12話
温泉から出ると女性達に囲まれてしまった。
さっきのテニスで一緒になった女性達だった。
男連れできていたようだったが、彼氏と上手くいってないのか
それともアイドルに弱いのかずっと話し続けている。
その間もカメラが回っている。
これはマジでヤバい。
グループの親睦を深める旅行企画なのに、怜だけが現地の女性との
イチャラブばかり映されては本当に良くない。
早く涼のところに行きたいのだが、これでは一緒に連れて行ってし
まう。
前に女の香水の匂いのベッドでしたくないと言われてから連れ込む
のもやめた。
今日は涼にべったりの春がいるせいで面白くない。
面白くないが、安心もしている。
涼を一人にはしないのなら、それが一番いいだろう。
カメラマンにあっち行けと合図をするが、一向に行ってくれない。
どうするか考えていると部屋へ行こうと言う話になって行く。
これはまずいと思っていた矢先、視線の向こうで誰かが倒れたのを
見つけた。
まぁ、ただの客だろうと思っていたが、急に胸騒ぎがしてそっちへ
駆けていった。
床に苦しそうにする涼を見つけるとすぐに抱き起こした。
発作?
今ここでか!?
即座に抱きかかえると部屋へと急いだ。
病院から貰っている薬がある。
発作を緩和するものだが、治すものではない。
鞄を漁ると、苦しそうにする涼の口の中に流し込む。
飲み込めないのかすぐに吐き出そうとするのを舌で奥に入れると口を
塞いだ。
飲み込むまでずっと塞ぐと、苦しそうにしながらも喉がゴクリと鳴っ
た。
『発作が起き始めたら、そう時間はないよ』
「マジかよ…うそだろ…こんな事って」
呼吸も落ち着きすやすやと眠る涼を眺めながらため息を吐き出した。
ロビーでは涼が倒れた事で大騒ぎになっていた。
怜がすぐに部屋に運んで行ったが、さすがに苦しそうだったので病院へ
連れて行った方がいいのではないかという意見が出ていた。
慌ただしくなったことで聖と樹もロビーへとやってきた。
春はさっきから戻ってこない涼を心配していて、ゲームにもならない。
「何かあったのか?」
騒いでいたスタッフに聞くとさっき涼が倒れたと聞いて春の目の色が
変わった。
「なんか発作でもあるんですか?すごく苦しそうで〜、医者に見せた
方がいいですよね?救急車呼びます?」
「それで、涼は?今どこにいるんですか?」
声を荒げる春に樹が落ち着くようにいう。
「これが落ち着いていられる事か!?」
「さっき怜さんが連れて行ってしまって…部屋じゃないかと…」
慌てて部屋へと走って行く。
部屋に着くと勢いよくドアを開けた。
布団で眠る涼の傍らで手を握っていた怜と目が合った。
「おい、怜…お前何か知ってるんだろ?涼が発作なんて起こした事な
いだろ?」
「…」
「何か言えよ!」
「この旅行企画だけは…普通にさせてやりたかったんだ」
「だけってなんだよ!もう、解散でもするって感じに言うなよ!」
黙ったまま怜が頷いた。
「もうこの旅行が最後だ…ジェニスは解散だよ」
怜の解散騒ぎは今に始まった事ではない。
前から何度も出ていた事だった。
それでも、涼が説得して今に至っている。
「そんな冗談は今はいい。それよりも…」
「本気だよ…もう、ジェニスをやってく意味もないだろ?」
怜の声は本気で言っているようだ。
「俺は認めない!涼がいる限り俺だけはずっと…」
「涼が抜けるんだ…俺じゃなくて、涼が辞めるんだよ…」
「何を言うんだ?涼がそんな事いう訳が…」
「言わないだろうな?でも…もう、こいつはアイドルとして活動はでき
ない。そんな事してたら…だから今は静かにしておいてくれ。今回だ
けは、楽しい思い出だけ作ってやりたいから…。それは春もだろ?」
「だったら…こんなところまで来て女遊びはやめろ。しっかり演じろよ」
「それはお前が涼にべったりくっついているから…まぁ、わかった。明日
からな!」
和解すると明日からの計画を練る事にした。
それ以上は詳しく聞かないのを条件に協力し合う事になった。
「終わったら話せよ!」
「気が向いたらな…」




