかと言いたいのだろう。


 しかし、ハルカは首を横に振る。


「それはないはずです。地球は世界中の情報がすぐに集められるような情報ネットワークがありましたし、未開の地というのもほとんど残っていなかったはずです。地球に魔法や魔力というものはありませんでした。ただ――」


 そこで言葉を切ったハルカは、少しだけ寂しそうな、心細そうな表情で言った。


「わたしの生まれがよく分からないというのは事実です」


 その言葉にマルティナは僅かな疑問を覚える。ハルカがこの世界に来たばかりの頃、両親はハルカが幼い頃に事故で亡くなり、養護施設で育ったと言っていたのだ。


 養護施設で育ったとはいえ、両親のことは分かっているのだから、生まれは明確ではないのか。


 デリケートなことなので聞いてもいいものか。そう悩んでいたマルティナに気づいたのか、ハルカが言った。


「これは今まで誰にも話したことがなくて、わたしも高校に入る頃、施設長に教えてもらったんだけど……事故で亡くなったわたしの両親は、わたしの養父母だったみたいなんだ。どんな経緯で養父母になったのかとか、その辺は施設長もよく分からないって感じで。だからわたしを産んでくれた血の繋がりのある両親については分からないの」


 予想外の話にマルティナは目を見開く。マルティナは血の繋がっている家族が健在で、ハルカの気持ちを理解したいとは思っても、自分が理解できているとは思えなかった。


「それ、は……」


 何も言えないでいると、ハルカが笑顔で両手を横に振る。


「あ、そんなに深刻に捉えないで。事故で亡くなった両親の記憶だってほとんどないし、その両親との血の繋がりの有無はそこまで重要じゃないかなって思ってるから。わたしにとっての家族は施設の皆だったから。――でも、自分の生まれって話だと、よく分からないって結論になるだけで」

「……うん。ハルカはハルカだもんね。生まれはあんまり関係ないよ」


 気の利いたことが言えず、マルティナが言えたのはそれだけだったが、ハルカは嬉しそうに破顔した。


「うん。ありがとう」


 そんなハルカにソフィアンも声をかける。


「ハルカの生まれがどうあれ、私たちにとっての救世主であり大切な客人であり、そして友であることに変わりはないよ」


 その言葉を聞いたハルカは、ソフィアンに顔を向けて、泣くのを堪えるように一瞬だけ唇を引き結んだ。感動を隠すように笑みを浮かべ、口を開く。


「ありがとうございます。とても嬉しいです」


 マルティナたちがそんなやり取りをしている横で、最初の質問を投げかけたディアスは、顎に手を当てて何やら考え込んでいるようだった。


 今の話にそこまで悩むことがあるのだろうかと、マルティナは不思議に思う。


「ディアス様?」


 名前を呼ぶと、ディアスは我に返った様子で顔を上げ、首を横に振りながら食事を再開させた。


「なんでもない」


 その答えに、マルティナもまた食事へと意識を向けると、誰からも注目されていないディアスが小さく口を動かす。


「生まれが分からぬのか……ハルカの気配は、どこかで」


 その言葉は誰にも聞こえていなかった。

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