13話
朝日が差し込むと今日は晴天だった。
近くのサイクリングコースへと5人で出かけた。
自転車レンタルもあって、二人用のを見つけると春は涼を誘った。
「これ一緒に乗ろうぜ!」
「へ〜面白そう。いいよ♪」
「怜は?」
「俺は一人のが気楽だ」
「そ、そうだね…行こっか?」
樹と聖も何かいいたげだったが、あえて聞いてこなかった。
昨日の痛みは何だったのか?
今も分からずにいる。
朝起きるとそばに怜と春が両サイドに寝ていた事くらいだった。
何も言ってこないから、そう深刻には捉えていなかった。
「おーい、そこのサイクリングの中に登山道ってのがあるから行っ
てみようぜ〜」
低い山として知られているらしい。
山道は少し険しそうだが、30分と書いてあるコースを行く事にした。
「結構急なんだね〜、ふぅ〜ちょっと息が上がるのは運動不足かな〜」
「涼は無理すんなよ?」
「えーー。年よりみたいないいかたやめてよ〜。」
「俺らよりは年寄りだろ?」
怜の一言にムッとする。
「いいもん、このくらい平気だもん。」
「足もと、気をつけろよ?」
怜が言うとなんだか余計に腹が立つ。
黙々と歩いていると頂上へと出た。
低い山と言っても上からの景色は絶景だった。
雲一つない晴天のおかげか、眺めは最高だった。
スタッフさんも、息を切らせながら上がってくるとみんなの見ている
景色を撮影する。
みんなで見る最後の景色。
それを理解しているのは2人だけだった。
「飲み物はいいか?」
自分のを涼に手渡すと口をつける。
「ありがとう。春はいいの?」
「あぁ、大丈夫だ」
自分のを涼の唇が触れたと思うとテンションが上がってきた春だった。
横目で冷たい視線を向ける怜に睨まれたが、そんな事気にも止めない。
「ここで休憩しておやつでも食べるか?」
「さんせー!」
春の提案に聖が飛びついた。
涼は少しまっててと言ってスマホに景色を写していた。
その横顔をカシャと怜のカメラが撮影した。
「こんな風に笑っていられたら…」
ポツリとこぼした言葉は誰の耳にも入っていなかった。
下山するとまたサイクリングコースに戻った。
お土産屋を見て、下町を散策した。
2日目の夜が終わりを告げて、最終日の撮影に入った。
「今日は少しお祭りの道具が収められている場所を巡ってから車での
帰宅となります。」
「はい。」
打ち合わせ通りに進んでいく。
見学も楽しそうに話していると高校生の団体とすれ違った。
「あれってジェニスのメンバーじゃない?」
「あ!そうじゃん!リーダーの涼くんもいるじゃん!ちょー可愛い」
「あのドラマ最高だったもんね〜」
「話しかけちゃう?」
カメラが回っている中で囁き声が聞こえてきた。
なんだがむず痒くて嬉しくなった。
手を振ってみると黄色い声が飛んできた。
「涼もドラマで顔売ったせいかファンが増えたんじゃないか?」
怜の言葉に照れると嬉しそうに微笑んだ。
「なんだか夢みたいだな〜って思っちゃう。俺なんかいつも目立たな
くて、ジェニスのおまけって思われてたのに…これからはみんなみ
たいに…なれるかな?怜や春と並んで立ってていいのかなって…」
「それは無理だろ…」
怜が零した言葉に一瞬で冷めた気がした。
「そうだよね…図に乗りすぎだったよね…」
「あ、いやっ…そうじゃなくて…」
「いいよ、もう。春、行こう〜」
春の手を握ると先を歩く。
怜の言った意味はわかるが、今はそれより涼が握った手が温かくて、嬉
しかった。
この手をいつまでも掴んでいたい。
もし解散しても、側にいたい…。
そう思わずにはいられなかった。




