相棒のいない一週間 9
「まさか一週間もせずに破壊するとは…しっかし、変な壊れ方だね、万力にかけたりしたの?」
また医師のところに来ていた。壊れた腕を持って、帰り道に。
「まあ、色々あったんですよ……。」
「まだあの義腕は直ってないからまた換えの義腕になるけどいいかい?」
「良いですよ。」
「あー……中古っていうか、ボロいのだけど我慢してね?」
そういって渡してきたのは、確かに古さを感じる義腕だった。が、動きにはそこまで違和感が………あるわ、すっげー違和感あるわ。俺でもここまでなったら交換するわ。
壊したのは俺だし……。
「壊したのに金いらないって言うなら、これでも文句ありませんよ。ア……えっと、義腕は帰ってくるんですよね。」
「うん?もちろん義腕の修理は終わったら渡すけど。」
「では、ありがとうございました。さよなら。」
俺はそう言ってあとにした。
「まあ、君のような良質なのと手を切るなんて考えられないからね。今のところは。」
さて、翌日である。
例のごとく体育祭ムード全開の我がクラスは全力で皆、練習をするわけだ。
「そういえば、昨日、そこの公園の辺りから光がぶわっとでてたのよー。」
「え?まじ?そこらのガキどもが遊んでただけでしょー。花火とかで。」
なんて会話をする女子共もいますけど。つかそれ、見られてたらやばいんじゃないのかな?
なんて考えていても答える人はいるはずもない。口に出さねば、聞こえないのだ。
「昨日、何かあったの?」
一部の超能力者以外には。
「いやぁ、昨日は大変だったのだよー。」
篠原さんが話しかけてきた。…あ、ちなみに今、昼休み。そして俺はぐーたらしてるわけじゃないからね?色々してるからね?
「そうだねぇ。このタイミングで、基礎能力が足りないんだ!って全員巻き込んで全力疾走させられてるのに、呑気に人と話してる人の何処がぐーたらしてないと?」
今昼休み。それでグラウンドを全力疾走する(させられてる)人達である。絶賛全力疾走中!
……神社の階段のお陰でまだ強化なしで登ったのは数回なのであまり体力ついた訳じゃないけど、あまり疲れることも無くなったし。
「あんたら、話してないで黙って走れって。」
村上さんが篠原さんの横を走り抜けていく。
つか、何だかんだ、うちのクラス割と体力自慢多くないか?
結局、授業開始五分前の予鈴まで延々と走らされた。脱落者はいなかったらしい。まあ、疲れたら減速してたし、倒れるほどやれとは誰も言わないしな。
「さぁて、みんな集まったみてぇだな?」
んで、放課後、言われたとおりに来たわけですよ。練習は?って、この暗くなった空を見れば分かるだろう。
「つか、昨日いなかった女がいるな?お前誰だ?」
いや、お前の名前もわからんが?
「なんか、ついて行くってうるさいから連れてきた。」
もちろん、それは篠原さんだ。
「あ、耳とか尻尾とか可愛いぃ!」
そして篠原さんは目の前の女性の頭の上にちょこんと生えたぴんと立っている耳やらしっぽやらを見て、いつ動いたか気づけなかったが、気付いた時には接近して撫で回していた。
「な!?ちょ、やめっ」
向こうは放置しておこう。
「一応、事情はあの子に聞いたわ。ついでにサーシャにも。」
村上さんがそう言った。
「ん?つか、それだと、俺を呼んだ意味は?」
「色々と言いたいことが。例えば実際は魔法の作成方向って向き不向きがあるのよ。出来ないこともあるって事。」
「へー。」
「……だいたい無属性のものを属性化させるのってすごい苦労するのよ!?それをあんたは魔導師を知ってからそんなに経ってないのに成功させて!………全く、自分が異常なのは、わからないの?」
「突然方向が変わった!?」
異常、異常ねえ……。
「異常なのは右腕だけだろ。多分皆こんなもんじゃないの?」
「………一部の天才よ、無属性を属性変換させるのを一年以内に出来るのは。例えば………あれ?何かそう言う天才みたいな女性がいたはずなのに思い出せないわね…まあいいわ。それに、魔力の腕!」
「これがどうした?」
俺は魔力の腕をその辺に出す。
「これ使ってるときの魔力の減りは?」
「土塊にするとするけど、今は殆どないな。」
「それがおかしい。本来どんな魔法でも消費するのよ、ある程度は。」
「まあ、ファイアボールは消費するし。」
「そういえば、魔力の補給速度もおかしかった気もしてきたわね。何で気づかなかったのかしらね。」
「………あー……分かったよ、異常なんだな?異常なんだろ?」
「まあ、異常なのはおいて置いても、サーシャと交戦して傷を負わなかったってことは、充分魔導師と渡り合えるって事よね。と言うわけで脱線したけど本題!」
ガスっ!
目の前の地面に遠方から飛んできた木の枝が突き刺さる。
「こちらの杖を授けましょー(棒読み)」
「な、つ、杖?」
「あー、良かったじゃないですかー先輩。魔導師といえば杖!ですよね。」
ここに来て初めて喋った菊川。まあ、それは置いといて。
「属性魔法を使うなら魔力効率やら集中力やらが不思議と上がる杖!これがあった方がいいでしょ!ってことですよ、先輩。」
「まあ、うちの敷地にある神木が落とした枝をそのまんま使った杖ね。あげるわ。」
「………いいの?」
「いいわよ。」
いいなら貰う。何かただのふっとい枝にしては形が整っていて持ちやすい。長さは140センチ程だろう。思い切り殴れば鈍器にもなりそうなくらいには重い。
「ちょっと助けて咲ぃー!」
そう言いながら村上さんの後ろに回り込むサーシャとやら。
遅れてやってくる篠原さん。
「退いてよ咲ちゃん、退いてくれないとその子、もふもふ出来ないじゃない!」
息を荒くし、手をわきわきさせながらサーシャとやらに迫る篠原さん。気のせいかサーシャの髪がボサボサになっていたように見えた。
「ほら用が済んだみたいだし、帰るぞ篠原さん。」
取り敢えず引きはがそうと考えて、篠原さんの襟首掴んで引きずって帰る。
「そんなぁ、ちょっと、あと三百もふもふだけ!」
「三百もふもふって何だよ!?」
「一分間のもふもふが六十もふもふ!」
「っつまり五分かよ!?」
引きずって帰らせた。




