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クズの槍使いが自由に生きて英雄になる方法~手配No.1072 ソード=マスター~  作者: 木庭 秋水


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第8話 冒険者ギルド①

あと2話連投します。




 翌朝、卓上に並ぶ『鳥の胸肉の塩ゆで』『卵』、そして『特製プロテインドリンク』。


 朝っぱらから目が点になったよ。


 旨かった。ああ、旨かったさ。腹が膨れれば最高さ。


 ただ、涙が流れた。なぜだろうな。


『腹が膨らんだ』ところで、冒険者ギルドに向かった。


 冒険者として活動するなら、なんのかんので登録しておく方が楽だ。


 冒険者個人の信用なぞ俺の財布並みの軽さだが、冒険者ギルドを介すると『その国においては』人並みの財布程度にはなる。


 町の端も端にある宿屋バルクから、また中心まで歩く。


 億劫ではあるが仕方ない。モーモー荷車にも乗れない俺に、選択の余地などないのだ。


 ガリメデの冒険者ギルドは、中央広場からそれほど離れていない場所にあった。


 大きな国のギルド本部だけに三階以上の建物も普通にあり、どえらい立派だ。というか、周りから浮いている。


 もっとも、俺たち冒険者にとって用があるのは正面の建物だけだ。


 冒険者登録、カード確認用ディスプレイ、仕事の斡旋、貴重な素材や宝石類の買い取りスペースなどなど。情報屋なんてのもある。


 冒険者が日常的に使うものは、大抵このギルド本館に集められている。


 敷地内には、訓練場や基礎訓練ができる学び舎みたいなものも、あるにはある。だけど、皆が日常的に使うわけではない。


 中に入ってみれば、ハルクの親父から聞いた話の通りになっていた。


 方々から集まってきたと思われる冒険者たちで、受け付けはごった返している。


 本当に初心者っぽいのから、すでにそこそこ経験を積んでいそうな者まで玉石混交。


 でもその全員が、ランドールの冒険者カードを求めて殺到していた。


 違う場所に目を移せば、仕事の斡旋をしているセクションや、パーティーの仲間募集をしている掲示板前なども、多くの冒険者たちで賑わっている。


 なんにしても、どえらい人数だ。


 故郷のグリニアで、こんな数は見たことがない。


 まあ、でも仕方がないのかもなあ……。


 なにせ冒険者カードを発行する機械ってのは、すでに失われた魔法工学技術で作られているとかで、遺跡から発掘されるものしか存在しない。


 だから、どこの国の冒険者ギルドでも持っているのは大概一基のみ。そして、その機械は大抵本部に置かれている。


 で、そこに大量の申請者が集まる何かが起これば……こうなる。


 カードの仕組み自体が、『作ったシステム』に依存しているらしいから、やむを得ない。たとえ機械を複数持っていても意味がないと、グリニアの冒険者ギルドの職員も言っていた。


 立て札のせいで続々冒険者が集まってきている今、ただひたすらに待つしかない。


 朝一からやってきたのに、俺の番が回ってきたのは昼近くになってからだった。


 名前を呼ばれ、三番受け付けに向かう。


 呼ばれた先では少々小柄なハーフエルフのお姉さんが、営業スマイル全開の笑顔で迎えてくれた。


 茶色の髪のショートヘア。前髪をぱっつんと切っている。なかなかチャーミングだった。大国の冒険者ギルドは、やっぱレベルが高い。


「ソード=マスターさんでよろしかったですか?」


「ああ。ソード=マスター十九歳だ。お姉さん、こんど一緒に食事でもいかがでしょう?」


 こちらも丁寧な言葉と営業スマイルで応戦する。


 本当に口説けたら、今すぐ盗賊のアジトにでも強盗に入らねばならないが、美人のお姉さんを見たら口説かねばならない。


 俺が厳守している数少ない礼儀作法の一つだ。


 しかし、


「そういうことは、せめてレベル13を超えて、うちに貢献してからにしてくださいね」


 とニッコリ。この姉ちゃんツエーな。


 こめかみに血管浮かせながらも営業スマイルを崩さない。プロだった。


「レベル13になったらデートしてくれんのかよぉ~」


「あなたは私をデートに誘いに来たのではなくて、カードを作りに来たのでしょう?」


 ゴネてみるが即切り捨て。


 姉ちゃんは、とうとう俺を無視して作業を始めてしまった。


 これは、明確に『また今度ね』のサイン。また今度にしよう。


 しばらくして、金色のような銀色のような不思議な色の小さな板を一枚渡される。


 板の内部に、魔力で掘られた文字が光って浮かんでいた。


『カードを発行したギルド名』『名前』『年齢』『性別』『レベル』は普通に読める。他は何も書かれていない。いや、読めない。


 詳しいデータは、専用のリーダーから読み込み、魔法ディスプレイに映すと見ることができるようになっている。


 もっとも、今はまだ測定前だからなんのデータも入っていないはずだが。


 貰ったカードをまじまじと見ていたら、受け付けの姉ちゃんが言った。


 優しげだが、やはり事務的な口調で。


「このカードを持って奥の測定室に向かってください。ああ。あと、そのカードは一枚しか作れないから、取扱いには十分気を付けてくださいね。測定した段階で、ソードさんのデータはシステムの記憶装置に収められ、プログラム的に複製が禁じられます。そのため、なにがしかの理由で紛失しても、ソードさん自身のデータでもう一枚カードを作るということはできないんです。もしなくしたら、手書きカードになります。ご注意ください」


「ああ。他所で一枚作ったことがあるから知っている」


「ならば、よかったです。あちらへどうぞ」


 営業スマイルで、移動を促された。

お読みいただきありがとうございました。


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