6話
涼の帰りが遅い事に、心配でいてもたってもいられないと春はエレベーター
へと向かっていた。
8階を押すとランプがつかず、6階までしかいけなかった。
「これ、どーなってんだよ?確かに8階だって言ってたのに…」
「どーした?」
意外な事に怜が声をかけてきたのだ。
「いや、8階に行きたいんだがエレベーターが動かなくて…」
「あぁ、8階は個人フロアだからカードキーがないといけないぞ?何で8階
なんかに行きたいんだ?」
「これ…涼がいるらしいんだが戻ってこないんだ。」
LINEを見せると顔色を変えてすぐにロビーへと向かった。
「おい、8階へのカードキーを出せ!すぐにだ!」
「お客さま、8階は…」
「分かっている。分かって聞いてるんだよ。黙って出せ!」
脅すように声を荒げるとすぐに取り出してきた。
それを持って上がると8階のボタンのランプがついた。
「本当だ、こうなってるんだな〜でも、なんでそんなに焦るんだ?」
「巽が連れてったんだろ?あの野郎が何しでかすか分からんだろ?」
「…?」
春は何に苛立っているのか分からなかった。
だが、8階について部屋に入ってからその苛立ちの理由を知った。
部屋を開けると薄暗く電気をつけた瞬間に目に入ってきたのは蹲る巽と
ベッドの上で全裸のまま動かなくなっている涼の姿だった。
全身殴られたのかあざだらけで、胸や太ももには無数のキスマークであろう
鬱血が残されていた。
怜は巽を掴み上げると殴りつけた。
「おい、何してんだ?涼には絶対に手を出すなと言ったよな?聞こえてねー
のか?」
何度も殴りつけるが、泣くだけで意味がない。
「何でこんな事したんだ?ちゃんと答えろ!」
「涼さんが…汚されたと思うと…グスッ…許せなくなって…殴ったら…痛そうで
でも、それでも俺の事気遣ってくれて…それが悔しくて…ズズッ…見るなって
思って…殴ったら…動かなくなっちゃっ……目を覚さないし…もう、どうして
いいか…」
泣きながら言う事ではない。
明らかに強姦目的で、言う事聞かないから殴った的な理論だった。
「そんなふざけたことを…」
春は拳を振るわせると涼を抱き起こした。
ひんやりした身体を抱き寄せるとさすってやる。
「涼…お願い…起きて…」
消え入りそうな声で話しかけるが冷たくなっていく身体を抱きしめる事しか
できなかった。
怜は救急車を呼ぶと適当な服を取り出して着せる。
まさかアイドルが全裸で暴行受けた状態で運ばれるなんて事は避けたかった。
抱きかかえたまま下の階へと向かう。
春は自分の上着を涼にかけると顔を見えないようにした。
怜に抱きかかえられたままロビーを過ぎてサイレンを鳴らして駆けつけた救
急車へと乗った。
春はその場に残ると怜が付き添っていった。
「病院に着いたら連絡する」
「分かった。聖と樹には…」
「知らせた方がいいが…今はやめておけ。暴れられても困る」
怜の判断に任せると涼は先に帰ったと言うことにした。
会場へと戻ると同じく聖と樹も涼の行方を探していた。
「あ、春!涼知らない?まだ帰ってきてないよね〜。」
「あぁ、それなんだが…ちょっと用事があって帰った。だから心配しないくて…」
「嘘だろ?それ…」
聖の言葉にドキッとした。
「春ってさ全然そんな顔してないじゃん?今の顔色見たことある?すっごく真っ青
になってる。涼に何かあったんだろ?隠さず言えよ。仲間だろ?」
「そうだぞ、聖でも分かるくらいだ、俺にだって言わなくても分かる。春…全部話
してくれないか?」
「…それは……」
言葉が出てこなかった。
さっきまで見ていた画像が思い出すだけでも胸が苦しくて涙が溢れてくる。
「さっき救急車が来てただろ?それに関係あるのか?」
樹の勘は鋭かった。
春は頷くとどうやって話そうかと考えているうちに怜から、連絡が入った。
○○病院に運ばれた。
面会に来るなら早くしろ!
メールを二人にも見せるとタクシーを拾い急いで向かった。
病室に着いた時には廊下に怜が待っていた。
「おい、こいつらも来たのか?」
「うん、嘘つけなかった…。」
「まぁ、いい。中にいるがまだ目を覚ましていないから静かにな。」
聖は何か言いたげだったが、何も言わずに病室へと入った。
個室のせいか涼だけしかいない。
ベッドに横たわる涼を見て、一瞬言葉を失った。




