051.お茶会は最後じゃない
「きょ、今日は、フルーツタルトが食べたいです」
「はい、フルーツタルトですね」
お茶の時間。クロさんは留守にしてるので、今クロさんの部屋にいるのは私とミカさんとロンカ姫、あとメイドさん。
で、フルーツタルトをおずおずと所望したのはロンカ姫。メイドさんがニッコリ笑って、即座に準備をしてくれる。うんまあ、出す方からしてもさっさと注文出たほうがやりやすいもんね。
「主張できるようになったじゃない」
「あーよかった、あのままだったら私、この国から逃げなきゃいけないと思ってたところでした」
「えぇ~?」
ミカさんがほっと肩をなでおろしたところに間の抜けたロンカ姫の声が割り込んで、ミカさんは頭を抱えた。気持ちはわかる。
「……しゃべり方も、どうにかしてほしいんですけど……」
「これは無理ー」
「ここはあきらめよう、ミカさん」
「……そうですねえ……」
なんというか、十日も付き合ってるといい加減慣れる。ま、慣れにも限界があるというか、ミカさんはその限界を突破してるんだけどね。これが親戚ってほんと、疲れるだろうなあ。
私はチョコケーキ、ミカさんはモンブランを選んで食べてると、ロンカ姫が「あ、そうそう」と軽く手を叩いた。
「明日にはわたし、執務室ができるんです」
「執務室、ねえ」
執務室。今、彼女が夜寝てる客間とは別に、お昼にいるべきお部屋ができる。ところで執務室って、名前の響きから言ってお仕事する部屋、ってことだよね。
シロガネ国のお姫様が、わざわざクロさんの国までやってきてする仕事って、一体。
「何のお仕事すんの? そういえば」
「ええと、ラーナン魔王国とシロガネ国の間を取り持ったりい、両方の政策をすり合わせたりい、いろいろですう」
「外交官みたいなものですか……」
へー。もともと交流のある国同士の、その間でいろいろやるんだ。人間の国と魔族の国だから、それぞれ違いとかあるだろうしなあ。
……相手が餅の国じゃなくてよかった、とは思う。あれ相手じゃきっと無理。仲がいい国でも大変だろうから、仲が悪いと余計に。
「……それ、結構ムズい仕事じゃないの?」
「ふふ、大丈夫ですよう」
あ、ロンカ姫の自信満々の表情、初めて見た気がする。えー、そういうところには自信があるんだ。おやつに手を出すのには躊躇するのにさ。どういう思考なのか、よくわからん。
「……これでも王女様ですからね、ロンカ。地頭はそこそこいいところに、しっかり家庭教師ついてましたし」
「そうなんだ……」
そうだ。ロンカ姫はお姫様で、小さい頃からきっちり教育されていたわけか。お馬鹿姫ならともかく、もとの頭が良かったんでこういうお仕事に就けられた、ということね。
……王女様、王子様でもそういう事あるのか。ま、このお城にいる分には何かあっても大丈夫……だといいな。この前の偽メイドさん、どうなっているやら。
あ、そうすると。
「てことは、ここには来なくなるの?」
「そうなりますー。ちょっと残念ですけど」
「そうだねえ。ま、私はせいせいするわ」
ミカさん、満足げな笑顔でそんな事言わないの。気持ちは分かるけど、わかるけど……うん、めっちゃ分かる。
今日はいないけど、クロさんもロンカ姫との会話で何かひっどく疲れてたし。でかい猫がベッドの上でぐてーっと伸びてるのは、こっちは見て和むけどね。
けど、今日で全く会えなくなるってのもつまんないしな。
「クロさんに頼んで、たまにお互い行き来できればいいかな」
「お仕事ばっかりやってるとつまんないから、時々お茶しましょうねえ」
「ええ、それがいいですね」
軽く提案したらロンカ姫も、そしてミカさんも頷いてくれた。あ、いいんだ。
「あ。ミカちゃんがOK出してくれたー」
「あ」
「そだねえ。ミカさん、勘弁してとか言いそうだったのに」
「相手するのは大変だけど、年の近い親戚で悪い子じゃないし」
なるほど、せっかく親戚が同じところにいるんだしねえ。話は……口調はともかく話の中身は合うから、長い時間でなければこうやってみんなでお茶するのは悪くないよね。
「それじゃ、シロガネ国とラーナン魔王国の文化交流というか、そういうのでお願いしてみようか」
「クロ様なら、単にお茶一緒に飲みたいでも許可出ると思いますけど」
「論理武装しないと、リューミさんが怒るかもしれないし」
一応、形式的にでも理由つけておけばリューミさんも許可してくれるでしょ。本音は単なるお茶会だって分かっててもさ。
「それなら、わたしからもお願いしてみますねー」
「お願いしますね、ロンカ」
「そのほうが許してもらえそうだしねえ」
こっちの代表として私とミカさん、あっちの代表としてロンカ姫からお願いすればうん、多分クロさんもリューミさんも通してくれるだろうなあ。
……あと、個人的にはシロガネ国から来たメイドさん、見てみたいんだけどね。ここのメイドさん、ケモミミだったり直立ケモノだったり魔物だったりで、可愛いのは可愛いんだけど人間のメイドさんも見てみたいというか!




