21話
春が涼の部屋を訪れるのは久々だった。
近くのマンションに住んでいるのは知っている。
同じアイドルグループになる前は頻繁に行き来していたが、今はそれどこ
ろじゃなくなった。
怜ほど高いマンションには住めなくてもそれでもセキュリティのいい場所
に引っ越すべきだと何度も言った覚えがある。
しかし、それも聞き入れず安いマンションに住んでいた。
少し緊張するが、手土産を持つと階段を上がる。
4階建てなのにエレベータすら付いていない。
最近は給料も増えて来たし、少しくらいはと贅沢できるようになった。
昔に涼へプレゼントしたジャンパーをよく着てくれているのが嬉しかった。
靴も春がプレゼントしたものだった。
物持ちがいいのか、春がくれたので捨てられないのか?
どっちにしても春には嬉しい事だった。
久しぶりに涼の部屋の前に来ると表札がなくなっていた。
「あれ?アイドルになってから外したのか?」
疑問に思いながらチャイムを鳴らす。
何度鳴らしても、反応はない…。
さっき電話に出たのだからいるはずなのだが、熱で倒れたのか?
一瞬嫌な予感がよぎるとドアを掴んだ。
鍵は…開いている!?
すぐに部屋の中に入ると玄関に靴を脱ぎ捨て中へと入った。
そこには涼はおろか何もなかった。
家具も、何も…。涼のいた痕跡さえなくなっていたのだった。
「涼…なんで…」
慌てて電話をかけようとすると見知らぬおばさんが入ってきた。
「あんたここに住みたいのかい?家賃は安くしとくよ?」
「あのっ…ここに住んでいた人はどうしたか知っていますか?」
「あーいきなり出て行っちまったのさ。礼儀正しい子だったんだけどね〜。」
「どうしてですか?何が…」
「そんなの知らないよ。いきなり解約金を払ったと思ったらその日のうちに
引っ越していっちまったのさ。なんか立派な子が一緒にいたね〜、誰だった
かね〜…挨拶もせずに連れられていっちまったからね〜」
大家の話では自分の意思ではないっぽかった。
誰かが連れて行った?
「それって若い男ですか?」
「そうさね〜、あんたくらいの歳じゃないかい?いつもは温和な子なのに、何か
声を荒げてたけど、引きずられるように出ていっちまったんだよ〜。変な事件
に巻き込まれてないといいけどね〜」
「ありがとう…ございます」
おかしい、流石に最近の事らしい事はわかったが、見当もつかない。
涼に聞けばわかるのだろうが…もし変な輩につれて行かれたのならきっと…身体
の関係も強要されているのかもしれない。
もしかしたら、もうAVへの出演も果たしているかもしれない?
春は気になって今日も眠れそうになかった。
今日はCM撮影とあって初めて、誰かの代わりではなく涼という個人を指名され
た事に喜びを感じていた。
仕事の時は怜も無理をさせないつもりなのか夜はそこまでしつこくしてこなかっ
た。
あの日以来、玩具も使うが大体は素股ではなく中に入れてくる事が増えた。
男同士のセックスなのだが、最初は怖くて痛さに反抗もしたが、今はさほど嫌が
りはしなくなった。
何を言おうが、逃げられないし逆に抵抗する方が無駄に体力を使うだけだと判断
すると抵抗するのもやめた。
ちゃんと後ろも慣らしてからしか挿入しないし、痛いというより最近は感じすぎ
てしまい、自分の身体じゃないみたいに気持ちがいい。
いつまでも続く関係じゃないから、そのうち飽きるだろうと思うと割り切りもつ
いた。
一緒に住んでいても、部屋代も受け取らないし食事へ行っても勝手に支払って支
払われていて涼は何も払ってはいない。
怜はどういうつもりなのだろうか?
身体で支払えとでも言っているのだろうか?
確かに、対価として毎日求められているので、それでいいのかとも思うが、どう
しても気持ちが悪くて仕方がない。
「怜、家賃は…」
「お前が払えると思ってるのか?余計な事はいい、さっさと脱げ!」
いつも、この会話で続きは聞くことができない。
スタッフ関係者に挨拶に回ると控室へと向かった。
珍しく生花が飾ってあって、いい匂いがした。
すごくリラックスできた気がする。




