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魔王は勇者を猫可愛がりする。猫だけに(魔王が)  作者: 山吹弓美


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050.副官は受ける、魔王の命を

「それでな。それ以降、しっかり自分の好みを主張するようになったんだそうだ」

「ほう」


 魔王様は、大変楽しそうに耳を振るわせながら私に報告を下さった。無論、シロガネ国から留学……の体でこの国に放り込まれたスメラギ・ロンカ姫についてである。

 魔王様直属のお世話係であるミカ殿とロンカ姫は縁戚であり、顔を見知った間柄であるところから彼女たちに預けたわけだが、それは功を奏したようだ。

 まあ、彼女のラーナン魔王国に対する第一印象はこれで悪くはないものとなっただろう。さて、この後だが。


「執務室は一両日中には用意できますが、いかがいたしますか?」

「んー。ロンカ姫、今楽しそうだしなあ」

「ミカ殿とメイド一人以外には、知人もおりませんからね」


 一応、彼女がこちらに来るに当たっては身の回りの世話をするメイドが一人同行している。だが彼女は、姫の居室からほとんど出ようとはしない。どうやらお世話係と同じように、姫のいない居室に何やら仕掛けでもされないかと警戒しているようだ。……まあ、それはそうだな。しかし、姫自身が害される可能性は考えていないのか、それとも。

 そのあたりは、適当に探っておくとするか。


「分かりました。予定通りの日程で」

「頼むぞー」


 とにかく、いつまでも魔王様のプライベート空間で遊ばせておくわけにはいくまい。現在使っている居室のすぐそばに、執務室を準備させている。居室内で執務をさせてもよいのだが、少しでも部屋の外に出ることで気分転換になるだろうという魔王様の配慮からだ。

 ……さあ、そうなるとメイドはどちらを取るのだろうな。部屋か、姫か。


「なあ、リューミ」

「は」


 不意に、魔王様が問うて来た。声色が、今までの脳天気なものから真剣なそれへと変化している。


「ロンカ姫をうちによこしたのは、シロガネのどこらへんだ?」

「第二王妃と第一王子が主体となって送り込んだ、と伺っております」

「はーん、第二王妃が元凶だな」


 魔王様の猫の瞳孔が、きゅっと細められた。

 現在のシロガネ国王には、王妃が二人いる。

 王位継承権第一位の嫡男は、第一王妃から生まれた第二王子。第二王女であるロンカ姫は、彼の母を同じくする妹となる。

 第二王妃は第一王子と第一王女、つまり男も女も第一王妃より先に産んでいるのだが、何でも素行があまり良くないために継承権を低くされているとのことだ。ま、王子二人はほぼ同じタイミングで生まれているしな。

 で、第二王妃としてはそれが不満でたまらないのだろう。自分の息子のほうがほんのちょっとだけ先に生まれているのに、王位を継ぐのはその子ではないことが。


「けど、俺んとこに放り込んで何が楽しいんだ?」

「第二王妃の勢力は、魔族に対しあまり好意を持ち合わせておりません。それも、第一王子の継承権を下げられている理由かと」

「はあ」


 シロガネ国は、我が国とも友好関係を築いている。その国の王位を継ぐべき者が魔族排除に動きそうな第一王子、では国としても大変に困るだろう。王が変わった瞬間、やることが百八十度ひっくり返るというのは。

 さて、そのような思考を持つ第二王妃勢力が、ロンカ姫を我が国に放り込むよう暗躍したその理由だが。


「まさかとは思うが……あの姫に俺が手を付けるとでも考えたか?」

「そうなれば連中の思うつぼでしょうね。己の勢力を率い、魔族に足を開いた姫など不要であり正義は我にあり、などとふざけたことを抜かすでしょう」

「俺の趣味じゃねえんだけどなー」

「そんなこと、向こうは知りませんよ」


 別に、魔王様が本当にロンカ姫とそういう関係になる必要はないだろう。適当に時期を見計らって、浅ましい言葉で主張すればよいだけだ。それが通用するかどうかは、また別の話だが。


「しかし、それで第二王妃側が有利になるかね?」

「彼女側がモイチノ王国と組んでいれば、おそらく」

「……民衆に魔族を排除するという思想を広める、ってか」


 ここでも、結局のところモイチノ王国が出てくるわけだ。彼らの忍び共を使い、魔族に不利な状況を作り出す。それと同時にロンカ姫の評判を下げる噂を流し、その母親たる第一王妃と兄君たる第二王子の評判を引き下げる。


「それ、シロガネ国をモイチノ王国に食いつぶさせる気じゃねえの?」

「第二王妃、そこまで考えていますかね」

「自分さえよけりゃいい、ってタイプだと聞いたからなあ」


 ふむ、と考え込む魔王様の表情に、私自身も何ができるかと考えてみる。とは言っても、シロガネ国の第一王妃側に注意を促すくらいしかできないだろうが。


「モイチノを崩せりゃ、楽なんだが」

「それができれば苦労しません」

「だよなー……てきとーに、国外に向けて雪崩でも起こしてやれ」

「そのくらいでしたら」


 魔王様の提案。『国外に向けて』とは我が国の外に向けて、であり……まあ、要はモイチノ王国領に向けて雪崩の一つも起こしておけということだ。

 そもそも土地の関係で国境ははっきりしていないし、モイチノ王国の領土だとはっきりしている土地は険しい山々の向こうであるから、起きた雪崩がこちらのせいだと連中が主張しても周辺国から白い目で見られるだけだ。

 適当に、嫌がらせのつもりで領土を白く染めて差し上げるとするか。

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