第二部 1話
ダンスイベント本番も近づき、涼のドラマ撮影も終盤に差し掛かった。
やっと休みを貰えて、怜と一緒にいる。
ダンスイベントの為の練習を兼ねて久し振りにメンバーが集結する。
前回、春と気まずくなってしまったので、今日こそは仲直りしたい。
「今日は大丈夫か?」
「ダンスイベントの練習だからね〜気合い入れないと。怜もちゃんと
覚えてる?」
いつも通りの涼の態度に少し安堵した。
昨日の異常なほどの行動は、いつもの涼からは想像もつかなかった。
そして目が覚めてからは、いつもの涼に戻っていた。
メンバーの前では『命令』はしない。
二人きりになった時だけの脅し文句だった。
「おはよう〜聖、樹〜。」
「涼、この前のごめんな?俺何も知らなくて…」
「ん?気にしてないよ?俺の方こそ隠しててごめん。みんなに心配かけ
たくなくてさ〜」
「聖もバカだが、涼もだったとはな…俺たち同じグループだろ?なんで
も話して欲しい。それに春が心配していたぞ?」
樹は涼の頬をぱちっと軽く叩くと春の事を出してくる。
「そうだね…ちゃんと話しをしないとね!」
「元気になったようでよかった…」
照れ隠しに笑うと怜と視線があった。
春が来ると、今日はレッスンの先生を交えて行われた。
少しハードだが、踊れなくはない。
みんなもついて行けているようだった。
いつものように、歌って踊って、というわけにはいかず。
ダンスが見せ場なのだ。
もう、日にちも少ないのでどこのグループもラストスパートに入ってい
る頃だろう。
休憩に入ると春を追うようにレッスン場から出て行く。
「春〜!待って…この前は…ごめん」
振り返った春は少しやつれた気がする。
「あのさ…俺は…」
「身体はもう、平気なのか?」
「う、うん。最近はちゃんと食べてるし…」
「そうか…俺さ…気持ち悪いかもしれないけど…涼の事が好きだ。」
「うん…」
「だから、涼の事はなんでも知ってるって思ってたんだ。だけど知ら
ないうちにマンション引き払ってて、大家さんからは誰かに連れて
行かれたようだったって言われて…もしかしたらって…」
「ごめん…急な事だったから…」
春は落ち着いたように話すがやっぱり手が震えていた。
涼は親友の震える手を握ると自分の手で包み込むと胸の前に当てる。
「俺はさ、春がいてくれてすっごく支えになったんだよ。だから、自分
を責めないで…、これからも一緒にやっていこう?」
真っ直ぐ見つめるといつのまにか春に抱きしめられていた。
強く握られた腕の中で春の温もりを感じる。
「俺、涼がずっと好きだから…」
「うん、俺も春の事大好きだよ。一番の親友だと思ってる。」
「…親友か…そうだな。俺もだよ」
少しすると春は涼を引き離すと頭を撫でて、頬に触れた。
そして唇を指でなぞるとにっこりと笑って見せた。
「ちょっと便所行ってくるわ。先に戻ってな?」
「うん、待ってる!」
いつものような…俺の好きな涼でいて欲しい。
今はまだ分からなくても、いつの日か俺の気持ちに気づいてくれる
だろうか?
夜までレッスンは長引くと完成形に近づけた感触があった。
そして本番当日を迎えたのだった。
各地からこのイベントの為に集まった人達で会場はごった返していた。
アイドルグループも出るとあってか、取材陣が陣取っていた。
「あ!ジェニスが来ましたーー!今日はどうですか?自信の程は?やっぱり
優勝間違い無しですか?」
「俺達も頑張るので応援してね〜」
元気に聖が手を振りながらコメントを返す。
涼はそんな聖を眺めながら控室へと向かった。
5人揃って控室で待機すると、順番に呼ばれて披露していくようだった。
「せっかくだから皆んなが見ている前でダンス披露したいよな〜」
「仕方ないよ、すごい人数だったし。選考が通れば後で観衆の前で披露
できるし、テレビ放送もされるって言うし。頑張ろう!」
涼はみんなに気合いが入るように励ます。
ドアをノックする音がして、スタッフが呼びに来た。
「ジェニスさーん、出番です。Aの部屋へ来てください〜」
Aと大きく張り紙がされた部屋へ通されれるとそこには数人の審査員と後ろ
には大きな鏡があった。
「まるでレッスン場みたいだな〜」
聖の呟きに苦笑すると、審査員へと頭を下げる。
「No.28。グループ名『ジェニス』です。よろしくお願いします」
丁寧な挨拶とルックスもいい青年達に審査員の手が紙に何かを書き加える。
「では、ちょっと質問いいかな?そのあとそこで踊ってもらうからね」
「はい。」
「君達は人気アイドルな訳だけど、このダンスイベントに出て何をするつ
もり?」
質問の意味をとらえかねる質問だった。
「それは、もちろん優勝してビッグになる!」
聖のストレートな回答に笑いが起きた。
「他の人もそれでいい?」
「いいえ、俺達には通過点に過ぎないです。これからきっといろんな事を
やってく上で歌も、踊りも、芝居も自分にできる可能性を知っていくに
はその道を極めてきた人と競い合うのが一番だと考えています。なので
優勝なんて恐れ多いかもしれないけど、チャレンジする事が大事だと思
ってます。それでも精一杯の自分達見せてその評価がどれくらいなのを
知りたいと思ってます」
涼が話すと頷く人の姿もあった。
「君は頭が回るんだね?なら、最後の質問だ。もし、今ここで全裸になって
床に這いつくばったら優勝させてあげると言ったら、やるかね?」




