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神部家のメイド、サチエです。 〜清掃員からメイドになりました〜  作者: 杉崎 朱


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第64話 『出ましたね、色男の一面』


「サチエちゃん!買い物に付き合ってくれてありがとうね!どうも!」

「いえいえ、私も買いたいもの買えたのでよかったです」

「随分買ったのね?みんなの分?」

「いえ、基本全部私のです」

「まぁ!たくさん食べるのね!」



 翌朝



 合宿に来た時の大型バスで買い物にきたサチエ。

 時間は朝6時半。朝食の仕込みは終えている。今日これからが始まる前に、24時間営業のスーパーで追加の買い物を行う事にした。


 大量の天然水や飲料、食材を買い込むため、トヨさんの軽自動車では積みきれないと判断し、神部の運転手にバスを出してもらった。



「運転手さん、ありがとうございます」

「いいえ、大丈夫ですよ。神部の坊ちゃん方のお世話をありがとうございます」


「とんでもないです。・・・それはそうと、運転手さんお若そうですね?」

「あ、自分は今年で24歳です」

「若いっ・・!!」

「あらー!!もうそんなになるの!時が流れるのは早いわねー!」



 トヨさんの口ぶりが気になったサチエ。

「もしかして運転手さんって・・・」



「はい。実は、自分も神部の生まれでして。学生の時はみんなと同じようにここに合宿にきてました」

「なるほど、それで屋敷内の案内も無しだったのですね」


「慣れたもんです。自分たちの時はもっと人数が多かったんで、野球とかやってたんですよ。今でも門の横の物置にバットとかグローブが入ってると思いますよ。あとサッカーもやりましたね」


「もっと大人数だったんですか。それはそれは食事の準備も・・・」

「昔はもっと沢山人がいたわよ!」



 大型バスの前方だけを使い、世間話をしながら別荘へ戻った。







・・・———





「今日!頑張れば!明日の午前中は!!休みー!!!」



 長距離は走れるが好きではない紅葉。その紅葉がルンルンで楽しそうに走っている。


 昼食も食べて休憩を取り、午後の運動中だ。

 遠くまでロードワークに来た。



 大通りを走る。道路沿いにはお土産屋やコンビニ、飲食店やスーパーなど沢山あった。


「コンビニ入ってみたいなー」

 誰かがボソッとつぶやいた。


「あ?!俺今週のジャンプ買えないじゃん!どうしよう?!サチエ!」

 紅葉の戯言にすぐに反応した自転車に乗ったサチエ。

「大丈夫です。今朝の買い物でジャンプ買いましたので夜にお渡しします。心置きなく走って下さい」


「サチエ神ーーー!!」









「・・・落とし物だ」


 先頭を走る壱葉が足を止めた。


「近くに小学校あったっけ?」

 壱葉が拾った物を双葉が覗き込んだ。小学生が体育で使う紅白帽子だ。


「このあたりじゃ市立の第三小学校があったな。ほら、保育園と隣接してる」

 


「・・・今は夏休みだし、お盆なら尚更学校に行かないだろう?なんでそんなものが落ちてるんだ?」

 楓の眉間に皺が寄った。

「今日朝から風吹いてないよね?」

 櫻が風邪で飛ばされた可能性を否定した。



「もしかしたら夏休みの間も学校で学童をやってるかもしれないね?」

かずら・・・!お前合宿に来て初めて喋ったな?!」


「こら紅葉、茶化さないで」

「菊!お前もな!!」



「じゃあその第三小学校まで持って行こう。コース折り返し地点から1km先だ。そこまで行っても疲労は大して変わらないだろう。坂道ダッシュをやった訳じゃないから大丈夫だろう?」


 紅葉だけでなく、全員が『明日の午前中が休み』という事実が嬉しくて後押しさせる。

 これが終われば、夕食、そして夜食、そして午前は休み。


 ちょっと浮き足立って全員が小学校へと向かった。





・・・———




「ウチの生徒のです!ありがとうございます!!」

「よかったです。では我々はこれで」



 かずらが学童の責任者に紅白帽子を手渡した。


「当たってたな」

 へらっととした顔で双葉が葛に言った。

「うん、良かった」



「それにしても、随分と学童の児童が多いんですね?」

 なんとなく桔梗が聞いた。


「はい、ここはこの時期は旅行者が来るので、飲食店とかホテルで働いている保護者は今が繁忙期なんです」

「サービス業の方が結構いらっしゃるんですね」


「そうなんですよ、老舗が多いので。で、今は更にお盆の時期だから他所から帰省されるでしょう?小さいお店ですらこの時期と年末年始は混むんですよ。なので、預かる児童の数が多いんです」

「そうだったんですね。先生たちも、お疲れ様です」




「えっ?!ヤダッ!!そんなっ!恥ずかしい!!ありがとうござっ」

 女性が顔を赤らめて狼狽えた。



「出ましたね、色男の一面」

「あれを素でやってるからタチ悪いよねあの男。相手だいぶ年上だよ?」

 少し離れた所でサチエと双葉がコソコソと話す。





「んんっ!!横山くーん!!お兄さんたちが帽子を届けてくれたよー!!」

 顔を隠すために後ろを向いて校庭に向かって叫んだ。


 しかし、返事がない。


「あら?トイレかしら?」


「先生〜!横山くんたちなら、あっちにいっちゃったよー!」

「あっち?」



 一人の女の子が指差した先は、校庭のフェンスが一枚外れていた。



「え?!朝はフェンス閉まってたのに!!」

 先生は驚いた。


 女の子が言いたいのは、『建設中の”立ち入り禁止”の公園に()()()()()()()()()』という事だ。



「・・・双葉さん、昨日言ってましたよね。保育園と小学校に隣接する、『工事中の公園』があるって」

「あぁ、しかも、割と大きい遊具を入れる予定なんだよ」

「完成は?」


「まだ少し先・・・10月だったかな」

「お詳しいですね」

「そりゃちょっとは詳しいさ。だってあの公園は———」



「神部が携わっている公園だからな」

 楓の目つきが変わった。




「最終的には小学校と保育園から直接入れるようになるんだけど、この段階でフェンスが外れてるとかまずあり得ない。この公園の件に関して工事日程の詳細読んだ人いる?」

 櫻が全員に問いかけた。


「読んだ。これ、一応俺の親父の管轄だ」

 (たちばな)が前に出た。



「予定上だと今の工事は?」

 楓の問いに橘がスラスラと答える。


「お盆だってこともあって、先週から今週末までは工事は無い。休みだ。

 休み明けから遊具の設置や固定が始まる。だから、遊具や資材自体は搬入済みだ」


 つまり、沢山の固定されていない重い物が積まれていると言う事だ。



「行こう」

 そう言って、楓が校庭の先に向かって走り出した。



「え?!あのっ!?えっ?!!」

 突然走り出した一行に先生が驚く。


「失礼、私たちは隣の公園を作っている"神部"の者です。緊急に状況の確認でコチラから向かわせて頂きます。

 児童も探しますので」

「えっ!?あっ、はい?!よろしくお願いします?」


 最後に工事中の公園に向かうは、自転車に乗ったサチエだ。


「———なんか、嫌な予感しますねっ!」

「サチエそういうこと言わない!!言霊怖いからっ!」


 前方から大きな声で双葉に突っ込まれながら全員がフェンスを通り抜けた。






・・・———





 工事中の公園は広い。


 しかし、小学校から公園へ入ったは良いが人はいない。


「奥の方だな。誰か二人ここに残ってくれ。すれ違うこともないだろうが子供たちが自主的に学校に戻ったのを確認するのに居てくれ」

 楓が指示を出した。


「では、私が」

「サチエはダメだ。俺たちと来い」

「横暴」



「俺が残る」

「僕も残るよ」



 体格の良い羅漢らかん。そして、ピアニストのしゅうが立候補した。


「わかった。二人とも頼んだ。あとは俺と一緒に行こう。時計回りに公園を回る。さ、行くぞ!」

 言うが早いが全員先ほどのロードワークを変わらない速さで駆け出した。



 ———シャー・・・


「なぜ、あの二人が残ると立候補したのでしょう。そして、楓さんが素直に了承したのも不思議です。このメンツでは最善だったという事なのでしょうけど?」


 自身は電動自転車に乗っているのでそこまで疲れていないサチエが質問した。


「子供には表情の柔らかいやつがいた方が良いだろう。あと、もし何かあった時に腕っぷしが強いやつも一人いた方がいい。俺たちはある程度自分の事をわかってる。

 腕っぷしは羅漢が良いが、体格が良すぎるからもし子供が接触した時は少し怖がってしまう。その面、萩は見ての通り人畜無害の顔だ」

「癒し系ですね」


「だからだ。喋るのは此処までだ。何かあってからじゃ遅い」

 多少は疲れているだろうに、小学生たちを探しに真剣になった。



「(そりゃそうでしょうね。天下の神部が企画している所で事故があっちゃいけないですからね)」



 そう考えながらサチエは自転車のペダルを漕いだ。



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