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クズの槍使いが自由に生きて英雄になる方法~手配No.1072 ソード=マスター~  作者: 木庭 秋水


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第33話 ヤバいものはヤバく見せるべき②




 玄室の奥、ただ一つある扉の目で山と積み重なっている鈍色の雷おやじ像。


 隙間から扉の一部が見えるが、とても避けて通るなんて真似は出来ない。体の小さなフィリですら無理だ。


「馬鹿、馬鹿! ソードのあんぽんたん!」


 プンすか頭から湯気を出しているフィリの罵詈雑言は止まらない。


 俺様、絶賛正座中。


「んなこと言ったってさ……」


「言い訳するんじゃないの! どうして止まらず突っ込んだの! 猪でも、もう少し遠慮するのっ!」


 ひどい言われようだ。


 鈍色に変体した雷おやじ……あれ、『ガンコおやじ』と言うらしい。


 雷おやじの特殊スキルで、精神力をかなり使うか、なにがしかの攻撃を受けると使ってくるんだとか。


 で、厄介なのがこの『状態』。


 斬っても突いても傷一つ付かない。魔法も禁呪クラスですら無効化するという。


 他者からの攻撃を一切無効化とか……あまりにも超絶ヒッキーすぎる。


 こんなん、手も足も出ないじゃんか。


 で、さらに最悪なのが『重量』とのこと。


 死ぬほど重いらしい。


 鋼の意志で、『儂ゃ、絶対動かんからな』を体現するのだとか。


 でも、ポチなら余裕じゃね?


 そう思った。


 あれだけの火力、威力を誇るポチ様である。


 ここは出張ってもらいましょう……なんて思った訳だが、ポチの奴、全力で拒否りやがった。


 どんだけ呼んでも、まったく出てくる気配がない。


 呼びかけは、間違いなく届いている。


 その感覚はある。


 だが、その感覚とともに伝わってくるものがある。


『え? 聞こえませんよ?』的なアレ。粗相をしたワンコを叱ると全力で目をそらすアレ。


 ……今度出てきた時は、ドラゴンのう〇こを(つつ)いてやろうと思う。


 あ~、どうしたもんかね。


「なあ、フィリ」


「なんなの!」


 積み重なるガンコおやじを調べていたフィリが、眉を吊り上げたまま、こちらを振り向いた。


 可愛い顔をして、怒った顔は結構怖い。


 これ以上機嫌を損ねないように、恐る恐る尋ねる。


「これって……、いつまでこうなん?」


 積み重なる像の山を指差した。


 フィリの回答は非情だった。


「そんなの、フィリにもわからないの! 三日後か、一週間後か。それとも一か月後か。一年経ってもそのままだったって話も聞いたことあるの。つまり、こいつらの気分次第なの……」


 答えていて絶望感の方が勝ったのか、フィリの逆三角の目から力が失われる。ガックリと項垂れ、飛ぶために動かしている羽にすら力が入っていない。


 そんなフィリの横を通り、ガンコおやじの山の前に立つ。


 手前にいる一体に手をかけた。


「ぐぎぎぎぎぎぎ」


 物は試しと頑張ってみたが、フィリの話通りでビクともしない。


「ムリなの……。たぶん、それ(きん)より重いの」


 こりゃ、マジだ。ちょっとでも揺らげばまだ可愛げがあるが、グラッともしない。


「……ハアハア。た、確かに。こりゃ無理だ」


 何事もやってみるまでわからない。


 だが、やってダメなら、やはりダメ。無駄な努力はするもんじゃない。


 とはいえ、ど~~したもんかな。流石にまいったぞ……。


「なあ、これを動かす方法って何かないの? 力技じゃなくて」


 念のためにと聞いてみたが、意外にもフィリは首を横に振らない。


「なくはないの……」


「え? あるの?」


「一応は……」


 とは言え、なんとも歯切れが悪い。


 こいつは何を迷っているんだ? それしかないなら、それをやろうぜ。


「あるなら、いいじゃん。それやろうや」


 言ったら、フィリの目がさっきみたいに三角形になった。


「ソードのお馬鹿! 簡単に言うんじゃないの!」


 また怒られる。今日は厄日だ。


 とは言えなあ……。


「んでも、もうそれしか手がないんだろ?」


「そうなんだけどぉ……」


 悲壮な声を出すフィリ。


「な、なんだよ。なんで、そんなに哀しそうなんだよ」


 聞くと、フィリはハァァと肺の中の空気をすべて吐き出すようなため息を吐く。それから説明してくれた。


「一応、この状態を解くアイテムがあるの。『孫の手』と言って、失われた魔法王国の魔術師たちがコレに困って生み出したの……」


 フィリのため息の意味がわかってしまった。


「……もしかしなくても、べらぼうに高い?」


「高いの……。というか、それ以前に出回っている数が少ないの……。魔法王国の遺跡からしか出ないから……」


 Oh……。それは絶望的だ。


「ガリメデなら、あるいはブツそのものはあるかもしれんが……。高いだろうなぁ」


 他にあるとしたら、国の宝物庫か。


「それは間違いないと思うの。最低でも100万マリスはすると思うの……」


 その言葉を聞き、腰の皮袋に手をかける。


 口を開けて中を見た。


 三秒で数え終わる枚数の銀貨と銅貨。あと数枚の片貨。買うという選択肢は、一瞬でお亡くなりになった。


 となると、だ。


 最悪、ブツがあるのがわかれば、ちょっくら忍び込むという手も……。


 でも、できれば避けたいなあ。


 ガリメデは居心地良いし、なるべくなら追い出されない方向でなんとかしたい。


 とはいえ、いつ解けるかわからないってんじゃあ、このまま放っておくって訳にもいかん。


 合法で『孫の手』を手に入れる方法……。


 なんかないかな。


 ボリボリ。


 髪を掻きむしるも、それで妙案が出てくる訳もなく。


 参った。


 諸手を上げかけたその時、可愛い声が玄室に響き渡った。


「あっ!」


「おわっ。おい、フィリ。ビックリさせんな。今、良い案が出てきそうだったのに引っ込んだじゃないか!」


 ……ウソだけど。


 でも、そんな俺のことなど無視して、フィリは興奮気味にまくし立ててくる。


「ソード! ばあちゃ。ばあちゃに聞いてみるの!」


 あん?


「ばあちゃ?」


「シエラのばあちゃなら、何か良いこと知ってるかもしれないの!」

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