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クズの槍使いが自由に生きて英雄になる方法~手配No.1072 ソード=マスター~  作者: 木庭 秋水


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第31話 慣れ=危険




 朝一から9Fに直行して、そろそろタイムアップか。


 それにしても疲れた……。


 でも、ここでは休むことさえできない。小休止も4Fまで戻らないと、万が一の時にヤバい。


 それにしても……、どこに居やがるんだか。


 古の伝説では、魔法使いは10Fで討たれている。そして、その10Fは当時の宮廷魔術師団によって封印された。


 なら、必然的にここ9Fが最下層ということになり、パー=ベルシオンとかいう魔術師は、この階に立て籠もっていると見ていい。


 とはいうものの……。


 周りを見渡す。


 何も変わらない。


 5Fに降りた時はいきなり景色が変わったが、この9Fでは変化がなかった。


 5F~9Fは同じ。無駄に全フロアを巡ったから間違いない。


 強いて言えば、天井がうんと高くなり、道幅もグッと広くなる。しかし、差はその程度しかない。


 ただ、景色は変わらないが、モンスターははっきりと変わる。


 ダンジョンの階層とモンスターの強さに、因果関係は普通ない。だが、ここでは潜れば潜るほど、自重しろと言いたくなるほど厄介になる。


 たぶん、宮廷魔術師が封じた10Fの影響だろう。


 そうとでも考えないと、説明がつかん。


 実際、この階の魔物は本当にエグい。


 数こそ上層の様にわんさと出てこないが、一匹一匹がヤバすぎる。


 地上に出したら、その一匹に特別討伐褒賞が付く奴ばかりだ。しかも、依頼の紙に赤字で『危険大!』て注釈がつく高額な奴だ。


 朝のフィリの言葉じゃないが、普通に歩いていて悪魔族に出くわすし、ファイアードラゴンさんともこんにちはした。サンダードラゴンさんも怒り狂っていらさった。


 まあ、それでもさすがにレジェンドクラスの竜種や悪魔族に出会ってはいないが……。


 でも、レッサーだろうが悪魔族が普通に居て、ファイアー・サンダークラスのドラゴンに何度も出会うとか……。俺が出会った最強モンスターだったレッサードラゴンさんが、ただの大きなトカゲに見えてくる始末。


 異常だよ。異常。


 つか、ガザ王。


 ファイアードラゴン倒したぞ? どうしてくれるんだ、ああん?


 もっとも、折角ドラゴンを倒しても旨みが『まったく』なかったが。


 荷物持って、『このレベル』のモンスターの群れを突破しろってか?


 ……無理に決まってんだろ。自分の命を持ち帰るだけで精いっぱいだ。


 ハハと、乾いた笑いが口の端から漏れ出た。


「急に気持ち悪いの」


 大量の水が流れる音が響く中、フィリの奴がご丁寧にもはっきりと聞こえるように俺の耳元でのたまわった。


 あ、こいつ。暇を持て余しているな。


 なんか最近わかってきた。


 だから、右から左に聞き流す。拾うと敵の思うつぼだ。


「あ、すまん。ちょっとな」


 テキトーに誤魔化した。


 案の定、乗ってこない俺につまらなそうな視線を向け、フィリはふーんとだけ返事をする。


 まったく、こいつは……。


 でも、俺たちもだいぶ慣れてきたかな。


 5Fに降りてからしばらくは散々だったが、今では周囲への警戒を怠ることなく、こんな馬鹿話もできるようになった。


 人間慣れるものだ。


 そんなことを考えながら、なだらかな傾斜のある地面を滑らないように降りていく。


 先が広く開けており、そこから大量の水が流れる音が聞こえてくる。間違いなく地下水脈の川だろう。


 狭い下り坂を下りた先には、やはり川があった。


 反対岸に玄室らしきものも見える。玄室の周りをぐるりと川が巻いていて『堀に囲まれた城』のようだ。


 玄室に扉はない。代わりに、大きな穴が一つ開いているのが見える。


 対岸には、天然の橋を渡って行けそうだった。


 玄室の入り口までまっすぐ伸びている道の途中を川が貫通しており、パッと見は石の橋があるようにさえ見える。


 最初はおっかなビックリだったが、思った以上にしっかりしており、問題なく渡れた。


 うん。そこまではよかった……。そこまでは。

お読みいただきありがとうございました。


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