表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
6/12

2.お隣さんはお隣さんだった。

応援よろしくでっす!









「まさか、引っ越してきた部屋が安藤さんの隣だったなんて」

「あはは! わたしもこの間、偶然に気付いたんだっ!」

「で、今日は勇気を出して声をかけた、と?」

「……うん!」



 ボクの質問に、安藤さんは少し恥ずかしそうに頷いた。

 なんということか。隣の席のクラスメイトである彼女は、住んでいる家もまたお隣さんだったらしい。彼女の口振りからして、本当に偶然のようだった。

 安藤さんは嬉しそうに鼻歌を口遊んでいる。

 だが、ボクからしたら苦笑いだ。



「いや、まぁ……いいけどさ」



 ボクは一つ息をついて、そう納得する。

 以前の学校でイジメてきたあの子とは違って、安藤さんからはボクに危害を加えようという雰囲気は、微塵も感じ取れない。

 だったら、そこまで警戒する必要もないだろう。



「えへへ! やっぱり、運命なんだよ!」

「…………運命、ねぇ」



 とはいうが、しかし昨日の一件もあった。

 安藤さんは運命といって喜んでいるが、ボクにはその気がない。なにやら他の二人と同様に、ボクのことを彼氏だと思い込んでいる。

 これについては、どうしてそうなったのかハッキリしておかなくては。



「ねぇ、安藤さん。昨日のって、どういう意味なの?」



 だからボクは、ほんの少しだけ緊張しながらそう訊ねた。

 すると彼女は小首を傾げて、考え込む。そして、



「うーん、簡単に言うと……」

「簡単に言うと?」

「うん! わたしの、一目惚れなのです!」



 数歩先を行って振り返り、明るい笑顔でそう言うのだった。

 なんとも清々しい。あまりにも堂々とした告白に、ボクは呆けてしまった。



「……一目惚れ、って」

「悠くんの笑顔を最初に見た時、こう――ビビビッ! って、きたの!」

「ビビビ、っと……?」

「うん!」



 なんだろう。

 安藤さんの笑みには、不思議な魅力があった。

 とても感覚的で、理屈が通用しない。――いいや、だからだろうか。感覚的だからこそ、ボクは彼女の告白を否定することはできなかった。

 むしろその気持ちを否定するのは駄目だと、そう思わされる。



「悠くんは、まだそんな気持ちじゃないよね。分かってるよ」



 すると、そんなボクの考えを読んだかのように。

 安藤さんは、静かな口調で言うのだった。



「だから、今はまだ返事しなくてもいいの。ただ――」



 そこで、すっと隣にやってきて。

 彼女は優しく腕を絡ませた。そして、こう言うのだ。




「いつか、振り向かせてみせるから。それまでは『自称彼女』を続けるのを、許してほしいかな……」――と。




 潤んだ瞳をこちらに向けながら。

 まるで、懇願するように。


 ボクはその真っすぐな態度に対して、沈黙を貫くしかできなかった。

 でも、いつまでも黙っていては男らしくない。


 だから、一つ息をついてから答えた。




「……分かった。でも、他の人に迷惑をかけたら駄目だよ?」




 自分にしか影響が出ないなら、それでもいい。

 ボクはそう考えて、安藤さんの申し出を受け入れた。



「悠くん……! ありがとう!」



 すると、そんなに嬉しかったのか。

 彼女はまた駆け出して、喜びを身体で表現した。そして、こう言う。




「これで、わたしは『公認』の自称彼女だね!」――と。




 ……うん、なんだろう。



 間違ってはいない。

 だけど、どうしてだろうか。



 ボクはこの判断が、また一波乱起こしそうな気がしてならなかった。




 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ