5.エリナと二人きりの勉強会。
エリナのターン!
応援よろしくお願いいたします!
「さて、帰るとしようかな……」
放課後になった。
安藤さんは部活ということもあって、名残惜しそうに教室を出て行く。そんな彼女の後姿を見送ってから、ボクは帰宅の準備を整えた。
先日も言った通り、この学校は部活動が盛んである。
なので、大半の生徒が授業終了と同時に教室からいなくなった。
いま、ここにいるのは――。
「あの、篠宮先輩……?」
「ん?」
ボクだけだと思ったら、どうやら来客があったらしい。
その女子生徒――瓶底眼鏡をかけたエリナは、どこか恥ずかしげにこう訊いてきた。
「篠宮先輩、成績がすごくいい……って本当ですか?」
「自分では凄いって思わないけど、どうしたの?」
「えと、あの……!」
答えると、また恥ずかしそうにモジモジとする。
それでも意を決したのか、深々と頭を下げながらこう言うのだった。
「アタシに、勉強を教えてください……!」――と。
◆
「なるほど。芸能活動が大変で、なかなか学業に手が回らない、と」
「うぅぅ、情けないです」
「そんなことないよ。こうやって頑張ってるじゃないか」
エリナはボクの言葉で、ほんの少し気が紛れたらしい。
小さく感謝を述べて、補習として与えられたプリントに視線を落とす。
「…………えっと――」
で、さっそく詰まった。
やっているのは数学なのだけれど、どうやら基礎的な部分が分かっていない模様。なのでボクは彼女から教科書を預かり、黒板の前に立った。
そして一つ一つ、方程式を順番に教えていく。
「凄いです、先輩……!」
「いや。そんなことないよ?」
「そんなことあります! ダンスの先生が言ってたんです。何事も他人に教えるには三倍の努力と理解が必要だ、って!!」
「あはは、たまに聞くね。そんな話も」
もっとも、ボクがここまで教えられるのは理由があるけれど。
それでも褒められて、嬉しくないことはなかった。
これは結構、遣り甲斐というものがある。
「それじゃ、次のページなんだけど……」
そんな感じで、ボクとエリナはどんどん課題の山を終わらせた。
時間にして一時間半ほどだろうか。
「わ! 終わりました!」
「お疲れ様、エリナ」
「ありがとうございます!」
意外にエリナの理解が早かったため、すんなりと終了した。
これなら、今から帰っても遅くはならない。
そう思って――。
「あの、先輩……?」
「ん? 次はどうしたの」
黒板を消していると、なにやら頬を赤くしたエリナが傍にきていた。
訊ねると、彼女は視線を逸らしながらこう言うのだ。
「今日、オフなんです。だから…………デートしてくださいっ!」――と。




