25話
レッスン場は5人の熱気で溢れていた。
今度行われるダンスイベントは大きい会場でやるビッグイベントだった。
ダンスと言ってもいろんなジャンルがあって、ジャンル毎に採点方法が違う。
涼達が出るのはヒップホップのジャンルで、いつも踊るやつに得点が高くな
るように構成を考えればいいのだ。
合わせる曲は自分達のデビュー曲を使うので、ダンスは全くの新しいものに
しないと客が退屈してしまうのだ。
「うーん、なかなかうまくいかねーな〜」
「ここは、このターンをタタン、タンターンで、こっちに向くとわかりや
すいかな?」
「涼はいつもなんでもできて羨ましいぜ〜涼みたいに産まれたかった〜」
「聖はその容姿と目一杯自分を可愛く表現できるんだから、それを活かさな
いとね?俺は聖の事、すっごく羨ましいよ?」
「本当?なら、もっと頑張らなきゃな!」
単純な聖は誉めれば伸びる。
すぐに怒るし突っかかるが、それもいいところでもあるのだ。
「ちょっと休憩しようか?」
先生からの見本ダンスはビデオに撮って送られてくる。
それをあらかじめ涼が見て、踊れるようになってからみんなに教える。
涼の負担はいつも誰よりも大きい。
トイレに行く涼の後を追うように春も行くと、やっと二人きりになれた。
出てきた涼に声をかけるとその目を真正面から覗き込んだ。
「あのさ…さっきはごめん。疑う気はなかったんだ…」
「うん、もういいよ。大丈夫だから…春退いてくれる?」
「まだ話は終わってない!」
逃げようとする涼に声を荒げてしまったことに、春は苛立ちを抑える方法を
知らない。
「俺は涼に…」
「春…?」
「何をやってんだ?邪魔だ!」
怜が目の前で睨みつけると春と涼の真ん中をわざわざ通り過ぎた。
「春、どうしたんだ?」
「涼…最近何か嫌な事とかないか?無理矢理何かをさせられたりとか…あり
えないところに何か突っ込まれたりとか…ないか?」
「春?何を言っているか分からないんだけど…どうしたの?」
「いや…えーっと。あのだな…あーーー」
言葉を選びながら言おうとすると、なかなか言えないでいた。
「おい、まだそこにいる気か?」
トイレで用を足した後で帰ろうとする怜に再び話は遮られた。
怜が春を睨みつけると涼の腕を掴むと引っ張っていく。
「怜…?ちょっと…痛いって!」
「怜、お前涼を雑に扱うな!」
「ならお姫様抱っこで運ぼうか?前にベッドに運んだみたいにされたいか?」
「…/////」
一瞬、春には話が見えなかった。
ベッドに運んだ?
怜が、涼を?
どうしてそうなったんだ?
「お前涼の事…許さないぞ!?」
「前に倒れた時はお前ら誰も居なかったからな〜。病院まで運んだんだが?
倒れた理由は知ってるのか?知らないだろう?」
「怜…待って!言わないで!」
咄嗟に涼が大声で止めるので余計に気になった。
倒れた?病院に運ばれただって?そんなの知らない…。
「なんでだよ?怜、お前は知ってんのかよ!」
「あぁ、春は涼の事を何にも知らないんだったな〜。こいつの借金の事も。」
「あっ…怜…なんで知ってるの?」
涼の顔色が悪くなっていくのは見ていれば分かる。
「酷い…なんで話すんだよ!」
「隠しておくつもりか?食事だってまともに摂ってなかっただろ?一日一食で
耐えられると思ってたのか?倒れて当然だろ?」
「涼が…借金?そんなに大変なのか?どうして言ってくれないんだよ!」
「言える訳ないじゃん。俺には父親もいないし、まだ高校生の妹もいるんだ。
少しでも楽させてやるにはそれしかないんだよ。もう、ほっといてくれよ!」
涼はそのまま荷物を持つと出て言ってしまった。
レッスン場に戻ると、聖と樹が事情が分からず混乱していた。
「なぁ〜涼、どうしたんだ?泣いてたけど…。もしかしてまた怜が?」
聖は怜を睨み付けたが、春が首を振った。
「俺が悪いんだ。聞いちゃいけない事を聞いちゃったから…俺は涼が苦しい時に
何もできなかったって思ったら…悔しくて、なんでも言って欲しかった。」
「あいつは誰にも話さねーだろ?」
「お前に話したって事が悔しいんだよ!」
「あぁ、それか…家に来てたローン会社と通帳の出金記録を見たからな〜」
「おい、それって…」
怜の言葉に樹が訝しむ。
「ローンってなんだよ?最近給料上がったのに、苦しいのか?」
「まぁ〜食事減らしたせいで倒れたのに、お前らは気づきもしなかったって
事だ。あいつは自分から言わねーからな〜」
「そんな事知らなかった。この前家に行ったら、もう引っ越したって言われ
たんだ…、住むところさえないのかもって思ったら…」
「それ、どういう事だよ!だったら涼は今どこに行ったんだよ?」




