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クズの槍使いが自由に生きて英雄になる方法~手配No.1072 ソード=マスター~  作者: 木庭 秋水


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第43話 潜入




 旅立ちの森のモンスターどもが騒ぐ新月の夜────。


 俺とフィリ、ジュリアンとその仲間二名。そして、キリーのところの三兄弟で静かに神殿へと近づいていく。


 ジュリアンの仲間は女が二人。一人は符術も使う女忍びタリア。もう一人は、古代語魔法も使うヴィルマ教の司教エレアノール。


 キリーのところの三兄弟は、長男がリーダーのマッシュ。末弟がブロンコ。全員バトルアックスを使うファイターで、ブロンコは二本持ちという変わり種だ。


 照明はもちろん月明かりもない中、草木をかき分けながら進むのは骨が折れる。しかし、リスクを少しでも減らすためにはやむをえない。


「……ユリウスらは、もう回り込めただろうか?」


 手で押さえてもすぐに跳ね上がってくる枝に辟易としながら、前を進むジュリアンの背中に呟いた。


「大丈夫だよ、ソード君。ユリウス君たちは、最近メキメキと頭角を現してきた期待の新勢力でね。若いけど、結構な実力者なんだよ。抜かりはないはずだ」


 あれほど髪が乱れることを嫌がっていたジュリアンだが、こんな状態の行軍でも嫌そうな気配一つ見せない。


 そりゃあ、これを提案した張本人なのだから文句はないだろうが、先の打ち合わせの時のことを思うと、正直びっくりだ。


 偽物と本物の違いって、多分こういうことなんだろう……。


 そう思わずにはいられない。


 薮をかき分けながら、更に進んでいく。


 すぐに神殿が見えてきた。星明りのみが頼りだが、その巨大さだけははっきりとわかった。


「……デケーな」


 一番前を歩いていたマッシュが足を止めてボソリと呟く。キリーが言っていた通り、口数は少なそうな感じだった。


 改めて、俺も目の前の巨大な影を見る。


 前情報通りに、山際に沿っていくつもの建物が造られているのがわかる。そんな建物群を、二階建ての建屋に迫ろうかという高さの壁がぐるりと囲んでいる。


 もうちょっと、なんとかならんかな……。


 葉がこんもりと繁る枝を押さえつけながら、ソロッと首を伸ばして目をガッツリ開く。


 高い石壁の上ではいくつもの松明が明々(あかあか)と灯されているが、人の気配は全くない。


 まさに森の中の神殿という感じで、土臭い森の匂いが……って、ちょっと待て。これは……。


 スンスン────。


 鼻を鳴らしながら、風の匂いを嗅ぐ。


 微かに……ほんの微かにするこれは腐敗臭。いや、死臭だ。


「なあ、この臭いって……」


 思わず口から零れる。


「ヤな臭いなの」


「死臭だな」


 頭上にいるフィリが。そして、すぐ側にいるブロンコが応えた。やはり、俺の気のせいではないらしい。


「神殿で死臭。あまり良い予感はしないなあ」


 軽い調子の割には重いトーンで、ジュリアンが呟く。


「……人の気配もないし、このまま石壁を登るか?」


 誰にという訳ではなかったが提案してみた。


「そうだね。タリア、頼めるかい?」


「わかった」


 ボソリと呟くように返事をするタリア。紹介しあった時にも口数少ない印象があったが、マッシュといい勝負だ。


 タリアは懐からナイフのような道具を取りだし、石と石の隙間に突きたてながらスルスルと高い壁を登っていく。


 暗すぎてシルエットしか見ることはできないが、腰まである長いポニーテールをフリフリと揺らしながら、しなやかな肢体を躍らせる姿には、ほぅとため息が漏れた。


 上に辿り着いたタリアは、流れるような動作でサッと縄梯子を投げ落としてくる。


『勇者と美姫たちの協奏曲(コンチェルト)も『焼肉が食いたい!』も、ランドールに来てまだ日の浅い俺でも知っているエリートチームだ。


 それはわかっているが、こうして行動を共にすると、やはりただただ感心させられる。


 独り唸っていると、


「じゃ、先に行くの」


 フィリが、頭の上から飛び立っていった。


「では、私たちも行こうか」


 そう言って、ジュリアンも自ら縄梯子に手をかける。


 その後に続く。


 縄梯子がギチギチと音を立てて揺れた。


 いよいよかと、気持ちが高ぶらずにはいられなかった。

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