8話
それからは順調に回復していった。
片腕は骨がくっつくまで半年はかかるそうだが、顔の腫れは引いて行って、
身体のあざも薄くなっていった。
点滴ばかりだったせいか細かった身体は骨が見えそうにまで痩せた。
「今度番組の企画で2泊3日の旅行企画をやるんだ〜。」
「そうか…みんなには迷惑かけて…ごめん」
「そんな事言うなって。それにそこね結構有名旅館なんだって。温泉もある
んだよ」
「涼の身体には、ちょうどいいでしょ?」
「えっ…俺は…」
「一緒に行くんだよ。5人でって企画だし」
驚くと春を見た。
春も頷くと聖が嬉しそうに笑った。
今は片腕しか使えないが、それでもメンバーとのはじめての旅行企画は楽し
みだった。
事務所の関係上大きい病院へと移転させられて数日。
検査ばかりを受けさせられてうんざりしてきていた。
怜は見舞いにも来ない。
セックスできない自分には興味もないみたいに、毎晩女遊びに耽っているら
しかった。
そして珍しい訪問者が来ていた。
「母さん…どうして…」
「どうしてじゃないでしょ?こんな怪我して…もう帰っておいで。東京なん
かにいるから変な事件に巻き込まれるんだよ。地元おいで、涼介」
「ごめん…まだここにいたいんだ。」
親不孝と言われればそれまでだ。
我儘で東京でアイドルをやっているのだから。
そのかわり仕送りも家も全部涼が建てた。もちろんローンだが、それでも家族
の為と思って頑張ってきた。
それなのに、帰って来いなんて言われたくなかった。
「ごめんだけど…帰ってくれる?」
「…涼介!」
妹は学校があるからと連れてこなかったようだった。
今月のローンの引き落としが迫っていると思い出すと病院を抜け出した。
家に帰って来ると怜の部屋では声が聞こえてきた。
お盛んな場面だったのだろう。
そっと前を通ると部屋に入って通帳を探す。
「よし、と」
「何がよしなんだ?」
後ろに立っていた怜に驚くと転びそうになった。
「おいおい、こんなところで転ぶなよ?」
「えーっと、彼女はもういいの?」
さっきの声の事を聞くと一気に機嫌が悪くなった気がした。
「それでそっと帰ってきたのか?てっきり混ぜてくれって言うと思った
んだが?」
「そ、そんな無神経じゃないよ!俺はこれで…」
「ここまで来たんだ、ヤってくか?」
一瞬ドキッとしてしまう。
心臓の音が大きくて早くなってきた。
「冗談でしょ?女性とヤった後に男を抱く気?」
「そうだな…お前骨だらけで柔らかくねーもんな?」
「…」
そうだ、女の身体とは違うんだと思い知らされる。
それでも、いい。
それでも…抱きたいって言って欲しかった。
何故かそんな事で涙が出るなんて。
悔しいな…。
「おい、泣くほど嫌かよ。勝手にしろっ!」
怜が帰っていく。部屋を出て自分の部屋にもどってしまう。
行かせたくない。
ドアを出たところで服の裾を掴んでしまっていた。
離さなきゃと思っているのに手が硬く握り締めると離せない。
「なんだよ?どーしたいんだ?」
「これは…違う…あれ?なんで…離れないんだろう…」
怜が振り向くと怒ったように冷たい声が降ってくる。
「溜まってるのか?抜いて欲しいって事か?自分だけ?」
「そんなっ…そんなんじゃ…ない」
「だったらなんだよ?離すか、俺に抱かれたいのかさっさと選べ。自分だけ
抜いてくれなんて図々しいぞ?」
声が冷たい。
きっと呆れているのだろう。
怖い、呆れられるのも、飽きられるのも。どっちも…怖い。
膝をつくと怜の股間に顔を擦り付けた。
さっきまでヤってた割にはすぐに硬くなっていく。
ズボンから取り出すと久し振りに口に咥えた。
怜の匂い。汗と精液の臭みの混じった味。
口の中いっぱいに頬張ると舌で裏筋から先端にかけて舐る。
何度もしていたせいか、身体が覚えている。
荒い息が吐き出される。
怜も気持ちいいのだ。
口の中に生臭い体臭がいっぱいに広がった。
飲み込むと喉をどろっとした液体が流れていく。
これで…抱いて貰える?
見上げるとその潤んだ瞳に怜の顔が間近に感じた。
抱き起こされると風呂場へと運ばれた。
「えっ…ちょっ…」
「洗わないとだろ?自分でできるっていうのか?」
「いや…それは…」
片手が使えないのだ。
怜の手で洗われると恥ずかしくて仕方なかった。
さっきまで女が寝そべっていたベッドに運ばれると香水の香りがした。
「ここでするの?」
「なんだ嫌かよ」
「香水の匂いが…俺の部屋じゃだめ?」
「そう言う事か、いいぞ。涼が自分で何もかも見せてくれるのならな?」
そう言われると一瞬迷ってしまった。




