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スキャンダルアイドル  作者: 秋元智也
27/55

27話

目を覚ますと、温かさに瞼が閉じようとしてモゾモゾ動く手の存在に

飛び起きた。

今も尻を撫で回す怜の手を避けるとベッドから降りた。

腰が痛いのはきっと昨日の行為のせいだろう。

シャワーを浴びるとキッチンにある食材で朝飯を作る。


洗面台を眺めると身体中に赤い鬱血が浮かんでいた。

しかも一個ではない。

無数の数に顔が熱くなる。


これは…どういう気持ちで付けたのだろう?

勘違いしても…いいのだろうか?



怜は朝起きると普通に涼の作った食事を食べた。

昨日の事は何もなかったかのような普通の態度に、淡い期待は消え

失せたのだった。


「明日からドラマの撮影にはいるんだろ?送ってこうか?」

「いや…いいよ。怜はテレビ番組があるだろ?自分で行けるから。

 それと…昨日はごめん。取り乱した…」

「聖と樹はビデオ預かっておくってよ。練習も完璧だって言ってたぞ」

「そう、ありがと…」

「ドラマ中はナカには入れない、それでいいだろ?」

「っ…いいよ。そんなに気を使わなくても…俺の身体でよければ好きに

 使っていいから」


怜は頑なに手を出して来なかった。

疲れて帰って来ると、部屋に連れ込まれるが素股で擦られるとすぐに部屋

から追い出された。


それも毎日のようにそれだけしかしてこなかった。


ドラマの撮影中は巽と一緒という事で、凄く新鮮だった。


「涼さん!今日の昼はカレーですって!一緒に食べに行きましょう!」

「そうだな…ちょっと待ってくれるか?」


台本に書き込むと一緒に食事に向かった。

どれだけ食べても無料なのでドラマの撮影中は快適だった。


「あれ?首のところ、なんか赤くないですか?」

「ん?虫にもで食われたかな〜?」


ぽりぽりと掻く涼に巽は険しい顔つきになった。

どう見てもそれはキスマークで、わざと見える場所につけたとしか思え

なかったからだ。


「涼さんって一人暮らしでしたっけ?」

「ん?…まぁ〜そうだな…」

「なら、今度行ってもいいですか?」

「だ…だめだ!…えーっと、汚いし、狭いからさ〜」


不自然にならないように断ろうとして失敗した。

動揺しすぎたせいで余計に怪しまれてしまった気がする。

まさか、怜と一緒に暮らしていて、セックスまでしているなんて、絶対に

知られる訳にはいかない。


「あの〜、涼さんって今付き合ってる人っているんですか?」

「ん?いないけど?」

「あー。そうなんだ〜、なんかよかったって思って…へへへっ」

「俳優だと大変だろ?女優と付き合うにも一般人と付き合うにしろ、結構

 疲れそうだな〜俺には無理かも…」

「誰かと付き合ったりは?」

「今はしないよ。誰とも付き合う気はない…ほらっ戻るぞ!」

「はい…」


何か言いたそうだったが、あえてそこを追求するつもりはない。

同じグループでも秘密の一つや二つあってもそれを聞き出すつもりはない。

実際、涼だってみんなに話せない事はあるので、そっとしておく。


聾の人に直接合って色々と聞けたので役になりきる上で勉強になった。

これも全部松島プロデューサーがアポをとってくれたおかげだった。


 (期待に添えるような演技をしなきゃ…)


心を落ち着かせるように、深呼吸をして撮影に臨む。

主役の涼の役は初めから耳が聞こえない訳ではない。

初めは健常者だったのが、イジメにあって、殴られた拍子に脳の損傷をして

しまう。

日に日に聞こえなくなっていく葛藤を描くヒューマンドラマだった。


「次のシーン行きまーす!」

「はい」


雨に濡れて感情を殺す主人公の友人役の巽が寄り添っていくシーン。

ここは初期の見せ場になる予定だ。


全く聞こえなくなると、彼女の事を諦めてその街を去ろうとする主人公を引き

止めると静かに涙する。



「俺達は親友じゃなかったのかよ…なんで勝手にいなくなろうとしてんだよ…」

「…僕には、もう君の声を聞くことはできない…美幸も、僕から離れた方がいい」

「だから…勝手に決めんなよ!俺は…俺らはずっと…親友だろ?そう思ってるの

 は俺だけなのかよっ…」


後ろから抱きしめられるとその暖かさを感じながら主人公の目から涙が溢れて

くる。


台本通りに泣きのシーンを演じると雨が降ってくる。

次第に強くなり、カメラが全体を撮る為に引いていく。

上から横からと周りを回るように全角度から撮影されて、それまで静止状態になる。


「はい、カーット!」


監督の声で肩に力が抜ける。


「涼くん、今のいいね!感情をあまり出さないのに、しっかり伝わったよ〜」

「ありがとうございます」

「さすが、涼さんだな〜」

「褒めても何も出ないぞ?」


共演者同士仲が良さそうだった。

恋人の美幸役はまだ駆け出しの女優を使っているせいか少しリテイクが多い。


涼も、巽もミスが少ないせいか、一緒に絡むシーンは女優のせいで何度も取り直す

事になった。


「すいません。すいません。私ばっかりこんな…」

「いいよ、気にしないで。少し落ち着こうか?焦ってたらいい演技もできないし…」


涼は飲み物を取って来ると手渡した。


「あったかいもの?」

「うん、撮影中はその方が落ち着くから。焦らなくてもいいからさ〜」

「そういえば、涼さんっていつも温かいもの飲んでますよね〜」

「そうだね、身体を冷やすとミスしやすくなるからかな…」

「ヘーそうなんですね〜。俺は場数っすかね〜」


女優とも打ち解けると一緒に話す事が増えた。


携帯番号も交換してこまめにLINEのやりとりをする様になっていた。


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