相棒のいない一週間 8
「やられたら!やり返す!!」
とりあえず、作戦なんて物はないので無策で直進する。
「当たってなくても倍返し!」
よくわからないことを叫びつつ右腕で思い切り殴りつける。
仮面は後ろに仰け反るように回避。
「先輩!避けて!」
その声に反応して、右に跳躍、さっきまでいたところを炎弾が通過。
仮面の男は手から生み出した雷で相殺。
ちらりと声のした方へ目を向けると、菊川の後ろまで、捕獲対象の子が回り込んで…もとい逃げていた。
先ほどから見ていて気づいたが、奴が雷を放つ前に必ず手から稲光が漏れ出す。しかも一瞬で放てるわけではないようで、俺の突撃を回避したのは恐らくは、使用するための待ち時間と言ったところだろう。
俺は右腕を消して、魔力の腕を奴の足元から召喚して、仮面の男を腕が捕らえる。
仮面の男は全身から光を発すると魔力の腕が弾け飛んでいた。
「この程度で止められるとでも?…ヌルい!」
俺が攻撃している間、ちょこちょこ炎弾が飛んでいたが、当たったらヤバいだろうが軽すぎるようで、当たる前に雷に撃ち落とされている。
「じゃあこれなら……!」
菊川が不可思議な動きで仮面の男に近付く。地面を蹴ると有り得ない速度を生む。仮面の男の雷を避けながら殆どゼロ距離まで接近。
「ふははは……!!」
仮面の男両手を前に突き出し、不気味に笑う。その笑いにほんの少し恐怖したのか、菊川がまた不可思議な動きで後方に下がろうとする。
右後方に菊川が跳ぶ。ちなみに俺は、菊川が何するか分からなかったので支援砲撃らずに奴の後ろに駆けて、右腕を地面に伸ばしていた。
仮面の男の体から放電される。奴を中心として一メートル、両手からもの凄い雷が伸びる。その先には、あの獣が。
「うわぁぁぁあ!!」
そいつは思い切り横に跳んで回避、する瞬間に中間に岩が出現し、雷はそれに当たり、岩を貫き、威力が弱まりつつも直進。威力が減衰してなければ当たってたのではないだろうか。
………よし!やってみれば出来るもんだな。
俺は地面につけてた右腕を体に寄せ、仮面の男に突撃する。
菊川が再度、接近する。菊川の方が早く接近出来たので、相手の意識はそちらに向く。
「これで!どう!」
それは、ただの火の玉だった。初歩的な魔術、ファイアボール。だが、それはめくらましだった。仮面の男の左手が抉れる。抉れる瞬間、抵抗するように光を発したのがみえたが、構わず奴の左手を抉り飛ばした。
「うぐぁ!?」
仮面の男は目を白黒させ───目もとは見えないが───驚く。
恐らく、俺が菊川に食らったやつだろう。見えなかったのは恐らく、そういうやつなのだろう。
「な!?左手に何をした!!」
「答えるわけないだろ」
俺は右腕で殴りつける。
流石に仮面の男は反応して、回避する。
───土縛の腕─
「アースバインドォォォ!!!」
俺の腕に土を纏わせた。所謂属性魔法だろうか、魔導師にはまだ見せてないから分からないが、魔力の腕を完全に土塊の腕とし、それで殴りつけたのだ。外しても問題ない。創造通りなら間違いなく。
「何!?完全に避けたはず!?」
外した瞬間土塊の腕が膨れ上がり、仮面の男の首から下を殆ど飲み込んで、捕らえた。
ヤバい、魔力の減りが早い………!!
「どうしょっかなー、粉砕しちゃおうか。」
流石に殺しは嫌だな。そこまでする理由もないし。
「───あら、これ、どういう状況よ。」
「面倒な状況となっていてなあ、説明放棄して連れてきた。」
見上げると、竜に乗ってる村上さんが空にいた。
「あ、サーシャ。ひっさしぶりー!」
村上さんが竜から飛び降り、サーシャと呼ばれた捕獲対象だった女の前に降り立つ。
「………ひさしぶり。全く。疲れたっての。何でストーカーなんて会わなきゃいけねぇんだよってよ。」
「んー。昔っから暴走する事多かったし、恋愛的なトラブルなんておかしいとは思うわ。」
「……恋愛云々の反論については置いとくが、確かに恋愛関係でトラブった訳じゃねえ。……あれ、昔暴走したときの結果みたい……だし。」
「へぇ。じゃあ向こうから手出してきたのね。ってことは、やり返しても文句無いわよね。」
よく聞こえてくる。というか土縛の腕、集中力をめちゃ使う。疲れるのなんのって。
「え、でも咲、殺しはマズいだろ。」
村上さんはどこからか長さがそこそこある弓と矢を取り出し、その弓を構えていた。
「それ、あんたが言うの?………っ捕縛ナイス!」
矢を放ち、当ててからこちらに賞賛の声をあげる村上さん。だが、矢は仮面に刺さっていた。顔面。頭。ヘッドショット。…そこは、一撃必殺のポイントですよね?
腕の中の男の抵抗がなくなり、俺は腕を解く。どさりと男は落下する。その時には矢は消えていた。
「いや。私は仕方ないだろ。それよりも咲、あんたは平常心で殺すときあるから怖いんだよ。」
「大丈夫よ、気絶矢だから、死なないわ。ってか、あんたも獣の部分のせいにするのやめた方がいいわよ。初対面の人とか信じると思ってるの?」
「仕方ないだろ!………どうせあんたにはわかりゃしねえから言っても無駄か……。」
「取りあえず、協会行ってきますね。先輩は帰って良いですよ。」
「あ、先輩って…………鐘本君!?何でここに!?」
村上さん気付いて無かったのか。
「…………鐘本君に何かあったら日舞ちゃんに顔向け出来なかった…危なかった……。」
何かぶつぶつ言ってるが声が小さ過ぎて聞こえない。
「鐘本君!……明日神社に来てくださいね?」
また呼ばれたよ。どうせ事情聴取だろ。
そして三人は、突然出現した扉の中へ入っていく。
一応破壊された義腕は回収しておいた。
「おー、おつかれー?なんかさきちゃんつかれたかおしてないー?」
「しかたないじゃない、面倒な奴が関わってたわけですし。」
「あ、先輩を巻き込むのはまずかったですか。あの人センスあるんで村上さんに借りを作るより良いかなあと思いました故に、頼んでたんですがね。ダメなら今度から止めますよ。」
「あの野郎、どうかしてる……。」
「鐘本君がどうかしてるって?どこが?」
「あたしが一週間掛けて準備したリングから抜け出せたって言えばわかる?咲。」
「え、あいつそんな事出来たの?あの人の技量的に壁の外側に出れないと思うんだけど。あの木がいっぱい飛んでくるアレだよね?」
「……アレを壁上の私撃ち落として攻略したあんたに言っても無駄だったわ……。」
「それでなんでおかしいとか言えるんですか?」
「一本、尖った奴用意したんだよ。それ、右腕一本で止めやがった。」
「いや、おかしくないでしょ、あの人の腕ならやりかねないわ。」
「まあ、いらいについてはおわりですから、かえってからはなしてください、あとがつっかえてますよー。」
「なあ、咲。暫くそっちいても良いか?」
「良いけど、その男みたいな口調、やめてもいいのよ?なんか違和感あるし。」
「…………別にいいだろ、このままで。」
「んー。まあいいか。」
咲の家行くの何年ぶりかなぁなんて考えつつ、帰路に着いた。




