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クズの槍使いが自由に生きて英雄になる方法~手配No.1072 ソード=マスター~  作者: 木庭 秋水


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第41話 神殿襲撃に向けて②




 個室の中は広すぎず狭すぎず、大きな丸テーブルが一つだけ置かれていた。


 入ってきた扉を除き、外界との繋がりは一つもない。


 四方を石壁でガッチリ守られ窓一つなく、あきらかに『そういう話』をする部屋だった。


 部屋の奥に大きなタペストリーが掛けられ、部屋の隅には巨大な壺に入った大きな生け花があるが、飾りも最小限で寛いだり楽しんだりするための部屋には見えない。


「では皆が揃ったところで、まずは自己紹介と行きましょう────」


 俺が席に着いたところで、イケメンが切り出した。


 まずこの男は、『勇者と美姫たちの協奏曲(コンチェルト)』のリーダー・ジュリアン=ユーハイム。チームは3名。


 正真正銘の勇者で、ネームドのドラゴンを倒したドラゴンスレイヤーだ。ランドールはおろか、近隣諸国までその名は轟いている。


 見た限り、かなりのナルシーで相手をするのは疲れるが、不思議とイヤな感じはしない。


 その横に座っているむきむきマッチョでオールバックのおっさんが、キリー=ガンドール。四十歳くらいだろうか。ファイター三兄弟の真ん中で交渉役。なんでも、長男が寡黙すぎて自分が出てこざるをえないのだとか。


『焼肉が食いたい!』とかいうふざけた名前のチームだが、ただの色物軍団ではなく、先ほどの勇者様のチームと国で一、二を争うエリートチームだというから世の中は広い。


 最後が『真の愛を君に』のユリウス=カッセリア。


 俺とそう歳の変わらない金髪テンパの戦士。見るからに好青年といった感じで、俺と違って育ちがかなり良さそう。


 ただ、8人も擁するチームのリーダーなんかをやっているあたり、かなりのやり手であるのは疑いようがない。


「俺は……『清く正しく美しく』のリーダー・ソード=マスターだ」


 チーム名を名乗らねばならない流れに焦って、適当かます。


 つか、ちょっと前はもっと普通の名前で良かったのに、目の前の勇者様が『勇者と美姫たちの協奏曲(コンチェルト)』なんて名乗り出したのが悪い。


 どんなチームかわかりやすいと好評を博してしまったせいで、旧来方式のチーム名のままだと顧客が安心できなくなって仕事が減るという怪現象が冒険者業界を襲った。


 今までは対岸の火事だったが、フィリが増えても考えていなかったのは失敗だった。


 これ、絶対あとで突っ込まれる……。


 でも、こんなの言ったもの勝ちだ。


 それに、今はどのチームの名前も大概似たようなものだから、これでよかろう。


 互いに名乗った後は、口をワインで湿らせながら、件の神殿についての話と、どう制圧するかについて話し合った。


 神殿の情報はチクニーからジュリアンに伝えられていて、その共有から打ち合わせは始まった。


 旅立ちの森の、比較的ガリメデとの境界に近い場所に、城のような巨大神殿が建立されつつある。小さな山肌に沿って、本殿の他にもいくつもの建物が造られていて、周囲も高い石壁で囲まれているらしい。


 巣作りをしているのは『七欲の徒』。ババアの宗教団体だ。


 本来なら国からのストップがかかって当然なのだが、王が洗脳されており誰も止められず今日に至る。


 現場を仕切っているのは、七欲の徒の聖人『傲慢のペイオロス』。そして、その配下である高司祭のアウグス。


 このペイオロスの使う特殊能力が厄介で、『気力を奪い、思考力も奪うロスト・パッセージ≪失われる情熱≫』と『生きた人間から生命力を略奪し、そのまま対象をゾンビ化してしまうヴィオラティオ・ファティ≪運命への冒涜≫』があるとか……。


 吐き気がする。


 こんなのが聖人?


 あのババア……冗談はテメーの面だけにしとけと。胸糞わりぃ。


 考え出すと、一瞬音が遠くなりかける。


 ……ザワザワ。


 言葉にできない何かが胸の奥でさざめき、心音が高まり、非常に不快な感じだ。


 やはり、あのババアは泣かしてやらないといけない。


「で、ジュリアン。実際どう攻める?」


 この中では一番の実績持ちであるジュリアンに、片眉をあげたキリーが尋ねた。


 ともすれば、同じチームのような空気感だった。エリートチーム同士なだけに、もう何度も一緒に仕事をしているのだろう。


「うーん。なにせ、大きな神殿ですし……。二手に分かれて少しでも手早くというのが、セオリーと言えばセオリーでしょうか」


 聞かれたジュリアンは、片手で顎先を触りながら妙なポーズを決めて答える。その時、前髪が一束少し零れた。


「ムム? これはいけない」


 再び櫛が登場し、ササッと直す。


「キリーさん、決まっていますか?」


「……ああ、決まっている。バッチリだ」


 オールバックのおっさんは面倒くさそうにしながらも、普通に付き合っていた。


「コ、コホン。なら、私たちと皆さんたちとで分かれましょう。なにせ、私たちは八人の大所帯。ヘタに割るのも好ましくありませんし。貴方たちと、私たち。この二手に分かれるということでどうでしょうか」


 ユリウスが、二人の大先輩に遠慮しながらも提案する。


「私は構いません」


「問題ない」


 ジュリアンとキリーは即答し、俺の顔を見てくる。ユリウスも視線をこちらに向けた。


「俺も異論はない」


 三人の視線を受けながら、静かに首を縦に振る。そして、ワイングラスを大きく呷って、残りをすべて喉に流し込んだ。


 件の聖人と司祭を討ち取る……または捕縛し、神殿を制圧する。


 決行は、三日後の0:00。


 各々で準備を整え、町西部にある孤児院跡地で集合することとなった。神殿までは目と鼻の距離だ。

お読みいただきありがとうございました。


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