2話
一瞬眉を顰めた。
「ふざけんな!」
「聖…」
「君はこのグループのリーダーだそうだね?君さえ言う事を聞いたらって思え
ばなんでもやるかね?」
「断ります。俺達は正々堂々とダンスで勝負しに来てるんです。みんなも同じ
意見だと信じてます。」
「当たり前だろ!涼は俺たちのリーダーなんだ、そんなふざけた事するかよ!」
怜も、春も、樹も頷いてくれた。
ズルなんかしない。それがジェニスだと。
「質問は以上だ。満点の回答だったよ。稀にいるんだよ、審査員と癒着しようと
する愚かな芸能人がね。芸能人ってのはいつもやらせの中にいるせいか自分の
力に頼らず、お金か身体でなんとかなると思っていてね。少し不快なおもいを
させてしまってすまなかった。では、気を取り直して曲を頼む。」
曲が流れると自分の位置に付く。
そしてダンスが始まる。
鏡があるせいかいつものレッスン場を思い出して、気が楽になった。
いつも通りできる。
テンポも合ってる。
タイミングもいい。
これなら…。
いい感触を感じながら最後まで踊りきった。
そのあとは何も言われず控室へと戻った。
「あの質問ひでーよな?俺でも優勝したいなら全裸になれって…なれる
かっつーの!バカじゃねーの?」
「それは聖の意見だろ?他のアイドルは違うかもしれないぞ?」
「ん?どう言う事だよ…?」
理解出来ていない聖に樹が説明をしだした。
そしてこの前のクイズ番組に出た時の事を話してきた。
「俺ら2位だっただろ?1位は圧倒的に強かったよな?あれってなんでか
知ってるか?」
「そりゃー物知りだったんだろ?それか、涼みたいに調べてたとか?」
「解答を見てたんだ」
「…はぁ〜〜〜!!そんなのズルじゃん!」
聖の声に怜も涼も、春でさえ笑っていた。
「出来レースだったんだよ。」
涼が答えると樹も頷く。
「どうやってだよ?」
「それは…楽屋を回って挨拶してた時に、回答を手渡してたのを見たんだ。
1位だけだったから俺達が2位に入れたけど、他のグループにも同じ事を
されたら、俺達は最下位だってあり得るんだよ。」
「そう言う事だ。力が有れば、コネが有ればなんでもできる世界なんだよ」
黙ると頬を膨らませると聖が漏らす。
「汚ったねーよ!そんなんインチキじゃんよ!」
「そうだよ、それが俺達がいる世界なんだ。それでも俺は…誠実でいたい。誰
かをはめたりしないで、自分に正直でいたいんだ。もしかしたらさっきのを
断らなかったら優勝は確実だったのかもしれない。でも…俺はそんなの…。」
言いかけて春が止めた。
「俺は嫌だ。実力でもぎ取ってやろうぜ!」
「そうだよ!」
頷く樹も賛同してくれているようだった。
「まぁ、俺に言われてたら脱いだけどね〜スタイルは一番よくて、イケメン
だろ?涼の貧弱なもんなんか見たって萎えるだけだろ?みっともねーし…」
怜の肉体自慢は今に始まったことではなかった。
雑誌にも全裸の後ろ姿を掲載したほどで、あの時は本当に全裸での撮影だっ
たと語っていた。
そのみすぼらしい身体を毎日抱いてるやつに言われたくはなかった。
が、それは口には出さない。
ただ睨むだけで顔を背けた。
聖は呆れるように話を変えた。
「なぁなぁ、どうなったんだろう〜」
「それはもうすぐ答えが出ると思うぞ?」
樹の言葉通りに控室にスタッフがやってきた。
「お疲れ様でした。夜の生放送にて決勝を行います。選ばれた5組だけの
参加となりますので時間と場所はこちらに…。」
紙を受け取ると予選通過と書かれていた。
「やった〜、優勝もできるんじゃねーか!俺達息ぴったりだし〜」
純粋に喜ぶ聖が羨ましかった。
今度は生放送なのだ、緊張しないはずはない。
荷物を纏めると別の会場へと移動する。
紙に書かれている会場までは少し時間がかかる。
「マネージャー、すいません。予選通過したので地下の駐車場までお願いし
ます。次の会場は○○にある○○○で生放送だそうです。はい、そうです」
事情を言うとすぐに来ると言ってくれた。
「地下の駐車場で待っててって。移動しよう」
「あー。結構簡単だったかもな〜」
「聖黙ってて、落ちた人もいるんだから。ここでは言っちゃダメだって」
樹の指摘もあながち間違ってはいない。
予選通過した人にだけ次の会場を教えたと言うことは、それ以外の人は
そのまま帰されるということなのだから。
周りの視線が痛い。




