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スキャンダルアイドル  作者: 秋元智也
16/55

16話

樹がくると揃って会場の方へ向かった。

新曲お披露目とあって、初シングルの時を思い出しながら向かう。


薄く水の張られた舞台。

そこには雨のセットと数着の衣装が用意されていた。


「濡れ場か?いいね〜かっこよく撮ってくれよ?」


怜の一言にメンバーの顔が少し引き攣ったのは言うまでもない。

スタッフの中に黒髪ショートの女性が混ざっていた。

みんなの目つきが厳しくなる。


涼だけがヒヤヒヤしながら見守る中、怜はその女性の元へ行くと何やら話を

して戻ってきた。


「楽屋であんな常識外れな事したのはアイツか?」


聖の声が聞こえてくるとすぐに涼が嗜める。


「聖、これは仕事場だから…きっと怜のせいだと思うし…」

「まぁ〜そうだろうな〜。だからってゲストとそんな関係になるってダメだろ?

 やっぱ一言言ってやらないとな!」

「ダメっ…ここはお願い。我慢して?撮影をスムーズにするにも今はお願い。」


必死な涼の声に聖は迷いながらもグッと堪えた。


「涼がそんなに言うなら…仕方ねーな。」

「ありがとう。聖ごめんね」

「いいって…。」


本当は俺なんだけどと心の中思いながら謝ったのだった。


ダンスミュージック風の曲調なせいか、舞台に張られた水の水面の飛沫も全て

が使われる。



「まずは一人ずつと踊って貰うわよ〜」

「涼!きて〜貴方ダンスは全部通しで踊れる?」

「はい、覚えてます」

「なら、始めるわ。ミュージック、スタート!」


水の上では中途半端な足の動きは見苦しい。

ビシッと止めるところはしっかりと、そしてなぞる時は波紋を綺麗に立てて残

すと次の動きに入る。


見惚れるほどに手本通りの動きだった。


音が終わるとピタリと止まって視線をカメラへと向ける。

カメラのレンズ越しに見ていると見惚れるほど綺麗だった。


「やっぱり涼の踊りって完璧だよな〜」

「そりゃ〜暇な時は練習を欠かさないからな〜。お前とは違うだろ?」


聖の呟きに春が被せてきた。


「そういえば涼っていつ寝てんだよ?曲もいち早く覚えるし、デモテープって

 アレ、涼だろ?」


樹の疑問にメンバーが首を傾げた。


言われてみれば、デモテープは歌手が歌う前に一回歌って貰って雰囲気を掴む為

に録音するもので、大体は外注か作曲家がお抱えの人を使うのだが、ジェニスは

そういった人はおらず、作曲家もまちまちで、社長が頼んでは作って貰っている。

作詞もいつも同じ名前が書かれていたが、誰も会った事はない。


「今回の歌詞もいつもの人だよな?」

「そうそう。社長が連れてきた人って言ってたけどさ〜、この人先輩の今日の

 歌詞も手がけてるんだぜ?きっと女性だぜ?綺麗な人だといいな〜」


勝手に期待して想像を膨らませた。

そこにゲンコツがゴンっと振ってきた。


「男だろ?これ…」


怜の一言ので聖はマジで不機嫌になる。


「そんな訳ねーだろ?こんなに繊細な歌詞なんだぜ?それに俺たちの曲全部こ

 の人じゃん?絶対に綺麗な心の女性だって!」

「まぁまぁ、どっちでもいいじゃん?姿は見せないって条件で書いてくれるん

 だし?」


樹が言うと聖が残念そうに頷いた。


「でも、知ってるか?作詞してくれる人っていつもスタジオで俺たちが歌って

 るの聞きに来てるって話だぞ?」


春の言葉に聖は瞳を輝かせながら周りを伺った。


「バカバカしい。いるに決まってるだろ?自分が書いた詩が使われるのを特等

 席で聞いてんだろ?」


まるで怜はその人を知っているかのような発言だった。

春は少し引っかかりを覚えながらもあえて追求はしなかった。


怜はもちろん知っている。あの日通帳を見た時に作詞料という文字が何度も入

金されているのを見つけたからだ。

それも結構な数だった。


自分のグループだけじゃない。と、なればあの名前の主に見当が付く。


夜明乃霧海という名前の下にある素顔も…。


涼が帰って来ると次々にメンバーが踊っていく。

足元が濡れて重くなるほどに動きがずれていき、リテイクを繰り返せばその

分キレがなくなる。


全員が踊り終わるまでに3時間が過ぎてしまっていた。


「今度は全員で合わせるわよ〜。」


全員で合わせるとやっぱり一人一人のズレが気になって来る。

すぐに曲を止めると何度もダメ出しを食らった。

夜の音楽番組までに調整をしながら何度も踊る。


「なんで番組前に曲のダンス調整やるんだよ〜、足パンパンなんだけど〜」

「それもそうだよな〜今回はそこまでしなくても結構揃ってたと思うけど…」

「いや、バラけてたぞ?そこはもっとピタっと止まらなきゃな。」


撮った画面を見ながら春と涼が色々と話し合っていた。

こう言う時の二人に息はぴったりだった。



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