第28話 《神部 薫子という女 1》
私、神部 薫子!
大企業の【神部】の家の生まれ。神部は一族経営で有名。その、経営の中核ではないけど神部の家に生まれた私は本当についてる!超ラッキー!
小さい頃からなんでも買って貰えた!勉強もできたからすっごく褒めて貰えたの!あと、姉妹とは私だけ顔が似てないの。私だけ似てなくて、私だけすごく可愛い。
家族で親戚の家に出かけても『薫子ちゃんは本当に可愛いわね』ってみんな言ってくれたの!!
学校のお友達も
「薫子ちゃんの家は”ダイキギョウ”って言うんだよね!すごいね!」
とか
「可愛いし、本当のお姫様じゃん!良いなぁ!」
とか
「あいつと結婚したら逆玉の輿じゃん」
とか、学校の人気の男の子たちも話してる。
そりゃそうよ!なんたって日本のトップの《神部》ですから!
周りの子たちの家もそれは頑張っているでしょうけど、ウチは桁が違うのよ!学校でも、どこへいっても私が一番注目されるの。
でも、小学校も学年が上がると余計なことを考える者が出てくるのよ。
・・・———
「ねぇ、薫子ちゃん。同い年の神部の子がたくさんいるって言ってたけど、この学校じゃないわよね?」
「えぇ。みんなは別の学校に通ってるわ?」
「どうして?」
「どうしてって?」
ある日突然、私の次に可愛いと言われているクラスの女の子が話かけてきた。意味わかんない。どうして楓たちがここではなく、他の学校に通っているかって?
「だって、薫子ちゃんっていつも『自分が最高』って言ってるじゃない?他の神部の子たちも同じ学校に通ってるって思ったんだけど、同じ学年に《神部》は他にいないじゃない?」
「そうよ、私だけがこの学校に通っているもの」
楓たちは別の屋敷に住んでいるから、その屋敷から近い学園に通っている。私とは別。でも、ランクはさほど変わらないはず。だって、私は可愛いし頭もいいし、私だって神部なんだもん。差は無い。
「じゃあ他の同い年の子たちはどこに通ってるの?」
「どこだったかしら・・・?確か、田舎じゃない方の天王子学園って言ってたような・・・うちと一緒の私立の一貫校だから別に同」
「嘘!!薫子ちゃんの親戚ってに天王子通ってるの?!」
「あそこって、政治家の子供とか、資産家の子供が通ってるマジでエリートじゃん!」
「えーー!!もっとすごい生活してる子がいるの?!同い歳で?!」
「それってマジですごくね?超羨ましいんだけど!」
教室の中で話が盛り上がった。
「てか、おかしいと思ったんだよな、神部なのになんでこの学校に通ってんのかなって」
「あぁ思った!庶民の生活を体験するために〜的な漫画みたいな教育方針かと思ってたけど!」
「じゃぁ、まぁそれって本家と分家みたいに分けられてるって事?」
「じゃぁ薫子は分家って事?・・・それって、俺らと変わらなくね?」
私が何も喋ってないのに話がひとりでに疾走する。どうなってるの。何?分家って?
教室の空気が変わった。私を見る目が変わった。
険悪になったり馬鹿にしたり冷たい目で見るわけじゃない。
みんな私に対して安心したような、親近感を持つような、優しい目をしている。
私のことを、”自分と対等だ、同等”だという目で見てきた。
見下されている訳ではないが、信じられないほど腹が立った。
違う、私が一番なの。私は特別なの!!!
・・・———
「パパ!!今日学校でみんなに言われたわ!!どうして私は天王子学園じゃないの?!将来神部を任せてもらうんじゃないの!?」
「あっちは勉強も大変でお金も掛かる。お前たちの学費は神部が持ってくれてるが、だからと言ってあちらの子供と同じほどは出しては貰えないさ。今の学校の学費だって、うちが払ったら結構なものだぞ?」
「パパは社長でしょ?!神部の中の社長でしょ?!お金いっぱいあるじゃない?!今まで欲しい者だって全部買ってくれたじゃない!!」
一流じゃなかった。私の通ってる学校。一流じゃなかった。私の学力。
「そうよ?神部の経営者なんて大変よ?そんなことしてたら学生の間はずっと勉強で楽しいことできないわよ?」
ママが話しに入ってきた。
「それほどまでにあっちの学校はお金が掛かるんだよ」
「じゃあ!!神部が出してくれるのは今の学校の学費だけでいいから!!足りない分はうちから出してよ!!転校したい!楓たちと同じ教育を受けたい!!中学校は楓たちと一緒にして!!」
「そんな事になったら、学校の帰りにお友達とプリクラ撮ったり、ファミレスとか、公園でみんなで喋ったりできなくなるぞ?」
「そんなのいらない!!」
お金なら家にあるじゃない。意味わかんない。
私は私立一貫校だけど、お姉ちゃんなんて市立の小中学校に通ってる。あんなのタダだから。妹は私よりお金のかからない私立の小学校に入った。なんでも、安いのに英才教育がなんとかかんとかとか言って、行事が沢山あるってからって言ってた。行事とか大事なの?
・・・———
「ねぇ、楓の学校ってどんなの?」
「え・・・?普通だけど?」
「普通な訳ないでしょ!!どうして私はそっちの学校に通えないのよ!!」
「それは俺に言われてもな」
「ねぇ櫻!!今日学校で何したの?!」
「今日は武道大会だったよ」
「で?櫻は?」
「・・・あーうん。・・・まぁ」
濁して言わない櫻。なんなのよ。初戦敗退かしら。
「櫻は優勝だよ。うちで一番強いのは櫻だから」
楓が代わりにピシャっと言う。何よ、優勝ならもっと自信持って言えばいいじゃない!!
・・・———
・・・———
結局、パパは頑なに私の中学校の編入を拒否した。
パパが初めて私の言うことを聞いてくれなかった。
「薫子のお嬢様キャラは中学校でも板についたねー!」
「普通嫌われるのに、薫子面白いから、編入組の子たちも好いてくれて良かったね!」
「私はお嬢様なの、いえ、本物のお姫様なの!」
「はいはい!」
「そうねー!薫子お姫様ー!」
「もう!馬鹿にして!!」
腹が立つけど、他に付き合いたいと思う同性の学友もそこまでいない。仕方なく小学校からの者と中学をずっと過ごしてきた。とても納得いかない。
でも良いわ!!楓たちと一緒にいる時間が増えれば、私は本当にお嬢様・・・お姫様になれる気がしてた。だって、一流とずっと一緒にいられるのは同じく一流だからでしょ?
私は可愛いし!絶対に楓たちの中に私を好きな男子が二人くらいはいるわ!櫻なんて、私を話す時はタジタジだもの!多分私の事好きよ?
櫻は今の会長の孫だって聞いた!それなら櫻と一緒になれればもっともっとお姫様に近づくし、まぁあっちの屋敷に住んでる人になら誰に見染めれられたって文句はないわ!
中学生になってから、彼らにつくメイドが不祥事だらけであまり続かないって聞いたの。でも、私は特別!だって私も神部だから!私にはチャンスがある!むしろあの屋敷の同級生は女子がほとんどいないらしい。だから、私が行くと華やぐわ!
あ、でも思ってることを双葉には悟られないように注意しないといけないわ。あいつはなんか鋭いのよ。小学校に入った時、トイレ借りるのが恥ずかしくて言い出せなかったのをバレたし、この間も『櫻にご執心かな?』とか耳元で囁くのよ!!
何?!双葉こそ私の関心が櫻に向いてて嫉妬?!とか一瞬思って多分それも含めてバレてそうだから厄介だけど。
メイドは続かない。屋敷に年の近い女子も少ない。
だからこそ、離れて暮らしている私の事は”女の子”って認識をするだろう。
同じ学校に通うことは許されなかった。でも、一流と一緒にいて、これからの一流を確実に手に入れるの!!私が一番可愛いんだから!!可愛い私がみんなにチヤホヤしてもらうの!!楽しみだわっ!
そう思ってたのに、中学校二年生の時に最悪な出会いを迎えた。




